第23話 柳田

「よーし、準備はいいかお前ら」

 顔に大きな火傷の跡を残した柳田万治は、その顔に皺を作りながらカービンライフルのスライドを引く。

 柳田はチームの主任を務めるが、この度作戦指揮官に任命。この件に関しては予算の管理を含め全権を任されている。

 水無月の誇る最新装備は今はないが、金を動かして他国の兵器を調達する事は出来る。

 部隊をいくつかに分けても足りる程の兵器に柳田は酔いしれていた。

 しかも兵員は全て柳田の気安い者達ばかり。それが意味する事に柳田は歓喜を押し殺す。

 唯一の懸念は水無月直属の監視だが、その監視役はまだ年端もいかない小娘。

 子供であるが故に面倒かと思いきや、何の権限も持っていないただのお嬢様だった。

 部隊に同行する様子もない。

 その部下だった男が兵員として補充されただけだ。

「だがお前は特別だ。目をかけてやるぜえ」

 柳田は傍らに控える新兵の肩を叩く。

 体が振動するほどに叩かれた新兵は飛び上がるように驚き「は、はい」と小さく返事をする。

「お前の持ってきた情報。確かなんだろうな」

 は、はい。確かに……、と体をがっしりと掴まれた新兵、桐谷はずり落ちそうなヘルメットを押さえながら答える。

「野郎ども! 任務は神無月に拉致されたガキの救出だ。コードネームは地獄の敷石だ!」

 隊員達は一斉に雄叫びを上げるが、桐谷にその意味は分からなかった。

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