第89話 花粉症彊兵。
観覧車までやって来た俺達。
夏休みと言う事で、結構な人混みを予想していたのだが、それほど並んでいなかった。
俺たちの順番はすぐに回ってきた。
係員の指示に従い、乗り込む。
テッペンが俺の勝負の瞬間だ。
「綺麗だね。三河湾!今度海に行きたいな、二人で!」
「そうだね。だけど、車が必要だよ……。また湯川さんに運転してもらおうか!(笑)」
「彊兵ってば!(笑)」
等と話しているうちにもうすぐ……。
てっぺんだ!今しかない!
「マリア!」
「え、あ、はい!」
「これ!」
俺は小さな赤い箱を取り出す。
「開けてみて……。」
マリアが恐る恐る箱を開ける。
「コレって………指輪!?」
箱の中には小さなダイヤを埋め込んだシンプルなリングが入っている。
「順序とかさ、めちゃくちゃになってごめん、お金あまり無くてそれしか買えなくて。でも、似合いそうなの買ってきたから!婚約指輪!」
俺のしどろもどろになる姿を見て、彼女は笑うかと思っていた。だけど、俺の目の前にいた彼女は………。
「ありがとう彊兵!凄く凄く凄く嬉しい!順序とかいらない! 婚約指輪を貰えた事が凄く幸せ!! 本当に本当にありがとう!!」
「愛してるよ、彊兵!!」
「愛してるよ、マリア!!」
ーーーーーー。
「彊兵、私ね、義理の父親に性的暴行を受けてから、ずっと一人だと思ってたんだ。だから、こんな汚れた体なんかいらないって……。死のうかなって……。」
「でも、不良達に絡まれた時、逃げたくて、抵抗して、『あっ、私まだ生きたいんだ』って。その時、彊兵が現れたの。本当に一目惚れだった。 だから私ね、必死で義理の父親の欲求から逃げて、彊兵の通う学校探してたの。」
という事は……性的暴行は中学時代から……。どれだけ苦しかったのか計り知れない……。
「彊兵!私を見て!私は大丈夫だよ?もう平気だよ?彊兵がいるから!」
マリアはきっと俺が怒っている事に気付いたんだ………。また、気を遣わせてしまった……。
「ごめん、義理の父親の事、許せなくて……。」
「私こそごめんなさい……こんな話ししたから。」
俺って奴は、またこれだ!
「マリア、植物園行こう!!」
「へっ?でも、彊兵は確か花粉症じゃ……?」
「気にしない気にしない!最悪、鼻にティッシュ詰めれば!」
「何それー!(笑)」
もうマリアに気を遣わせたり、負担を掛けたりしない!
マリアに幸せになってもらう為に!
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