異世界に飛ばされる代わりにアニメ界最強のキャラクターの能力を授かりました
Crosis@デレバレ三巻発売中
第1話異世界へ飛ばされました
見える世界は白。
上下左右も無く全てが白色の空間に俺は今漂っていた。
先程まで会社へと出勤の為自転車を漕いでいた筈であるが突如としてこの様な摩訶不思議な空間へと飛ばされたのである。
最早パニくるとか通り越し、一周回って冷静で居られるくらい意味が分からない。
「お待ちしておりました。今野忠之様」
そんな中突如自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた為そちらを振り向くと和風然とした顔立ちをした絶世の美女が美しい無駄にたかそうな和服を着こなしそこに居た。
「どちら様でしょうか?俺はあなたの事を存じ上げないのですが」
「あなた方人間が言うところの一種の神で御座います」
聞こえてくるその声だけで虜にされそうな、しかしながら感情の篭っていない声で自らの事を神とその女性は名乗った。
普通ならば鼻で笑い遇らうのだが何故だか何の違和感も無く信じてしまう。
「それで、俺をここに連れてきた理由は何でしょうか?早くここから出してくださらないと会社の出勤時間に遅れてしまいます」
「そうですね、時間が無いのは私も同じですので手短に行きましょう。まず始めにあなたはもう元の世界へは戻れません。次にあなたは剣と魔法の異世界へと行ってもらいます。そして最後に、あなたの意思を無視して異世界へと飛ばしてしまう事になった詫びとして好きな能力を一つ授けましょう」
はっきり言って彼女が言っている事は到底受け入れられる事ではない。
しかしながらここで喚いてもどうにもならない事だけは先程同様すんなりと受け入れることが出来た。
理屈ではなく魂が彼女が言っていることは正しいと思ってしまうという表現が近い気がする。
彼女の言う事が正しければ勝手に異世界に飛ばす変わりに好きな能力を一つくれるという事らしいのでとりあえず考え見る。
「質問良いですか?」
「何でしょう?」
「何回でも願いが叶う能力とかは出来ますか?」
「残念ながら無理でございます。言い換えるならば今現在あなた様は一回だけ何でも願いが叶う能力(これと同じ様な能力は不可)を持っていると考えてください」
「分かりました」
成る程当たり前である。
それは最早神であると言えよう。
しかしながら神が無理なら神を超える存在ならばいけるのではないか、ふとそんな事を思う。
「決まりました。私に────と同じ能力を下さい」
「分かりました。ではそのように致しましょう」
勝った。
言ってみるもんである。
ことアニメ業界において未だに彼を倒せるキャラクターが現れず強さランキングにおいては常に不動の一位。
それと同じ能力がどれ程のものであるか目の前の自称神様は理解出来ているのかと不安になるもやっぱ無しと言われては困るので口には出さない。
「では今からあなたを異世界へ飛ばしますが飛ばされる先のご希望はございますか?無ければ草原地帯へと飛ばさせていただきますが」
自称神様の言葉にふと思案する。
「そうだな、せっかくだから今から行く世界の強さの基準を知りたい。強い奴がいる所へ飛ばしてくれ」
「かしこまりました。では──」
「最後に一つ聞かせてくれ。俺に何を望んでいる?」
「何も望んでいません。異世界では自由に生きてください。では、新たな世界に幸あらん事を」
「出来れば───を殺して下さい」
今野が居なくなった真っ白な空間に消えてしまいそうな声が響いて消えていく。
◆
「貴様何者だっ!?」
「生きてここから出られると思うなよっ!」
俺は今異世界へと飛ばされたのだが今すぐにでもあの自称神様とやらを殴ってTPOを叩き込みに行きたくなり思わず頭を抱える。
「動くんじゃないそこの変態!覗き魔!」
「暴漢!ゲス野郎!女の敵め!」
異世界へ来て早々に言葉が理解出来る事は有難いが最初に聞く言葉が罵詈雑言である。
しかし俺はそれを否定する事が出来ない。
「今ここでお嬢様が入浴中だと知っての変態行動かっ!?」
その理由として俺が飛ばされた場所はお風呂場、それも目に入る人全てが女性である。
