第19話 白銀の御子と黒鋼の御子(1)

玲和3年の年の瀬が迫ったある日。


極北シルベリア地方から到来した大寒波の影響で、外は猛吹雪だった。

まだ昼間なのに薄暗く、風と雪が猛烈な勢いで窓に吹き付け、ガタガタと揺らしている。


積雪はすでに1メートルは超えているだろうか。

とてもじゃないが、外に出られる状態ではなかった。


「なかなか止みませんね、雪。」


タムラがリビングでくつろいでいると、オゼが紅茶を淹れて持ってきた。


「ありがとう・・・。そうだねえ。ホントだったら、カンバラ様のところへ年末のご挨拶に伺う予定だったんだけどね・・・。」

タムラはカップを受け取り、一口啜る。

寒い日に暖炉のある部屋でぬくまりながら飲む紅茶ほど贅沢なものはないなあ・・・と、かみしめながら飲んだ。


「そういえば、ルイスはどこ行ったのかな?」

「さあ・・・? 先ほどまで、この部屋で積み木で遊んでいたようですが・・・。」


オゼも自分の分の紅茶を淹れ、一息つく。

と、廊下の方からドスドスと・・・ルイスのにしてはやけに重量感のある足音が聞こえてきた。


「タムラ!ごほんよんで。ほん。あたらしいの!」

「あら、ルイス。そんなにいっぱい抱えて・・。どこから持ってきたの?」

「ああ、ラグナリア伯が管理していらした図書室から持ってきたんだね。いいよ、読んであげる。」


ルイスは、持ってきた10冊ほどの絵本をバサバサっと床にばらまくと、その中から1冊を拾い上げ、タムラに渡した。


「これ!よんで!おねがい!」

「豪快だな、はは・・・あとでちゃんと片付けようね?――ええと、・・・」


『アマテリアけんこくのおはなし ~しろがねさまとくろがねさま~』

―――というタイトルの絵本だった。


「アマテリア国紀か。いいよ、ほら、こっちにおいで。」


ルイスは、タムラの膝の上にちょこんと座る。タムラはカップを置き、絵本を開いた。


「なになに、――とおいとおい、かみよのむかし。


このくにには、ふたりのかみさまがいました。


ひとりは『くろがねさま』。はなをめで、かぜとうたい、なみだでにじをかける、こころやさしい、おだやかな かみさまでした。


もうひとりは『しろがねさま』。いかずちをならし、ふぶきをくらい、きりをまとう、いたずらずきで、げんきなかみさまでした。」


二千年以上の歴史を有するアマテリア皇国。

その原点とされる2柱の神々の出来事を、タムラ達と共に紐解いていこうと思う。

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