時雨
夢を見ていた
第1話
いつの御代のことでしたでしょうか。
光る君と呼ばれなさった方の愛人に、『夕顔』と呼ばれた女がいました。
夕顔は光る君が愛した別の女の怨霊に憑りつかれ、命を落としてしまいました。光る君はそれをたいそう悲しみ、涙で袖を濡らす日々を過ごしました。
二方の物語は、今も尚、語り継がれています。
ですからここでは、別の者が光の当たらなかった、誰も知らないある種の陰のような夢物語を、綴っていきたく思います。
【心あてに それかとぞ見る 白露の
ひかりそへたる 夕顔の花 ――夕顔】
彼の主人の知り合いが住むという家があり、その隣に、夕顔という白い花が咲く場所がありました。その花をご覧になって、主人は何やら興をそそられたらしく、護衛の随身に「あれは何か。」と雅に和歌を踏まえて尋ねなさったので、随身は答えました。
「あの白く咲いている花は、夕顔と申します。」
そうして付け足します。「名こそ人並みですが、このように、あわれな家の垣根に咲くのです」
主人は哀れんで、花を一房折ってこいと命じなさいます。それを受けて随身が歩み寄ると、花咲く門の内から、薄紅梅色をしたちいさな手がおいでおいでとうち招くので、随身は不思議に思って近づくと、可愛らしい女童が立っていました。
「あなた、御随身さま?」
琴のつま弾くような声でした。思わずその声に聴き惚れていましたが、随身はすぐにはっとして、うなずきました。すると女童は可笑しそうににっこりして、そっと美しい文字の書かれた白い扇を手渡しました。随身は「こは何か。」と尋ねました。
「花を差し上げるのでしょう? どうぞこれに置いて差し上げてください。とてもたよりない花ですもの。」
それを受け取った主人は、面白くお思いになったのか、それからというもの、この『夕顔』という女性のもとへお通いになるようになりました。
随身は主人が女と逢っている時、邪魔にならぬよういつも外で警備していました。今晩は新月ということもあり、辺りは真っ暗でどこか不気味に思えます。随身は手持ち無沙汰ということもあり、軽い魔除けのために、背負っていた弓の弦を軽く爪弾きました。ただしあまり大きくかき鳴らすと、警鐘の意ととられかねないので、そっと優しく弾きます。音が虫の鳴き声に混じって、消えてゆきました。
この随身は琴の名手としてとても高い評判を得ていました。ちなみに彼の所属する、貴族護衛を務める近衛府では、彼の地位はあまりよくありませんでしたが、貴族から彼の琴の腕――勿論それだけではなく護衛に対する細やかな気配りなど――が買われ、今よりもひとつ、上の位へ出世することが既に決まっておりました。
ふと。誰かが近づく気配がします。随身は手を止めて後ろを振り返りました。
「何か、悪いものでも出てきましたか?」
例の、扇を渡してきた女童でした。寝床から抜け出してきたのでしょうか。随身は彼女の立つ縁側の方へと近づき、小声でささやきました。
「幼子が、こんな遅くまで起きていてはいけませんよ。」
すると心外だと言わんばかりに反論しました。その素直な様子が子供らしく可愛らしくて、つい表情を緩める。
「私はたしかに、人並みよりちいさい姿をしてますが、御随身さまとそんなに歳は離れていないように思われますよ。」
「いやいやご冗談を。」
「冗談じゃないです、私もう十四の歳なんですよ!」
「おや、そうでしたか。では私と三つしか変わりませんね。」
「ふふ、驚きましたか」
「そうですね、ほんの少し。」
そんな他愛の無いやり取りからしばらくして。女童が、
「お呼びする名がなくては、不便ですわね。私のことは時雨とお呼びになってください。時雨の季節が生まれ月ですので。」と言い出しました。
