第27話 スキル進化
「………はぁ…眠い」
スキル進化に考えながら気が付けば眠ってしまっていた彰吾は、翌日の昼過ぎに目を覚ますと軽く深呼吸して眠気と戦っていた。部屋の外からはすでに昼近くなのか太陽の光がまっすぐ伸びて入ってきていた。
そんな光を見ながら彰吾はしっかりと目を覚ますために洗面所で顔を洗いに向かった。
ほどなくして身支度まで終わらせた彰吾は執務室の広いソファーに横になって、朝食代わりの果物を片手にくつろいでいた。
「うん…美味い。やっぱり、この世界の食べ物は全体的に味が地球の数段上だな。もしかして魔力の有無が関係してるのか?あとで調べてみるか、いい暇つぶしになるかもだしな」
そんなのんびりとした寝起きの時間を満喫した彰吾は歯磨きまで済ませて、今度はバルコニーにソファーを持ち出して空を見上げてくつろいでいた。
「はぁ……あ、そういえばスキル進化券、忘れてたな」
こうして起きてから約4時間半ほど経って、ようやく彰吾はスキル進化券の存在を思い出した。
ただ前日にも寝る直前まで考えても結論の出なかったことが、次の日のほとんど忘れていたような状態ですぐに思いつくはずもなかった。
「どうするかな~進化させるにしてもまずはステータスの確認した方がいいか?最初に見たきり見てないし」
少し怠そうに彰吾は言ったが、今回のスキル進化で一番悩む原因になっていたのはことでもあった。
簡単な話、現在の自分のスキルの種類もレベルも彰吾は何も把握していなかったのだ。
普段は情報をなによりも大切だと理解しているのだが、いかんせん地球とは違って人の目がなくなったことで気がかなり緩んでいた。この世界に送られる前に頼まれごとをされていなければ、本当に山にでも籠って一生を寝て過ごしていたかもしれないほどに彰吾はスローライフを望んでいたのだ。
だが頼まれて受け入れたからには放置する気にもなれない彰吾は行動していたわけだが、やはりどうしても元々の眠りたいという欲求もなくなりはしなかった。
「まぁ~いいや、とりあえず確認しよう!」
あれこれ考えることも面倒になってきた彰吾は思考をいったん放棄して自分のステータスの確認を優先した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:なし 種族:魔王 職業:魔王
レベル:1→10
力:B+ 魔力:A 防御力:B→B+ 知力:SS 器用:S+
俊敏:A+ 運:S
スキル 《SP650》
速読Lv8・高速思考Lv6→7・並列思考Lv6→7・技術の極みLv2→4・予測Lv1→4・格闘Lv6
隠蔽Lv4・闇魔法Lv1・鑑定Lv1→4・契約魔法Lv1→2・召喚魔法Lv1・人形創造Lv1→7
指揮Lv1→3・テレパシーLv1→2・集団強化Lv1→4
ユニーク
天武Lv5・天魔Lv3・天技Lv5・天智Lv5・怠惰・魔王・傲慢
称号
全の天才・怠惰なる者・始まりの魔王・傲慢なる者・人類の脅威
――――――――――――――――――――――――――――――――
「おぉ~!思ったより成長してる。いや、仮にも数千単位の人間を倒したにしては少ないと考えるべきか?魔物も人形兵達が数を管理しているはずだし…やっぱり少ないか?」
久々に見たステータスの変化に彰吾は成長の基準がわからず首をかしげていた。
ただレアな職業や種族であるほどレベルが上がりにくいようになっているため、魔王と言う史上初の存在であり、ステータスに潜在能力も認められて選ばれたのだ。
それだけに人間を適度に減らしてほしい神達ではあったが、さすがに絶滅されると困るので話し合いで彰吾の成長には通常の5倍近くの経験値が必要なように調整されていた。
ただ彰吾の称号やスキルの効果で想定よりも早く魔王として成長して仕舞っていた。
これだけは神達も完全に予想外で一部では『もう少し制限を付けたほうがいいのでは?』と意見も上がっていたが、そんなことをして目的を達成できなくなっては本末転倒だとして却下されていた。
結局は神達も下手に干渉することもできないし、なによりも神の知識や演算能力を使用したうえで予想外の彰吾に少し興味を持ち始めたのも放置を決めた理由の一つではあった。
しかし神達のそんな理由なんて彰吾は知る事なんてできないので真剣に悩んでいた。もちろん数秒ほどで考えることを止めて、スキル進化の方へと意識を向けた。
「考えてもわからないことは後回しでいいか!まず進化するならユニークスキル以外だと【人形創造】【予測】【鑑定】の三つだな」
そして進化させるスキルの候補自体は彰吾の中ではすでに決まっていた。
まず最初の【人形創造】は今回の街の襲撃と討伐軍の撃退でも活躍し、現在の魔王の勢力としての主戦力となっているのが人形達だ。その強化ができる可能性が高いという判断から進化の候補へと入れたのだ。
次に【予測】は効果を自覚することは少なかったが、何度か発動したのを彰吾は感覚的に感じていた。それだけに進化させてみると何が起こるんだろうか!と言う好奇心から進化の候補に選んだのだ。
最後の【鑑定】も初期からずっと使っていて『何かを詳しく知る』と言う事が創作物の中だけではなく、現実となった今ではなおさら重要だと知った。それだけに進化させることは必要に思えて候補に入れたのだ。
ただ3つの候補までは絞ったが彰吾は一つに決めることができていなかったのだ。
