第104話 王都レイン

 風を切るが如く前進する馬車だったが、目的地が近付くにつれて速度を落としていく。馬車に乗っていたカイ達も速度が低下したことに気がつく。そこへ、御者からカイ達へ報告がある。


「皆様、もうすぐ王都レインです。暫し御辛抱を!」


 報告を受けたカイ、ルーアは前方へ身を乗り出すようにして近づく王都を眺める。王都へ来たことのあるリディアは特に変化なく淡々と準備を始める。クリエは居眠りをしているため、眠っているクリエを起こすために声をかけるナーブ。最後のパフはかつて住んでいた王都へと帰還してきたことに一抹の不安と母親の墓前を訪問することができることに期待と緊張が入り混じった表情になる。そうこうしている内に馬車は王都レインへと到着する。


王都レイン:レインベルク王国の首都。王城を有している都市であるため、街全体が要塞のような高い壁に囲まれている。王都の街並みは一見美しく煌びやかで訪れた人を驚かせる。だが、その美しさは表通りのみ。裏通りに入ってしまえば薄暗く治安の悪い状況で貧困に喘ぐ人々が行き交っている。知らずに裏通りに入ってしまえば、命を落とす可能性がある程に治安が悪い。そんな両極端な顔を持つ都市。


 入国審査をすることなく馬車で王都へと入国するカイ達。審査をしなかったことを疑問に思ったカイが御者へと尋ねる。


「あのー、入国審査をしなくて大丈夫なんですか?」

「はい。皆様は勇者様であるリディア様とお伴の方々です。そのような方々に入国審査をしてしまえば我々がお叱りを受けてしまいます。すぐに王城へと入ります。もう少しの間、ご不自由かもしれませんが馬車内でおくつろぎ下さい」

「あ……、はい」

「ふーん。リディアの野郎。丁重に扱われてるんだなぁー」


 何気ないルーアの言葉に眠そうなクリエとナーブが補足する。


「ふぁー。それはそうよルーア君。なんたってリディアさんは魔王の側近であろう五大将軍の一角を倒したのよ? 国としては丁重に扱う必要があるでしょうね」

「えぇ……。約百年の平和が踏みにじられようとしているのですからね。魔王の再来……。人々にとっては悪夢以外のなにものでもないですよ。ですが、魔王の再来と同時に勇者も現れたとなれば、人々に勇気と希望を与えてくれますから。リディアさんの存在はレインベルク王国だけに留まらず他国からも一目置かれているはずです」

「迷惑な話だ……。人を勝手に勇者と決めつけるとは……」

「はははは……。ま、まぁ、師匠。とりあえず、お話だけでも……。特に害があるわけではありませんから……」


 不機嫌そうなリディアにカイがフォローを入れるが、リディアはカイに視線を向けると意味深な言葉を放つ。


「……そうでもない。きっと面倒なことになる……。だが、安心しろ。カイ、パフ、クリエ、ナーブ。あとついでに羽虫は守ってやる」

「えっ? 師匠?」


 突如として全員を守ると宣言するリディア。その言葉の真意が理解できない一同は顔を見合わせて首を傾げるが、一人だけ怒鳴りながら抗議する。


「テメー! このペチャパイ! だれが羽虫だ! それから俺様をついで扱いするんじゃねぇー!」

「黙れ! この羽虫! 斬り殺されたいのか!」


 いつものリディアとルーアの喧嘩が始まってしまい話は流れる。だが、リディアの言葉通りに厄介事に巻き込まれることになることを誰もまだ知らない。



 ほどなくしてカイ達一行は問題なく王城の正門を通ると王城内へと入る。中庭で馬車から降りるカイ達。正面に見えるレインベルク城を見上げていると一行へある集団が近づいていく。集団の多くは王城を守護する兵士、兵士達を率いているのは二名。一名は如何にも貴族と言わんばかりの豪勢な出で立ちをした男性。だが、貴族と思われる男性の横にいる人物は明らかに雰囲気が違っていた。青い鎧を身につけ、腰には両刃長剣バスターソードを携えている戦士。屈強な体格と何事にも物怖じしないような強い瞳が印象的な中年男性。近づいてきた集団は、カイ達を前にして停止すると貴族風の男性が一歩前に出ながら温和な笑みで挨拶を始める。


