第37話 『大賢者』の奴隷はもう一人

 大人気恋愛ゲーム、『聖女様って、呼ばないで!』

 主人公であるマリア・ニュートラルと、ミサキ・ドラゴンは永遠のライバルだ。

 ゲームの中ではミサキは中ボスの扱いで、主人公であるマリアとミサキはバチバチとやり合うんだ。

 そんなミサキが明日からは学生として、この学園で過ごすことを宣言した。


 魔王アグエロ、やったぞ! 

 これって、ミサキは魔王軍と決裂するってことでいいんだよな!?


 俺の望んでいた未来なんだけど、まさかこんなに早く訪れてしまうとは。

 もしや、これはマリアが俺の過去をばらしたお陰か? マリア、グッドだった?


 しかも同時にレベルアップしたし。


【レベル1からレベル2へ移行。世界の命運に影響を与える人物の未来を変えて、見事にレベルアップ条件を満たしました。ぶっちゃけ大賢者ウィンフィールド、早すぎると思います。貴方、何者ですか? まあ、いいですけど……さて、今後のレベルアップ条件も、重要人物の未来に影響を与えることです】


「ウィンフィールド。君、どうしたの? 急に立ち上がって……びっくりするじゃない」


「エアロ……それは多分、僕がびっくりするようなことを言ったからだと思う」


 ミサキが自分から魔王軍との決裂を言い出してくれて、嬉しすぎて立ち上がった。ミサキの通りなんだけど、驚き具合はこっちの方が強かった。

 大賢者の特殊補正。  

 ステータスさんがペラペラと俺に向かって話しかけているからだ。


【誰が重要人物かは自分で判断してください。ただ、一つご注意下さい。重要人物の傍にいると思いもよらぬ危険に巻き込まれて、大賢者はぶっちゃけ早死にします。レベルアップのために危険を冒しがちな大賢者を長生きさせるために私がいます】


 今までは魔剣の暴走とか、リッチとの出会いとか、ゲスイネズミ・ビックボスとか、魔王ミサキや魔王ラックんとか!

 俺の命に関わるような場面でしか、話しかけてこなかったステータスさんがなんか、めっちゃ俺に話しかけてきてる!


【初めまして、ご主人様。私、大賢者専用奴隷のサラと申します! 今後はこれまでみたいな危険なことをするのは止めて下さいね? 特に魔王に今の能力値で戦いを挑むなんて、サラは、サラは、ふざけるなって思っています! 大賢者ウィンフィールド、いいえ、ご主人様はこの世界でたった一人の大賢者なんですよ!? 英雄や剣聖、賢者も超える、スーパー職業! あの勇者や大魔王と並ぶ、大賢者なんですよ!? 分かってるんですか!? 命を粗末にしないでくださいッ!】


「ウィン? どうしたの?」


「いや、なんでもない……ちょっと頭がクラクラして……」


 俺は椅子に座った。

 いやいや、こんなの知らないぞ?

 何が起きている? 何故、このタイミング話しかけてきた? サラ? 大賢者専用の奴隷? クエスチョンが一杯だ。

 俺の様子が可笑しいからか、ミサキとエアロの二人が俺を見る、


「どうしたのかしら……ミサキちゃん、彼、疲れてるのかしら?」


「きっと、今日色々あったからだよ! そうだ! 僕、ウィンの布団をひいてくる! エアロ! 毛布はどこにあるの!?」


 エアロとミサキが二階へどたばたと上がっていく。確かに寝床の整理はミサキの仕事だったけど、今日ぐらいはいいのに。

 俺は彼らの後ろ姿をじっと見ながら、脳内に響くやけにハイテンションな声の相手をすることにした。


【さてそれでは、気を取り直してご主人様! ご主人様が死なないようにレベルアップの恩恵として二択の選択肢を与えます! 能力の上昇か、ホーエルン魔法学園に向かっている勇者の秘密。どちらを求めますか――? サラの、サラのおすすめは断然、勇者の秘密ですッ! ご主人様、こっちを選んでくださいね!】


 ——能力の上昇一択だ! 強さ、強さ、強さ!!!

 俺の能力値は低すぎる。

 今日はラックんのパンチ一撃で死んだ、能力の底上げは必須だ。


 ついさっき、ミサキが人間として生きることを選択した。あの魔王ラックんじゃなくて、他の刺客もやってくるかもしれないからな。

 そいつらを叩き返すためには、素の実力も上げないといけない。


【え。うそでしょ! ご主人様! 能力の上昇なんですか!? 勇者の情報、いらないんですか!? サラは、嘘をつきませんよ!? 近くにいる嘘ばっかりの可愛くない奴隷よりも断然信頼できますよ!?】


 ていうか、ホーエルン魔法学園にやってくる勇者? 

 勘弁してくれ! やっぱり、来るかあいつ! 

 でも、勇者の情報なんているもんか! あいつに関しては嫌ってぐらい知っているからな!


【ま、まあ、ご主人様が能力を望むなら、いいですけど……! あと、基本的にサラは、ご主人様が死にそうな時か、レベルアップの時ぐらいしか出てこれませんから……! じゃあ、レベルアッ―プ!!!】


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 名前:ウィンフィールド・ピクミン

 性別:男

 種族:人間(大賢者ワイズマン

 レベル:2

 ジョブ:『常人ノーマル』『大賢者ワイズマン

 隠れ職業;『厄病神ゴースト』※特殊補正のみ。ステータス値に『厄病神ゴースト』反映はされません。

 HP:151/171

 MP:1030/1030

 攻撃力:160

 防御力: 230

 俊敏力: 215

 魔力:780

 知力: 71500

 幸運: -10000


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