「さて、どうしたらいいかな~どれも有用だけど、今後を考えると【人形創造】一択なんだけどな。でも【予測】はまだしも、【鑑定】は本当に有用なんだよな~」
なにより悩んでいたのは【鑑定】と【人形創造】の2つだったが、どちらも有用で今後の事を考えると2つとも進化させることが必要だった。
しかし今回進化させられるのは一つだけで、だからこそ慎重に選びたかった。
もっとも彰吾は慎重だが、同時にめんどくさがりでもあったのだ。
「……クジで決めるか!」
結局は考えることすらも面倒になってしまいクジで決めることにした。
クジは元々なかったが考えるのが面倒になることの多い彰吾は何かにつけて使用するので、以前に大量に白紙のクジを作っておいたのだ。
そこから3個取り出して選んだ3つのスキルを書くと空中に投げて、落ちる途中で適当に1枚を掴んだ。
「どれになったかな~♬」
なにげにクジのドキドキ感そのものが好きな彰吾は楽しそうに鼻歌交じりにクジを開いた。
「おぉ~!これか、ならまた悩まないうちに使うか」『スキル進化』
クジを開いて中身を確認した彰吾は時間が経つとまた悩みそうだと考えて、すぐにスキル進化券を使用した。
すると表示されたままのステータス画面のスキル欄が光だして、通常のスキルのところから1つ消え、ユニークスキルの場所に1つ増えていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:なし 種族:魔王 職業:魔王
レベル:1→10
力:B+ 魔力:A 防御力:B→Bプラス 知力:SS 器用:S+
俊敏:A+ 運:S
スキル 《SP650》
速読Lv8・高速思考Lv7・並列思考Lv7・技術の極みLv4・格闘Lv6
隠蔽Lv4・闇魔法Lv1・鑑定Lv4・契約魔法Lv2・召喚魔法Lv1・人形創造Lv7
指揮Lv3・テレパシーLv2・集団強化Lv4
ユニーク
天武Lv5・天魔Lv3・天技Lv5・天智Lv5・怠惰・魔王・傲慢・new予知Lv1
称号
全の天才・怠惰なる者・始まりの魔王・傲慢なる者・人類の脅威
――――――――――――――――――――――――――――――――
進化させたスキルは【予測】だった。
この結果には彰吾も意外には思っていたが『これも面白そうだ!』と思って躊躇なくしんかさせたのだ。
「へぇ~【予測】の進化先は【予知】なのか。なんとなく予想はしていたけど、これはこれで面白そうだな効果も鑑定しておこう」『鑑定』
なんとなく進化先の予想はしていた彰吾も効果まで思っていた通りだとは限らないので、鑑定して詳細を確認することにした。
《鑑定結果:予知》
《備考:発動してから1分間、自身が視認している光景の数秒先を予知することができる。レベルに応じて消費魔力軽減・発動時間が増加する。また眠っているときに不定期に身近で起こる災い事を夢として見る。形式・任意発動※一部ランダム発動》
「…………強くね?」
鑑定結果を見た彰吾は想定していた以上に強い効果に思わず素の反応をしていた。
それほどまでに【予知】の効果は破格に思えたのだ。
「いや、誰が使っても強いってわけではないんだろうけどさ。1分間限定でも未来が見えるなら近接戦だとバカみたいな強みになるな」
今回のスキルで彰吾が一番に考えた利用法は、まさにこのことだった。
接近戦において重要なのは各自の技量もだが、相手の動きをいかに先読みして避けられない攻撃をして、傷を負うことなく躱すことができるかと言う事に重きを置くからだ。
特に命懸けの戦いなら余計にそうなる。
だというのに1分間だけとは言え相手の数秒先の動きが見えるというだけで、その先読みに使っていた思考を回避や攻撃と言ったことのみに集中させることが出来るのだ。
これがもし接近戦のできないような者が【予知】のスキルを持っていても便利だったろう事は間違いないが、脅威と言えるほどではなかった。
しかし彰吾は近接戦も得意だったが、なにより人形の視界を介してのリアルタイムでの上空からの戦場把握もできるのだ。
つまりは人間達と正面から戦争状態になっても人間軍の動きは数秒先まで細かく把握して作戦を潰すことができ、反対にこちらの策が読まれても随時変更することも容易になる。
そんな集団での戦争を乗り越えて魔王である彰吾と直節対決になれば、人間達は自分たちの動きを完璧に把握して躱して防ぎ、少しの隙を縫って近接攻撃や魔法攻撃を仕掛けてくる魔王と戦う事になるのだ。
もちろん数秒先の未来が見える状態での戦闘に慣れる必要は出てくるだろうが、それくらいしかデメリットらしいものがなかった。
「これは早急に慣れておいた方がいいな。使えたほうが絶対に便利だし」
普段はやる気は欠片も見せない、何事も後に回してしまう彰吾も【予知】と言うスキルの有用性に練習することを決めた。
だからと言ってやる気に満ち溢れているわけではないが、それだけ今回のスキルは今後動くときに必要だと考えたのだ。
そして他にやる事もなかった彰吾は【予知】スキルを試すために訓練場へと向かった。
この決断によって彰吾は本人の望むスローライフな魔王とは完全に正反対で、本当の意味での難攻不落の魔王へ至る階段を5段ぐらい上ってしまう事になのだが…まだ知らない彰吾には新たな力を試せることが楽しいようでスキップしながら訓練場へと向かって行くのだった。
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