随身は少し迷ってから、「暁です。」とだけ名乗りました。この名は彼がずいぶん昔に詠んだ下手な歌を、周りの人々がからかってつけた名で、すっかり皆の間に定着してしまったものでしたが、やはり名乗る時はそのときのことを思い出してしまうのでしょう。暁という随身は苦笑いを浮かべました。時雨と名乗った女童は不思議そうにしたが、すぐにまたお喋りを始めました。
あとから知ったことですが、時雨は決してお喋りな性格というわけではありませんでした。しかし、この時ばかりは懸命に口を動かしておりました。その内容とは、すべて時雨が仕えている夕顔という女性に関してのものばかり。夕顔は頼りのない身の上でありました。ですから、随身が仕える主人のように立派な身分の殿方との縁が必要不可欠だったのです。
「主さまはとても可憐で美しい方です。」
優しい。穏やか。そして健気。時雨は女房たちから教え込まれた言葉を思い返しおもいかえししながら、必死に話し続けました。……そう。彼女が暁に歩み寄ったのは偶然のことではなかったのです。暁がその真意に気づいたかどうかはわかりませんが、話の区切りごとに丁寧に相槌を打っている姿は時雨の身としましても、さぞうれしかったことだろうと思われます。
そして夜が明け。主人は女と別れ、牛車に乗り込みます。暁は、それにつき従い、また夜が暮れるころにはお供して、夕顔たちの住む家へと赴くのでありました。
【寄りてこそ それかとも見め たそかれに
ほのぼの見つる 花の夕顔 ――源氏】
それから。主人同士の逢瀬は頻繁に行われ、従者同士の『お喋り』も幾たびとなく繰り返されることとなります。
「暁さまは、主さまのような方、どう思われます?」
この問いは、話がひとつ済むたびに訊かれる常套句でありましたので、暁はいつもと同じように、「すてきな方だと思います。」とだけ答えます。
最初のころは時雨の方もその返事に喜んでいたのですが、次第にその歓喜の色が消え、どこか複雑そうな、辛いのを堪えるような声色へと変わっていったのでした。それは、殿方に好意を寄せる女にとって何よりも堪え難い言葉であって、言わせているのは自分ではあるものの、かといって主人の評判はとびきり好いものにして、主人を助けなければという立場におかれ、あまたの感情が絡まり合うように波打っているのです。ましてや幼い少女の一途な想いですから、苦しい心うちも察せられることでしょう。
「主さまはきっと、世の殿方さまから、お好かれになるような心の持ち主でございます。女童として、これ以上うれしいことはないのです。……。」
だんだん尻すぼみになってゆく声に、暁は彼女をからかうように笑います。声色の機微には気づいても、心の機微には気づかぬ男心といったものでありましょうか。
「夜も遅いので、眠くなられたのでしょう。もう寝床にお帰りになってはいかがですか?」
「そうではございません。そうでは……。」
しかし、否定する言葉も徐々に舌足らずになってゆくのが、自分でもわかりましたので、彼の言葉も的外れではありません。時雨は遠のく意識を必死に保とうとするのですが、こくんこくんと船をこぐばかりでどうしようもなくなってしまい。
それを見た暁はしゃがみ込んで、縁側に座る時雨と高さを合わせ、早く帰るよう促すのですが、彼女は一向に動こうとはしませんでした。
「……もう少し、もうすこしだけ」
聞き分けのない子供を相手にするように、暁は優しく諭します。
「本来、子供がこんなに遅くまで起きているものではないのです。さあさ、今日はお帰り。また夜が暗くなり始めるころに、お会いしましょう。」
「子供じゃ……ありません。ですから――。」
「私にとっては幼子も同然です。ほら。」
肩を軽く叩いてやると、時雨はゆらゆらと彼の肩に頭を預け、横を向いて瞳を瞬かせました。起き上がる気配もありません。「こら。」と彼が叱ると ぐずったので、仕方なく暁は彼女の体を抱き上げ、中へと入りました。
