白銀の空に舞う

 この世界の空の色は、白銀。

 鈍いけれど、輝きを持つその色が、私の頭上にある。


「やっぱり、慣れないなぁ……」


 青い空の世界から来た私は、白銀の空にまだ慣れない。

 ずっとどんよりしている空模様に、私の気分はイマイチ乗らない。


 だって、この空の色って、ずっと曇りってことでしょう?


「今日も飛ばないのか」

「飛べって隊長が命令されるのでしたら、飛びますけど」


 この世界は、科学と魔法が融合して、高度な技術を持っている。

 空を飛ぶ技術もそのひとつで、私は空を自在に飛ぶことができる。


「……今、訓練中なんだけどな」

「訓練なんかしなくても、実戦に影響しないので、特に問題ないです」

「お前は本当にその通りだから、困るんだよなぁ」


 それに訓練不足でしくじって、怪我したり死んだりしても特に問題はないかな、なんて思ってる。

 隊長には面と向かって言わないけど。


 白銀の空で舞うほど、私は飛ぶことが好きじゃない。

 白銀の空より、青い空を飛びたい。



 …………もう、叶わない願いだけど。



「やっぱり、空は青に限りますよ」

「その感覚が俺たちにはわからないだけどな」

「それでいいんだと思います」


 同じ隊に所属する者が、白銀に染まる空を飛び交う。

 鳥みたいだなぁ、と呑気に思いながら、私はただ、それを見ているだけだった。


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