本当の顔

丸 子

ほんとうの かお

10がつ24にち

たんじょうびプレゼントに ランドセルを かってもらった。

ぜんぜん うれしくない。



3がつ30にち

もうすぐ1ねんせいになる。

ヤスとコウくんと おなじ がっこうに いく。

とっても たのしみ。

ほんとうは しんぱい。



4がつ8にち

にゅうがくしき。

ずっと すわっていたから おしりが いたくなった。

もぞもぞ うごいて おかあさんに にらまれた。

なまえを よばれたときは おおきなこえで ハイ! と いった。

へんなこえになって わらわれた。

いやに なった。



4がつ20にち

みんな おめんを かぶってる。

キツネとか イヌの おめん。

せんたいヒーローとか なんとかシャインみたいな おめん。

ヤスもコウくんも おめんを かぶってて、しらない ひと みたい。

やさしいし、わらっているけど、

こわい。



5月13日

おめんを とろうとして えみちゃんの かみの毛を ひっぱったら、せんせいに しかられた。

さくせん しっぱい。



六月5日

えんそくに 行った。

みんな わらってた。

ぼくも いっぱい わらった。

たのしかった。



七月22日

キャンプ。

きもだめし。

先生が おばけだって わかってるけど、すごく こわくて となりの ハルオくんの うでを つかんでしまった。

ハルオくんが ビクッとして、おめんが ポロリと とれた。

ハルオくんと目があって、わらいあった。


じょしが なん人も ないていて、その子たちの おめんも とれた。

かわいそうだから、そばに 行った。



九月十六日

うんどう会。

リレーのせんしゅに なった。

みんなが おうえんしてくれた。

クラスの子が ぼくの名前を大きな声で よんでくれた。

その声をきいたら、パワーが出てきて 一等しょうを とった。

みんなの おうえんの おかげだ。

また おめんが ポロポロ 取れた。



一月三十一日

もう おめんを かぶっている子は いない。

たった ひとりを ぬかして。



二月三日

せつ分。

豆まきのとき、ケンジ君と けんかした。

さいごまで おめんを つけてるのが ケンジ君だ。

ぼくは ケンジ君が どんな子か よくわからない。

先生が せつ分の 話をしてくれて、ぼくが 手をあげて しつもんしたのに、ケンジ君は ぼくのことを わらった。

あたまに きたから けんかした。



二月八日

ケンジ君と しゃべってない。

しゃべりたくない。



二月十日

先生が ぼくと ケンジ君を 呼んで、話し合いになった。



二月二十日

ケンジ君と なかなおりした。

ケンジ君は ぼくのことを わらっていたんじゃなかった。

なんだ、そうだったんだ。

明日、ぜったいに、ケンジ君に あやまろう。



二月二十一日

朝早く学校に行って、ケンジ君を まった。

きんちょうしたけど ケンジ君に おはようを言って、ケンジ君に あやまった。

ぼくのことを ゆるしてくれて、ケンジ君も あやまってくれた。

ケンジ君の おめんが とれた。

もう、だれも おめんを かぶっていない。



三月十七日

ケンジ君と いっしょに あそんだ。

ケンジ君が ぼくのことを 話してくれた。

ぼくは こわかったんだって。

ずっと ムスッとしていて、話しかけづらかったそうだ。

でも 今は ちがって、よく わらって たのしい友だちになったって。

それを きいて、とっても うれしかった。

そして、ぼくも おめんを かぶっていたんだなって おもった。

おめんが とれて よかった。

もう、だれのことも こわくない。

だれからも こわがられない。


これが ぼくの ほんとうのかお。

きっと、これが みんなの ほんとうのかおだ。

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本当の顔 丸 子 @mal-co

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