「あるじさまは、頼る縁の少ないお方。私はもっと、縁の無いこども。……お母さま。お父さま。どうして私を見棄ててしまわれたの。」
そうしてぐずぐずとしきりに鼻をすするので、暁は憐れに思ってそっと足を止めました。いつもは陽気な少女の時雨。そんな彼女の仄暗い過去の片鱗に触れた暁は、なんとか彼女の悲しみを和らげられないかと、ぎこちない様子で小さな体を抱え直し、上役の女への対応に関する助言を思い出し、恐る恐る抱き締めてみました。暁は真面目な性格柄、みだりに女性と関係をもったことは今まで一度と無く、近衛府の人々からよくからかわれていました。ですから三つ歳下のちいさな女童相手とはいえ、緊張していましたし、どう対応すべきかも心得ておりませんでした。
彼が仕える主人ならば、そんなこと意にも介さず何処へなりとも連れて行ってしまうだろう。これは暁の言葉。
暁に少女を慰める術はありませんでした。それでも、彼が自分を元気づけようとしているのが夢うつつにも伝わり、時雨はそっとほほえみました。先ほどの不機嫌さはどこかへ行ってしまったのも、現金だといえばそうなりますが。
――と。
「そこにいらっしゃるのは、誰?」
落ち着き払った声が彼の耳に届きました。夕顔に仕える女房の一人だろう。暁は自分の身分を明かしてから、そっと時雨を彼女に託しました。時雨は既に夢の中へとおちていました。
「この子、毎夜あなたが来るのを楽しみにしているんですよ。」
女房は優しい手つきで、時雨の髪をすきました。あまそぎの黒髪が月の光に照らされて、艶やかに輝いているのは趣がありました。
「眠いのを我慢して、あなたを待っていました。――ここには、殿方を待つ女が幾人もいるのですね。」
「そう、ですか。」
「そうですよ。」
女房は目を伏せ、囁きます。
「何かあった時は、どうかお力を貸していただきたいものです……。」
返事も待たず、女房は奥へと帰ってゆきました。妙に妖しい空気を纏う女だと、その後ろ姿を見送っていると、遠くの方で暁を呼ぶ音が聞こえました。なるほど空はもう明るみ始めていました。
――この女房は主人の運命でも知っていたのだろうか。
それから七日後。夕顔は光る君と旅寝をし、夕顔はその宿で息を引き取りました。
若き光る君はひどく取り乱しなさり、夕顔と古くからの仲の右近という女は、今にもあとを追いかけそうな危うさがありました。その女は例の晩に時雨を引きとった女房でした。そんな落ち着き払っていた彼女が悲しみに暮れているのを見ると、とても家の者を大切にする方だったのだろうと自然と気づかされました。
暁もその晩は主人の護衛を任されておりましたが、夕顔に異変があり、主人に呼ばれた時には、既にすべて遅く。
まだ夕顔の死をのみ込めないでいる主人は、その後お忍びで再び夕顔にまみえなさいましたが、ますます悲しみにうちひしがれ、目に見えて衰弱なさってゆくのですが、暁を含め誰にもどうすることもできなかったのです。
暁もまた僅かではありましたが、夕顔の亡骸を目にしました。こんなに近くで彼女のことを見るのは初めてのことでしたが、触れれば露のように消えてしまいそうな、そんな頼りなさを感じました。
そこでふと、時雨の顔が脳裏に浮かんできました。そうだ。彼女はまだ、主人の死を知らない……。
光る君の一番の付き人である方が、「これらのことはくれぐれも内密に。」と命じましたので、暁や女房らの口は封じられることとなったのですが、人がそううまく約束を守ることができるとは思えません。この事件から遠のく人々から水がしみ渡るように、夕顔の噂が伝わってゆくのでした。
右近は光る君自らが引き取り、夕顔の女房らは自分の家や縁のある者のもとへ戻り、みな散り散りになっていったといいます。
それを聞いて、にはて、時雨はどうなったことだろうと暁が思っていましたところに、見慣れた少女の姿が視界に入ってきました。
