2

 からん、からん。


 一歩踏み出す度に、レジ袋の中で2つの缶が音を立てる。

 燃えるような夕焼けが、両脇に延々と広がる田んぼの水面に反射していて、周りは全て朱色に染まっていた。


 からん、からん。


 人々の喧騒、落書きだらけの看板、一晩中光り輝くネオンサインが懐かしい。早く東京に戻りたい……私は、そんな事を考える。

 私は、全て切り捨てて生きている。


 からん、からん。


「──久しぶりだね、会いたかったよ」

 私には友達がいない。


 からん、からん。


「今、楽しい?」

 私は孤独だ。


 からん。


「ねえ、どうして一緒に居てくれなかったの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る