違えた道は/#文芸リレー

「いいぜ、来いよ。格の違いってヤツを教えてやる」


 不敵に嗤うお前の顔には、兄弟子と呼んでいた頃の面影はない。


「お前なんかに、誰が負けるものか」


 首をとってやらんとばかりに睨みつけると、お前は何故か悲しそうな顔をした。


 どうしてそんな顔をするんだ。

 お前が、お前が先に裏切ったんだろう。


「お前がそんな顔をするのか」


 師匠を斬ったお前が。


「……仕方がなかった」

「仕方がなかったで、片付けるなっ!」

「知ってしまったんだ。全ての真実を」

「だから、師匠を斬ったのか」


 その真実は、師匠よりも大切なものだったのか。

 刀を握る手に、力がこもる。


 お前は、仕方なかったと繰り返した。

 師匠を斬ったことに後悔は、ない。そう言った。


「だが、お前とは道を違えるつもりはなかったんだぜ。できれば同じ道を歩みたかった」

「……今更だな」

「ああ、今更だ」


 互いが刃を互いに向ける。

 一瞬の静寂の後に。

 僕らは剣を交えた。


 違えた道はもう戻らない。

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