今日は光る君ではない他の貴族の護衛のために、亡き夕顔の家の近くへやって来たのですが、時雨は構うことなく脇目もふらずに暁の前に立ちました。その目は真っ赤に腫れ上がっており、日々泣き暮らしていることがすぐに見て取れました。暁の心は哀れみの情で満ちてゆきましたが、彼の頑固なまでに真面目な性格が、彼女に真実を告げることを好しとしません。
時雨は見知った顔を見て、不安と安堵が入り混じった気持ちになったのでしょう。顔を歪めて人目も憚らず泣き始めました。幸い護衛する貴族の方は近くにおらず、人気も少ない場所でしたが、あんまりひどく泣くので、家の陰から覗く目も出てきました。暁は慌てて時雨を自らの身にうずめさせ、泣き声が響かないように苦心しますが、どれもあまり意味を成しませんでした。
「暁さまは、どうして、いらっしゃらなくなってしまったの? 私のあるじさまは、どこへお出かけになって、どこにいらっしゃているの? ……ねえ、あるじさまは、ほんとうに、御隠れになって、しまわれたの――?」
「……。」
「お答えになれないのですか。あるじさまに仕えていたわたしたちでさえも? 知らせてはいただけないのですか。いやでも耳に届く噂を、嘘かほんとうかと怯えながら、一生を暮せと、そんな風におっしゃるのでしょうかっ。」
落ち着かせようと肩に触れると、その手を払って時雨は、ぐっと唇を噛み締めてこちらを見上げました。殺し損ねた嗚咽は、いくつも漏れ出ています。懸命に怒りを堪えようとしている姿はあまりに不憫で、暁の心は揺れました。
「時雨、」
「ほんとうのことを、どうか。あるじさまは、もう、この世にいらっしゃらないのかだけどうかお教えくださって。」
俯き、暁の着物を握り締め、頼りなく震える時雨に、これ以上の悲しみは惨かろうと思うのですが、このまま噂に翻弄されて生きてゆくのはあまりに不憫でしたので、ついに暁は本当のことを、短く伝えました。それを聞いて、時雨はさめざめと涙を流し、暁の裾ではなく自分のそれを掴み、震える身を抱きしめながら、地を見つめて独りごちました。
「あるじさま、時雨は一体どうすれば。生きてゆく道が、ついに断たれてしまったようです。時雨は一体、どうなってしまうの――?」
暁は思わず問い掛けます。
「誰か、頼れる者はいないのですか。」
それに対し、すぐさま心もとない返事が返ってきます。
「ありましたら、私はこんなに不安に苛まれることはないでしょう。父母は私を棄て行きました。主さまがいらっしゃらないのに、私ばかりが居座ることはできません。……きっと私の身はもう、亡びの道しか残されていないのです。運命が定めた道ならば、時雨にはどうすることもできないのです。この世のすべてに、お別れを。っ、ああ、最期にあなたに、」
時雨は涙でいっぱいの瞳を暁に向けて、今にも崩れてしまいそうな笑みを浮かべました。
「あなたに。今生のお別れを。」
暁は一瞬のうちに、覚悟し、決意し、誓った。
そう、すべてを。
次の瞬間には、時雨を抱きかかえ、護衛をしていた貴族に深く謝罪し、近衛府へと駆け出しました。
そうして近衛府を取り仕切っている上役へ頭を地につけ頼み込んだのです。
「お願いがあります。」
ただならぬ気迫に圧された上役は驚愕し、半ば怯えながら先を促します。時雨は驚きのあまり涙は乾き、めまぐるしい状況に理解が追い付かずに言葉も出せず、おろおろするばかりです。
「彼女を、ここに置いてやっては頂けませんか。」
「あ、暁さま!」
まさか彼の口からそんな言葉が出てくるとは露にも思わず、時雨は焦りました。そんなことは出来はしないと、誰よりも時雨が承知していましたから。なのに、暁は時雨の制止を振り切り、言葉を続けます。このままでは暁の身までも危ういのではと時雨は気が気でありません。
