第24話 マリアと観覧車。

俺とマリアは、のんほいランドのシンボルとも言える、巨大観覧車に来ていた。


「遂に着きました、観覧車様!今から乗ります、どうか何もありませんように! ネジが外れて落下したり、風でグラグラ揺れたり、扉が急に外れたりしませんように!」

俺はひたすらに、観覧車様にお願いをしていた。

家内安全、商売繁盛、どうか一等のハワイ旅行が当たりますように……じゃなーい!!


観覧車に乗るのが、こんなにも恐怖だとは思わなかったぜ……。

観覧車に並んでいる人はいない。順番は直ぐに来る。

生憎、風も無風に近い。よって、観覧車の運行が停止する事はほぼ無い……。

どうする!?


「先輩、もしかして高所恐怖症ですか?でしたら、乗るのはやめておきましょうか。」

否、そんなんでどうする俺!

マリアが楽しみにしていた観覧車を高所恐怖症の俺のせいで台無しにしてたまるか!


「そそそんな事はありませんぜ、マリアさん?ささ、行きませう!」

「やっぱり怖いんじゃないですか……言葉遣いおかしいですよ!?大丈夫ですか?無理しないで下さい!」


グサ、グサ、グサ!!


マリアの気遣いが、逆に俺のココロに『言葉の槍』となってグサグサ刺さる。


「ほら、男の人だって、高所恐怖症の方多いですし!」

グサーーー!!

何たる致命傷の一撃! 

ここまで言われて、黙っていられるかー!


「あっ!せ、先輩!?」

俺はマリアの手をグッと握ると、観覧車に向かって歩き出す。


「二名様ですね、どうぞ!」

係員に誘導されながら、観覧車に乗り込む俺とマリア。

俺とマリアは隣に座る。


「大丈夫ですか、先輩?」

意外と大丈夫だな。隣にマリアがいるからかな。


不思議と落ち着いていられた。

「景色、こんなにも綺麗だったんだな。」

観覧車から見える三河湾がとても綺麗で、こんなにも落ち着くなんて思っても見なかった。

太陽の光で、三河湾がキラキラ輝き、まるで宝石が散りばめられているような光景だった。


「本当に綺麗ですね!」

きっとマリアも観覧車に乗るのは初めてなんだろう。

マリアは身を乗り出して景色を眺めていた。

「先輩、あっちが浜松です…………!?」

気が付いたら、振り向いてきたマリアに俺はキスをしていた。

「ん!?………………んんっ………。」

マリアは嫌がらなかった。

俺の腕を掴み、身を任せていた。


「まだ、ちゃんと言えて無かった。俺はマリアの事が大好きだ!好きで好きで好きで仕方ない! 今更だけど、俺と付き合って下さい!」

俺の言葉にマリアは、涙を浮かべながら微笑んで

「こちらこそ、よろしくお願い致します!」

と答えてくれた。

そんなマリアが愛おしくて、体を抱き寄せた。


それから、観覧車が一周し終わるまで、お互いの気持ちを確かめ合う様に、夢中でキスを重ね合った。


「ありがとうございました!」

係員が扉を開ける。

俺たち二人は、手を繋ぎながらそそくさと観覧車を後にした。


「つつ次は何処に行こうか!?」

「おおお腹空きましたね、ご飯食べましょうか!?」

俺達は噛み噛み状態で舞い上がっていた。


いきなりキスしたり、告白したり、ぶっ飛び過ぎじゃないか?! 

引かれてないか?!大丈夫か!?

心拍数がやばくて、心臓が破裂しちまいそうだ!

手汗もすごいし、あぁ、マリアはどう思ってるんだろう…………。



【その頃のマリア】


せせせ先輩からキス!?

しかも告白なんて萌え殺す気ですか!?

そのまま夢中でキスばかりしちゃうなんて、エッチな子だって引かれてないかな!?

心臓がバクバクいってるよー!

死んじゃいそうなくらい恥ずかしいよぅ!

手も凄い汗かいちゃってるし、先輩嫌じゃないかな………。



【再び田崎】


「取り敢えず、あそこの展望台のあるレストランでお昼ご飯食べようか!」

俺が指さした場所には、10階建てくらいの展望台のついた建物が建っていた。

この場所は、一階がレストランになっている為、そこで昼食をとる事にした。


時間はお昼の13時だが、人は少なく、すんなりと注文を終え、席に着くことができた。

「先輩はハンバーグセットですか。」

「マリアは…………それだけ!?」

俺の注文したものは、ハンバーグにサラダとライス、ドリンクが付いた定番メニュー。

対するマリアは、サラダのみだった。


「少ないって!俺のあげるから食べな!」

「いえ、いいんです!大丈夫です!」

頑ななマリアはそのまま、サラダを黙々と食べ始めた。


さっきはお腹空いたって言ってたのに、サラダだけって事は、女の子はサラダでお腹いっぱいになるんだな!


間違った知識を身に着けた田崎だった。

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