もう言い逃れが出来ないくらいにド変態である。
しかしながらこの身体というか能力というか、やはりとんでもなくチートであると言う事も少なからず理解は出来た。
少なくとも四方八方から恐らく護衛としての鍛錬をしているであろう女性たちの攻撃を余裕でかわし、そして彼女達の首筋を手刀により一撃を加えて意識を切り離す事が容易に出来るという事は理解できた。
やってみたかったんだよな、手刀で気絶させるやつ。
「お前、何者だ?」
「説得力はないかもしれませんが別に怪しいものではありません。ただの一般人ですよ」
「我が護衛をそうも簡単にあしらっておいてよく言う。良くて変態、悪くて暗殺者と言った所であろう」
「暗殺者と言ったらどうします?」
「愚問だな。私の裸を見て生きて返す訳が無かろう」
むしろ変態よりもこのまま暗殺者にしてほしいと思ってしまうのだが、暗殺者であれば生きては返してくれないらしい。
「ちなみだが変態であればどうなるのですか?」
「けつの穴に棒を突っ込んで城下町に捨て置いてやろう」
「成る程……どちらも遠慮したいので貴女を倒させて頂き生きて帰るという選択をとるとするよ」
「やれるもんなら、やってみやがれっ!!」
そういうと彼女は何処から出したのか真っ赤な大剣で勢いよく切りかかってくる。
自身の丈よりも長く大きな大剣をまるで重さを感じていないかのように扱い切りかかってくる。
間違いなく前の俺ならば瞬殺されているだろうしこいつが強いという事も伺える。
しかし、時間軸を支配する相手を時間軸を乗り越えて一方的に攻撃する者でも上の時間軸から一方的に攻撃し、さらにその時間軸も操作する者をフルボッコにする相手の攻撃を1ナノmまでひきつめてかわせる今の俺からすれば余りにも遅過ぎる。
「な、何で当たらないっ!?」
「お前の攻撃が遅すぎるんじゃないのか?」
「バカにしやがって……絶対に殺してやるっ!!豪炎剣!!これなら当たらずとも炎で丸焼けに出来る!覚悟しておけ!!」
豪炎剣と彼女が叫ぶと彼女の持っている剣が美しい炎に包まれ勢い良く燃え始める。
しかし、魔法がある世界とは言われていたものの彼女が持っている剣がいきなり燃え出す原理が【理解できない】。
そう思った瞬間、彼女の剣から炎が消え去る。
その事に件の彼女は驚きすぎて呆けているのが伺える。
「お、お前の仕業かっ!一体何をしたと言うのだ!?」
「炎を消したのは俺で間違いな」
ついでに俺は思う。
こんな細腕であれ程の大剣を振り回せるはずがないと。
「ぐぅっ!?」
次の瞬間彼女は大剣の重さに耐えきれず床へ落としてしまい鉄の鈍い音が無駄に広い浴場に響き渡る。
これが俺が希望したアニメキャラクターの持つもう一つの能力、想像出来ない事は起こりえない、また想像出来る事は起こりえる。
しかしながらこの女性がこの世界の最高峰の一人であると言うのであれば少々拍子抜けである。
「強いと聞いたのだがな……」
そう言うと俺は自身の血で出来た紅い剣を出し彼女に向かって歩き出す。
すると彼女は「貴方の様な猛者がまだいるとは、世界は広いな。貴方に殺されるならこのグランデル帝国第三王女、レミリア・グランデルに悔いはない」とか言っているが無視して通り過ぎるとそのまま壁へと向かい俺一人が通れるくらいに壁を切り穴を開ける。
するとそこには闇夜と星の光が広がっていた。
上の小窓から月明かりがさしているのが見えるのでこちら側が外で間違いなかったようだ。
「ま、待って下さいっ!せめてお名前だけでもっ!!」
さっきまでの乱暴な口調は何処へ行ったんだよと言いたくなるも俺は立ち止まる。
なんだかんだで彼女の名前、レミリア・グランデルという事は聞いておいて名乗らないのはなんか違う気がした為一応名乗る事にする。
そこで俺は一瞬悩むも彼の名前を口にする。
「──だ。今はそれだけ言っておこう」
「……クロード様……」
後で俺の名前をレミリアが呟いている様に思えたのだが気のせいだろう。
そして俺は闇夜へと消え去っていく。
後にレミリアへ名乗った事を盛大に後悔するとも知らずに。
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