「初めまして、勇者様とお伴の方々。私は陛下に仕える家臣の一人。ライオット・ベートと申します。以後お見知りおきを」


 丁寧な挨拶と同時に頭を下げる貴族。カイ達は各々が挨拶を行う。


「ど、どうも、俺は……、いや、僕は……、えーと、私は――」

「何やってんだ? カイ。普通に話せばいいだろう」

「いや、ルーア。でも、王様の家臣って……、かなり偉い人なんだぞ」

「けっ! 知ったことか! 俺様は大悪魔のルーア様だ!」


 相も変わらずなルーアの態度を見たカイが注意をしようとするが……。


「私はリディアだ。最初に言っておくが私は自分を勇者と思ってはいない。が勝手に私を勇者と呼ぶのは自由だが私は認めていない」


 リディアの態度もいつも通りであり、貴族……ただの貴族でなく王都の貴族であり、王族直属の家臣へ乱暴に「お前達」と発言する無礼な言葉に周囲の兵士達もざわめく。一方でリディアのことを知っていて一般常識の乏しいルーア、クリエは特に変化はない。しかし、一般常識を理解しているカイ、パフ、ナーブは驚いて目を丸くする。また、案内をしてきたアーロは青い顔をして狼狽える。場が荒れ始めそうな雰囲気になるがライオットが小さく頷きながら口を開く。


「ふむふむ。成程。つまり、勇者様……。いえ、リディア殿は御自分を勇者と思ってはいないと?」

「そうだ」

「そうですか……。いやいや、それは御謙遜だとは思いますが……。そのお考えこそがまさに勇者様にふさわしいです! まぁ、ここで長話をするのも御無礼になってしまいます。続きは陛下の御前で……。おっと、その前に彼のことも紹介しておきましょう。団長殿。どうぞ」


 話を切り上げ王城内へと入ろうとした矢先にライオットは横に佇んでいた青い鎧の戦士に話を振る。戦士は一歩前進すると堂々と名乗りを上げる。


「お初にお目にかかる。私はレインベルク王に仕える騎士団長のオーミックという。同じ戦士として、この国の窮地を救ってくれたことに最大の賛辞を送らせてもらう」

「そうか、その賛辞。素直に受け取ろう」


 挨拶を終えた一行は王城へと……レインベルク王が待つ謁見の間へと移動する。余談だが、会話の終了後にアーロが緊張感に耐えかねその場にへたり込むという珍事が起こるが、近くにいたクリエに背中を蹴られると同時に「さっさと動く!」と発破をかけられたアーロは我に返り動き出す。いつの間にかお馴染みになったクリエとアーロの掛け合いを全員が苦笑しながら眺めていた。


ライオット・ベート:レインベルク王国の重鎮。鋭い眼光と温和な笑顔を使い分けて相手を観察する。交渉事に関して任されている。貴族特有の特権意識は高い。


オーミック:レインベルク王国の騎士団長。アルベインに引けを取らない屈強な身体。紅い頭髪、意志の強い瞳、顔や身体にはいくつもの傷が残る。戦士としては一流でレインベルク王国最強の戦士。貴族ではないため、貴族との関わりは苦手としている。レインベルク王家にその身を捧げている。



 謁見の間へついたカイ達一行を多くの人々が出迎える。所々に兵士が守護する中、貴族も多く集まっている。案内をしていたライオットとオーミックも軽くお辞儀をすると所定の位置へと移動する。謁見の間にある一際大きな椅子が置かれている近くにライオットとオーミックは佇む。二人が離れたこともあるのか、周囲の視線がカイ達に……というよりは勇者であるリディアへと注がれる。視線の多くは好意的というよりは、奇異なものを見るような好奇心が見え隠れする視線がほとんどだ。周囲の視線にカイ達も気がつき居心地の悪さを感じている中、リディアだけはいつもと同じ表情を崩さない。しかし、その時間は長くはなかった。突如として大きな笛の音と口上が場を支配する。


