みーちゃんと猫の世界

丸 子

みーちゃんと ねこの せかい

みーちゃんは木登りが得意な3歳の女の子。

今日も木登りをしていると今まで気が付かなかったウロを見つけました。

「毎日この木に登っていたのに、全然知らなかった!」

みーちゃんは何気なくウロの中を覗いてみました。

猫がいました。

「こんにちは、みーちゃん」

「あ、こんにちは」

え!

思わず あいさつを返した みーちゃんでしたが、人間の言葉を話す猫にビックリ仰天!

「ね……ねこが しゃべった〜〜〜〜!!!」

そんな みーちゃんの叫びには お構いなしに

「みーちゃんは木登りが とっても上手ですね。いつ見ても感心してしまいますよ」

と話し続けます。

「あ、ありがとう」

みーちゃんは 何がなんだかわからないまま 猫の話を聞くことにしました。

「みーちゃんは ぼくの言葉に驚いているけれど ちゃんと お返事してくれますので、特別に猫の世界へ連れて行ってあげましょう」

「猫の世界?」

「そうです。このウロをずっと降りていきますと、ぼくたちの世界があるんです。行ってみたいですか?」

「行ってみたい!」

「それなら、ここに入ってください」

「うん、わかった」

みーちゃんがウロの中に入った途端に、ウロごと下に吸い込まれていきました。

「エレベーターみたい…」

「みーちゃんは どきどき してきました。

「猫の世界って猫がたくさんいるの?」

「はい、猫しかいません」

「ふーん」

猫だけの世界って、どんなところでしょう。

みーちゃんが 斜め上を見上げて想像していると

「着きましたよ」

猫の声がしました。

我に返った みーちゃんの目に飛び込んできたものは…

どこまでもどこまでも広がる草原が一面に広がっています。

草原には猫の大好きなおもちゃが ところどころに置いてありました。

高くて何段にも分かれているキャットタワー、爪研ぎ、ふわふわで暖かそうな毛布の家、キラキラと光に反射してひかる細長いリボンのようなものは風にはためいていますし、走るねずみのおもちゃ、壁には不規則に動く光の点が投写されています。

足元の草は良い香りがして触り心地がよく、つい寝転びたくなります。

奥には大きな木が何本かあって、そこで爪研ぎをしている猫もいます。

よく見ると、潜り込めるようなトンネルや かまくらもあり、すべて草でできています。

猫の鳴き声も聞こえてきました。

あちらこちらで鳴いているようです。

なんてたくさんの鳴き声なんでしょう!

鳴き声も高かったり低かったりと様々です。

目をこらすと、数えきれないほどの猫がいました。

追いかけっこをしたり、毛づくろいしたり、うとうとしていたり 、どの猫も とても幸せそうです。

みーちゃんも つられて笑顔になっていました。

そして、あまりの気持ちよさに眠くなってきました。

大きな木の下に座り、太い幹によりかかって

「ちょっとだけ、ね」

と 目をつむりました。

いい気持ちです。


「……ちゃん、……みーちゃん」

お父さんの声で目が覚めました。

「猫さん、もう少しだけ…」

「みーちゃん、猫の夢を見てたのかな?」

「夢? あれ…猫の世界は?」

そう言って目をこすりながら、あたりを見回す みーちゃんに

「猫の世界? ずいぶんと楽しそうだねぇ」

と お父さんが笑いました。

「わたしね、猫とお話したんだよ。夢だったのかなぁ」

みーちゃんは残念そうです。

「さぁ、日が沈んで寒くなってきたから家の中に入ろうか」

お父さんと手を繋いで玄関に入ると、小さな箱がおいてありました。

ごそごそと何かが動いている音が聞こえてきます。

靴を脱ぎながら みーちゃんは

「これ、何?」

と お父さんに聞きました。

「開けてごらん」

お父さんに 促され、そうっと ふたを開けると、中には仔猫が入っていました。

「うわぁ、かわいい!」

その猫はウロの中で会った猫にそっくりです。

「今日から新しい家族が増えるんだよ。みーちゃん、ちゃんと お世話してあげてね」

お父さんの声が遠くから聞こえてくるようです。

みーちゃんは嬉しさで仔猫から目が離せません。

「この猫、お話するかなぁ」

その声に答えるように、子猫が

「ミャア」

と鳴きました。

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みーちゃんと猫の世界 丸 子 @mal-co

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