第7話 温泉に入れるんです。

陽も沈み街に闇が広がり始め

彼方此方に灯りが灯されていく。


ドラゴンも居なくなれば、

街人も興味を無くしたのか解散しはじめる。

何人かの隊長に「おっ?戦利品か」と笑いながら

通り過ぎるがそれ以上の追求がないのが

ありがたい、マントに包んだ女が見えなければ

誰も見向きもしなくなりホッとしていると

程なくして馬車が来た。


扉が開き


「リヨン様お待たせしまして」


フジェの優しい顔が見えて安心し

リヨンは女を抱えて乗り込んだ。


「こちらのお嬢様ですか?

確かに顔色が悪いですね、

意識は無い様ですが脈は問題無さそうですね」


女の手首を触りながらテキパキと状況を把握し

馬車は走り出した。


街を通り過ぎ緩い坂を登る

馬車が止まり、邸宅に入りながら


「ブル様からの言い付けて

風呂へ入れる準備はできて居ますが…

意識の無いお嬢様を入れるには、私の一人の力では

無理ですから、大変お疲れだとは思いますが、

リヨン様補助お願いしますよ」


フジェがにっこり微笑む、リヨンは拒否出来

なさそうなのは分かっているが慌てて、


「風呂に?どうやって?」


「大丈夫ですよ、

迎えに行く間に考えましたから。」


フジェの満面の笑みに違う意味で怖くなった。


邸宅には大浴場があり脱衣場も広い

床に布を敷いて女を寝かせ、

フジェが手早く脱がせ始めた。


「変わったズボン?靴も変わっていますね?

はい、準備出来ましたよ。

先ずはこちら首の下に手を通して、そうです。

膝下はこちら、そんなに恐る恐る触らなくても

私も付いて居ますから。はい抱き上げて。」


姿はかなり恥ずかしいはずだ…

浴槽に女を抱き抱えたまま入れと言うので

全裸になるしかなく腰に布を巻いただけなのだ

当然女を裸にした状態なので目隠しをしている。


腰布と目隠しはフジェに必死に頼んだ結果だ。

俺も一応男だ勝手に観ては駄目だろうと…、

それと後でディアーブルに

嫌味を言われたくなかったのもある。


無事、湯船に入るとフジェが

女の肩や腕を洗い始めた。


「まあ、綺麗な肌ですのに

傷が胸元と腕にも有りますね。あのヒゲが

切りつけたんですって?なんて酷い事を!」


フジェが傷を見て改めて声を震わせた。


「傷は深そうか?」


「少し残るかもしれませんね目立たないと

良いですがそれにしても、良い形の胸ですこと」


「フ、フジェ、よさないか、」


「あら、リヨン様我慢して下さいね。ふふふ」


楽しそうなフジェの声に

からかわれている事が少々哀しくなって来た。

それなりに女性とは付き合ったし

経験もあるが長続きしない。

周りはアレコレと紹介してくれるが何か

しっくりしない事に身体すら興味が無くなり。

挙句は男色ではと言われる始末だ。

普通に女性に興味はある。

今、腕の中にいる女にも普通に意識してる、

裸の肌が触れ合って居る部分に

神経が集中しかなり辛いのだから。


何より、いつ意識が戻るかヒヤヒヤしている。

この状況だ罵倒されるのは勘弁して欲しい。

例え起きてもフジェが居るからと

押し切られたのだった。


冷え切った身体がゆっくりと暖かくなり


「リヨン様、髪を洗いますから

腕をお嬢様の脇にまわせますか?」


「分かった」


膝下から抜いた手で肩を支えながら

首下から脇に手を入れて、後悔した……。

柔らかな膨らみに触れてしまった

この手触り……。

何より手のひらにスッポリはまって

手を離せず硬直してしまっていた。

フジェは気付かないようで女の髪を洗いながら


「まあー、髪も何て手触りでしょ!

若いからかしら?はぁ羨ましい。

リヨン様、触ります?

人間の髪じゃないみたいですよ」


肩にかけた手を伸ばすと

指先にシットリとした物に触れた。

何もかも触れただけで全身がゾクゾクし、

下半身が疼いた、マズイ。


「フ、フジェ、まだか?流石にのぼせそうだ」


「そうですね、お嬢様も頬が赤く色付いて

血色が良くなってますから出ましょうか」


そのまま抱き抱えて浴槽から出て

ある程度、フジェが着替えさせた女をベッドに

運んで寝かせ一仕事終わった。


「部屋とかは明日に用意しますから、

今夜はリヨン様、頑張って一緒に寝て下さい」


「仕方ないが頑張ってとは何だ?」


いきなり人を泊めるのだ無理は言えないし、

リヨンのベッドは無駄にデカイから


問題ないのだが。


「ブル様から『手を出すな』

と言付かって居ますから」


とニッコリ微笑むフジェ。

ディアーブル・・・後で覚えていろよ。

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