「皆様。お待たせしました。フラム・ポン・エル・ベルク陛下の入室です」


 謁見の間に響いた声を聞いた全ての者が頭を垂れる。突然のことにカイ、ルーア、パフ、クリエは反応できなかったが、慌てた様子でカイとパフは周囲の真似をする。少し遅れたが状況を理解したクリエも面倒そうに頭を垂れる。唯一ルーアだけはカイの頭上で胡坐をかいていたが、カイが両手でルーアを掴み無理矢理に頭を下げさせる。文句を言おうとするルーアだが状況自体は理解しているため、仕方ないという様子で諦めて頭を垂れる。


 ゆっくりとした足取りで入って来る白髪の男性。髪は肩よりも伸びているが、整い光沢が輝く、顔にはいくつもの皺が浮き出ているが、表情は穏和で瞳も優しげ印象。彼こそが現レインベルク王国の国王フラム・ポン・エル・ベルク。続いて淡い赤色のドレスを着た若い女性が入ってくる。金色の髪を腰まで伸ばし、青い綺麗な瞳、何よりも多くの男性を釘付けにするような美しい容姿をしている。二人はそれぞれ自分の椅子へと腰掛ける。すると椅子に腰かけたフラムがライオットに目配せをする。


「皆様。陛下の許可が下りました。表を上げて結構です」


 その言葉を皮切りに一人、また一人と頭を上げる。周囲の気配に気がついたカイも頭を上げようとするが、全員が頭を上げたわけではないことを気配で感じ取りどうするべきか悩んでいた。しかし、リディアが頭を上げたことを理解するとゆっくりとカイも頭を上げる。初めて目にする王の姿を見たカイは目を輝かせる。一介の村人だった自分がこの国のトップである国王と対面することができた。もちろん、自分に会いたかったわけではなく師であるリディアのおかげでこの場にいることも理解している。だが、それでも一際の感動がカイを包んでいる。


 感動を胸に抱くカイ。その一方でライオットがフラムへと耳打ちをしている。軽く目を閉じて頷いていたフラムはライオットが一歩下がると同時に口を開く。


「ようこそこられた。リディア殿。私がフラム・ポン・エル・ベルクだ。まずは、我が国を襲った魔王の手下……不死者アンデッドの軍勢を打ち破ったこと。そして、魔王の側近の一人を打ち滅ぼしたことに感謝を述べる。誠に見事な勝利であった」


 一国の王からの賛辞に対して普通であれば恐縮するような場面だが、リディアの反応はいつも通りだ。


「別にお前のためにやったわけではない。私は私の守りたい者のために戦った。その結果に過ぎない」


 正直な……いや、無礼にもとられるリディアの言葉に周囲にいた多くの貴族から反感の声が漏れ出す。


「何だ! その言い方は!」「陛下の御前で……全くこれだから田舎者は!」

「平民の分際でなんと不遜な!」「あの者は本当に勇者か!?」


 周囲から飛ぶ攻撃的な発言にカイ、ルーア、パフが困惑する。一方でクリエ、ナーブは貴族の世界をよく理解しているため、面倒そうに聞き流す。当事者であるリディアも貴族の反応は予想通りであるため、表情一つ変えずにレインベルク王であるフラムを見据える。


「……う、うむ。そなたは誠の戦士ということか。しかし、どのような理由であれ我が国を救ってくれたことには変わりがない。感謝を述べる。……そして、そなたにささやかであるが褒美を授けようと思う」

「褒美?」

「うむ。……勇者リディアよ! 我が国を救った褒美として、そなたに貴族としての地位と王都レインの永住権を与える! これからは正式に我が国の勇者として、その力を使って欲しい」