「面倒は勿論私が見ます。仕事も倍以上行います。ただ彼女が衣食住に困らないように、して頂きたいのです。――。そのためならば私を罷免して頂いても、構いません。」
今度は上役が焦る番でした。まさか仕事熱心な彼が仕事を放り出してまでやって来たので、ただならぬことだとは俄に覚悟してはいましたがまさかそんなことを言い出すなんて。まずは落ち着けと、莫迦なことは言うなと声を掛けますけれども、暁の目は揺らぎません。昔から、こうと決めれば梃子でも動かぬ男でした。それでも、琴の名手で尚且つ仕事の速いこの男を切り捨てるにはあまりにも惜しく。途方に暮れる上役に、戸惑う女童。異様な光景に近衛府の周りにはわらわらと人々が集まり出していました。何より渦中にいる暁が幼いとはいえ女を連れている、それだけでも有り得ない状況なのです。宮中はすっかりこの話題で持ちきりになり、ついには右近から光る君にまで話は伝わってゆきました。
「噂の琴の名手が、かの人の女童を連れてきたというのか。」
すると光る君は近くにいた女房に言付けを頼みなさり、近衛府へと向かわせました。右近は不思議そうにしておりました。
「私は父母ともに存命ですし、商いをしておりますのでそれを手伝いすればまあ、死ぬことはないでしょう。しかしこの女童は、頼るべき縁も無く、このままでは主人のあとを追って命を棄てねばなりません。どちらを救うべきか、きっとご理解頂けると存じ上げます。」
「いやしかしだな、」
「暁さま、もうよろしいです……、これは時雨の運命。運命から背を向けた者の末路は決まって不幸でございます。私はこれ以上――。ましてあなた様のご負担になるくらいならば、死した方がどれほどいいか。お願いです、」
「いや、駄目だ。二度とそんなことを言うな。きみをこんなことで死なせはしない。」
「暁さま!」
そこに急いでやって来た女房が到着し、近衛府にいる人々に向かって言付けを伝えました。その内容というのも、「自分の縁者である方の奥方の女童として、時雨を仕えさせる」といったもので、その代わりの条件が「暁が光る君に琴を演奏する」という、まさに仏の如く尊い救いの手が差し伸べられた形となりました。夕顔との逢瀬はお忍びのことでしたので、事情を知らぬ上役たちは何故光る君がわざわざ面倒を見なさるのかが理解できなかった。が、暁はそれを聞くや否や、やって来た女房に向け深々と礼を述べ、すぐさま立ち上がり光る君のもとへと急ぐのでありました。未だにわけのわからぬ時雨でしたが、自分の身がなんとか助かったことに対する安堵と感謝の念と申し訳なさとで涙が溢れ、出ていった暁のあとを追おうとするのですが、視界がぼやけて歩くのもままならないのです。
暁はついてきた彼女に駆け寄り、腕を引いて光る君のもとへ急ぎました。そんな姿を見ると、近衛府の人々は皆、自然と顔を見合せ笑い合うのでした。
「みてご覧。あの暁が、女性の手を引いているぞ。」
なるほど、確かに彼が手を引く様子はまだ不慣れで、なんだかちいさな子供がすがり合っているようで、どこか可笑しく思えるのでした。
「あなたが噂の女童さん?」
時雨は向かい合う女性に首を傾げます。奥ゆかしい、端麗な女性は光る君にご紹介頂いた方で、皆からは蜜柑の君と呼ばれていました。
「噂、ですか?」
「そう、噂。宮中でも有名な御琴の名手の方、身寄りの無い女の子をここへお連れになったとか。今まで微塵も女気がなかった方が急に……。不思議なことではなくて? 今まで言い寄られた女性も幾人かいらっしゃるでしょう。それを蹴ってまでして肩入れする少女。みてみたくなるのは当然のことでしょう?」
時雨は身を縮まらせて、蜜柑の君からの視線から逃れようとしました。
時雨 夢を見ていた @orangebbk
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