第90話 湯川さんの性癖。

ーーー場所は『植物園』。

入り口の扉を開けた瞬間から、俺と花粉との闘いが始まった。

「綺麗だねー、ハイビスカス!まさに今の時期の花だねー!!」

マリアが指差す先には、夏といえばというくらいに有名な花『ハイビスカス』が咲いていた。

これを見るだけでも鼻がムズムズしてくる……。


だが、実は植物園の花粉症対策はバッチリだ。何故なら、前回は刈谷とマリアで入ったのみで、俺とは入っていないから。

だから、マリアは来たい筈だと思い、誘ったのだ。


俺は鼻の中に花粉を通しにくくする道具を取り付ける。更に花粉を通さないゴーグルを装着!

これで、俺も花粉症とはオサラバさ!


ーーーーーー10分後。 


「ハックション、ヘーックショイ!」

花粉による猛攻撃の前には俺は無力だった。なんだあの道具、効かなかったじゃねぇか!

マリアが色んな花の説明してくれたけど、ハイビスカスしか覚えてねぇ!

「アハハハ!彊兵、あんなに自信満々だったのに!(笑)」

お腹を抱えながら笑うマリア。よかった、元気になってくれて。

「酷いなぁ、そんなに笑うなん……ヘーックショイ!!」

「アハハハハハ!お腹痛い、彊兵!アハハハ!」

「アハハハ!ハーックショーイ!!」

俺達は本当に幸せだ。

一つ一つ、小さな事にも喜びや幸せを感じる事が出来る。

この幸せがずっとずっと続きますように……。


ーーーーーー喫茶店。


チリンチリン!

入り口の、鈴が鳴る。

「いらっしゃいませー!」

可愛らしいウエイトレスさんがやってくる。

「待ち合わせで〜!」

「彊・兵!?」

俺が可愛さに見惚れた為に声が上ずった声を聞き逃さなかった。

「たまたま、たまたまだから……。」

「本当かしら……?」

疑うマリアとなるべく目を合わせないようにし、湯川さんの元に向かう。


「何やってんすか、湯川さん…………。」

「へっ、きゃああぁぁぁ!!」

必死で携帯を隠す湯川さん。だけど、俺もマリアも見ていた。

喫茶店に入る前、喫茶店の窓を背に座る湯川さんは、俺達が背後にいる事に全く気づかず、スマホのとある画面を見ていたんだから……。

「見ていましたよ、外から。湯川さん、正直にブツを出して下さい。」

マリアの低い声が一層恐怖感を煽る。 

「はい…………。」

湯川さんは一瞬窓を見ると、観念したかの様に、湯川さんはスマホをコトリと置く。


「これは……なんですか?」

「み、見た通りです……。」

「ちゃんとご自身の口から言って下さい!」

マリアは湯川さんを追い詰めていく。

JKが元警察官を問い詰める図。まず観られないな。

「彊兵君の………です。」

「聞こえません!」

「彊兵君の着替えシーンを盗撮した物です!」

俺達は喫茶店から追い出された。


「俺のアイスコーヒー………。」

「ごめんなさい、彊兵君。私のせいで……。」

「いや、いいんですけど、なんでそんなの待ち受けにしてるんですか……。」

さすがにこれは俺も引………かないな。

これがマリアだったら俺も待ち受けにしているからな!


ーーーーーーん?


て事は、つまり、湯川さんは俺の事……が……好き?

何か以前も匂わし的な事は聞いたような聞いてないような……。

ちょっと待て、まさか前のお風呂は………そういう事!?

「彊兵、何鼻の下伸ばしてんの?」

マリアが覗き込みながら、睨んでくる。

「それ、着替えっていうか、全裸ですよね。なんでそんなの待ち受けにするんですか、下さい。」

マリアが説教しながら、画像を求める。

「ちょい待ち!ストップ!削除、削除を求めます!」

「マリアちゃん、もうちょっと待ってて下さい。もう少しで送信完了です。」

「わかりました、wi-fi便利ですねー。」

俺の言葉をガン無視して裸画像を交換し合うJKと元警察官。

いや、駄目でしょ、完全にアウトでしょ。


「あー、そうやって二人共、俺の画像持ってるなら、俺も二人の裸画像撮ろうかなー!」

どうだ、これなら消さざるを得まい!


「「いいよ、撮っても。隅から隅まで。」」

…………なぜハモる。

俺は確信した。これからこの二人は結託し、俺の裸を盗撮するだろうと。

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