 突如として言い渡された貴族位の授与に集まっていたほとんどの貴族が驚愕する。一方で王の側近である貴族や騎士団長のオーミックは事前に聞かされていたこともあり冷静でいる。異例な褒美を授与されたリディア。謁見の間は驚きと歓喜の声が入り混じる状態となる。だが、次のリディアから発せられる言葉で状況が一変する。


「断る」

『……はぁ?』


 王からの褒美に対してリディアは平然とした様子で拒絶する。そのため、誰ともなく多くの人々が意味が分からずに声を漏らす。最初は困惑、沈黙、最後には怒りとして周囲が騒ぎ始める。


「な、何を言っているのだ!」「全くだ! 陛下の褒美を断るだと?」

「聞き間違えでなければ万死に値する行為だぞ!」

「どういうことだ! 平民風情が!」


 怒号が降り注ぐ中でもリディアの態度に変化はない。


「言っておく。私は貴族に興味などない。そして、王都への永住権など必要ない。私はサイラスに自宅がある。友がいる。家族がいる。サイラスこそが私の故郷であり、私がいるべき場所だ」


 思いの丈を訴えるリディア。リディアの言葉にカイ、ルーア、パフ、クリエ、ナーブは微笑む。だが、リディアの言葉を聞いた他の貴族達は不快感を露わにして周囲の兵士へと命令を下す。


「あの無礼者を捕えろ! 抵抗するようなら殺してしまえ!」


 貴族の言葉に反応して兵士が槍を構えリディアを取り囲もうとする。兵士達の敵意を感じ取ったリディアは自身の剣へと手を伸ばす。一方でカイ達も戦闘態勢を取り始める。そこへ場違いな声が響き渡る。


「うふふふ……。あははははははは――」


 唐突な笑い声に全員の視線が集中する。笑っているのは王であるフラム……ではなく。フラムの横に並んで座している若い女性。笑っている女性の横ではフラムが狼狽した様子で注意する。


「こ、これ。アメリよ。こんな時に笑うなど……」

「――はぁ、はぁ……。すみません。お父様。ですが、とても可笑しかったものですので……。うふふ。お父様。お願いがあります」

「な、なんだ……?」

「彼女を許してあげて下さい」

『――ッ!』


 アメリという女性の言葉に貴族や兵士達に動揺が走る。一方でカイ達は状況がわからないため動きを止めて様子を見ている。


「あ、アメリ。何を突然……」

「だって、お父様。彼女は勇者様なんでしょう? でしたら許すべきだと思います。それに勇者様である彼女に兵士が勝てると思いますか?」

「そ、それは……」


 娘の言葉にフラムは動揺しながらも周囲を見渡す。


「確かに、一般の兵士では太刀打ちできぬかもしれぬが……」

「お言葉ですが、陛下。それにアメリ様。私共にもオーミック騎士団長殿がおられます! 如何に勇者とはいえオーミック殿に勝てるとは――」

「そうかもしれないわね。……でも、戦う理由がないように思います。皆がお怒りな理由は何? お父様の褒美を彼女が拒否したこと? それとも彼女の態度に対して?」

「……恐らくですが、その両方かと思われます。陛下の褒美を拒否することもそうですが先程からの礼を失する態度……。臣下である我らが怒るのは当然かと」

「そうかもね。でも、そもそも彼女を王城へと招待したのは私達よ。確かに彼女の態度は王族に対して無礼と捉えられるかもしれません。……ですが、それ以上の功績を彼女は提示しています」


