第74話 湯川さんとお風呂。

「…………………誰。」

目の前にいる白衣を着た男性に俺は呟く。

「篠宮だよ。流石にそれは思い出してくれ。」

篠宮……以前の病院の担当医か。小さな頃一緒に遊んでいたらしいけど、記憶に無いな。

「わざわざここまで来てくれたんですか?」

「彊兵が、錯乱して倒れたと聞いてな。」

「そうか、それはすまなかった……。」

「気にするな。それよりも、記憶は少しは戻ったのか?」

篠宮の言うように少しは記憶が戻っている。だが、あくまで断片的にだ。

「少しづつだけどね………大丈夫、ありがとう。」

「無理はするなよ、脳に余計な負担が掛かる。 じゃあ湯川さん、後は宜しくお願いします。」 

「ありがとうございます!」

そのまま、無言で篠宮先生は去っていった。

篠宮先生は夜にも関わらず、わざわざ自家用車で来てくれたのか。


「あ、お風呂入れてあるから彊兵君、入ってきたら?」

湯川姉がお風呂を勧めてくるが、ここはどう考えても、女性優先でしょ。

「湯川さん、先に入って来て下さい。僕は後から入ります。」

「駄目ですよ、またさっきみたいになったらどうするんですか!? あ、じゃあこうしましょう!」


ーーーーーー。


「彊兵君、お湯熱くないですか?」

シャンプーで紙の毛を丁寧に洗う湯川さんが眼前にいる。

俺と湯川さんは一緒に風呂に入っていた。


どうしてこうなった………。


でも、湯川さんてこうみると、やっぱり美人だし、スタイルいいし、胸が……大きい!!

普段、何故かずっとスーツだから分かりにくいけど、胸がとにかく大きい!

そう言えば、海水浴の時、パーカー着てたから分からなかったんだよなぁ。

肌も白くてキレイだし………って、さっきから俺は何をジロジロ見てるんだ!

失礼にも程がある!!


ーーーーーー。


「じゃあ次、彊兵君洗っていいよ!」

「俺が先に入ったから、湯船汚いですよ?」

「そんな事気にしないで下さい!寧ろごほう………なんでもありません!」

俺は謎に照れている湯川さんを尻目に湯船から立ち上がる。


「「あ。」」


二人同時に声を上げる。

湯川さんの眼の前には立派なゾウさんのお鼻がありましたとさ。


「ーーーーーー!洗って、洗って来て下さい!駄目になるから!」

駄目になるからって、何が? 俺は不思議に思いながらも、体や髪の毛を洗っていく。

今日一日の疲れと汚れが一気に排水口に吸い込まれていく。


「気持ちいい………!」

「お背中、流しましょうか?………それとも、ゾウさんを大人しくしましょうか?」

湯川さん、何言ってんのーーー!!

これ以上はR18に設定変えないといけないから駄目ですよー!!

「背中でお願いします!」 

欲望には忠実な男だった。

もし、ゾウさんの方だったら、何が起きていたんだろうか。ちょっと惜しいことをした気分になる。

「最低だな、俺は。」

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