 アメリの意図していることが理解できず、フラムとライオットを始め多くの人々が怪訝な表情になる。周囲が理解していないことをアメリは理解しながらも説明を続ける。


「簡単なことです。彼女は私達の国を……このレインベルク王国を救ってくれた。この功績を考えれば、あのような態度を取られたとしても咎めることはできません」

「そ、それは……。しかし、それでは示しがつきません! 如何に国を救った英雄とはいえ。あんな態度を――」

「それは私達の捉え方でしょう? えーっと。聞いてもいいかしら。リディアさん」

「何だ?」

「あなたはお父様を馬鹿にしているのですか?」

「いいや。お前達を馬鹿にしているつもりはない。私はいつも通りに接している」


 王女であるアメリへ対しての言葉遣いや態度に周囲の貴族は更に怒りを募らせるが、アメリ本人は満面の笑みで頷く。


「やっぱり。ね! お父様! リディアさんはこういう方なのです。私達に敵意を向けているわけでも、馬鹿にしているわけでもないのです。言い方はよくないかもしれませんが……。私達の常識とは違う環境で過ごされているのです。我々の常識で無礼だからと事を構えるのは愚かなことだと具申します」

「う、うむ。お前がそこまで言うのであれば……」

「ありがとうございます! お父様! というわけですので、皆さん。お怒りを鎮めて下さい。それからリディアさん。できることなら、これからはもう少し言葉遣いを丁寧にして頂けると助かります」

「ふむ。善処しよう」

「うふふ。あっ! 失礼しました。私の自己紹介をしていませんでした。私はアメリ。アメリ・ポン・エル・ベルクです。以後、お見知りおきを」


 王女としての威厳はないが、親しみを込めた挨拶にリディアを含めカイ達は安堵する。何より窮地を救ってもらったことへ感謝の念を持つ。


 嵐のような荒れる場となったが、一同は一度王城より出ることになる。数時間後に晩餐会を取り行うことを告げられて……。


フラム・ポン・エル・ベルク:現レインベルク王国の国王。温和な表情通りに温和な性格をしている。人当たりも良く国民のことを常に想っている。しかし、温和な性格が仇となり王としての威厳はなく。周囲の貴族に対処できずに振り回されてしまっている。そのため、レインベルク王国は内政が悪化している。


アメリ・ポン・エル・ベルク:レインベルク王国の王女。優しい笑顔と美しい容姿から周囲から天使とも評されている。



 王女の恩恵で許されたリディア。だが、事の成り行きが面白くない貴族達はカイ達が王城から去った後で口々にリディアを罵る。


「全く……。アメリ様にも困ったものだ……」

「やめろ。聞かれるぞ……」

「ふん! 知ったことか! 陛下も陛下だ。いくら可愛い娘の頼みとはいえ……。これでは我らの面子も保てん!」

「落ち着いて下さい。でしたら、このあとの晩餐会で私に妙案があります」

「妙案?」

「はい。あの無礼者共に恥をかかせてやりますよ」

「ほぅ。では、お手並み拝見といくか……。うん? 飲み物がなくなったな……。おい! メイド! 飲み物を持て!」


 空のグラスを掲げながら貴族の一人が横柄な物言いで近くのメイドへと命令をする。メイドが丁寧に頭を垂れ新しい飲み物を注ぐ。そのとき貴族の一人があることに気がつく。


「うん? お前は……。あまり見かけんな……。新入りか?」

「はい。私は先週よりメイドとして働かせてもらっております。まだまだ至らぬ点があるとは思いますがよろしくお願い致します」


 新人メイドが恭しく丁寧に挨拶をすると貴族達はご満悦な表情で労いの言葉をかける。


「うむ。なかなか見所がありそうだ」

「そうですね。丁寧な物言いもそうですが……。何より……」

「そうだな。容姿も申し分ないな……。おい。名は何と言うのだ?」


 下心を含んだ何気ない貴族の質問だが、新人メイドは動じることなく笑みを絶やさず媚びるように答える。


「私ですか? 私はポプラと申します。以後お見知りおきを……」


 名を告げると同時に深々と頭を垂れるポプラの瞳には人間の貴族など映ってはいない。人間の貴族などポプラにとっては取るに足らない存在だからだ。媚を売るように挨拶をしながらポプラが考えていたことは……。


(……ユダ様の計画通りですね……。これより計画を第二段階へと移行させましょう……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る