根暗少年は異世界を闇属性で生き抜く

Lasell

第1話 超常現象に巻き込まれて

俺の名前は菜月怜(ナツキレイ)

どこにでもいる内向型人間だ。



その日、俺は幼なじみの秋篠芽衣(アキシノメイ)と一緒に観覧車に乗っていた。



学校が午前で終わり、帰ろうとしていると幼なじみの親友、メイが遊園地に行かないかと誘ってきた。


きっと落ち込んでいる俺を元気付けようとしての提案だろう。全く、お人好しめ。



遊園地である程度ぶらぶらした後、メイが観覧車に乗りたいと言い出した。


二人が向かうように座り、観覧車は出発した。


俺が考え事をして窓の外の景色を見ていると、メイが話しかけてきた。


「そういえば、レイは進路どうするの?」


「あー、そういやそんなんあったな...全然考えてねーや。」


「考えてないの?調査票提出明日だよ!」


「考えたくねぇよ〜、だってただでさえ日々辛いってのに、更なる重荷かけてんじゃねぇっての!」


「じゃあ、とりあえず進学にて出したら?」


「進学かー、それも嫌だな。」


「じゃあ一体何がしたいの!」


「なにも。」


「それじゃ、ろくな人生にならないよ!自分の人生に向き合わなきゃ!」


「そーだな、そう言うお前は何になりたいんだ?」


「私は理学療法士になりたい」


「理学療法..士?なんだそれ?」


「後遺症やハンディキャップを背負ってる患者さんのリハビリお手伝いをする仕事だよ。」


「なんでそれになりたいの?」


「私は健康に生まれれて本当に幸せ。ママに感謝してる。健常者の私にはハンディキャップを背負って生きる世界が想像できない。だからこそ、その人たちの力に少しでもなれたらなと思って。」


「...立派だよ、お前は本当にすごいな」


「私なんてまだまだだよ、目標も最近できたばかりだし、現実性もまだまだ足りない。」


「いや、すごいよ。俺と違ってちゃんと未来考えてて。」


「そう?じゃ、素直にありがと!」

「それも人を助けるためだなんてな..、動機が聖人すぎて涙出そうになったわ。」


「聖人はさすがに言い過ぎだって!笑」


「聖人だよ!俺だったら絶対、給料だけで職選ぶもん」


「ひねくれちゃって、本当はレイが優しいの知ってるよ?」


「は、どこが」


「昔は動物を守るためにレンジャーになりたい!って言ってたじゃん!それも動物さんたちのためを思った優しい動機じゃん!」


「それガキの頃の話な!」


「今だって動物とか植物好きじゃん!今からでも目指す気ないの?」


「無理だろ。それこそ獣医とかの資格とってやるとしたら。俺の成績じゃ到底不可能。」


「もう、やる前から決めつけてるー。悪い癖だよ。」 


「...」


「まだ高校3年生だよ!今から頑張れば夢は叶うよ!」


「そうだな、じゃあちょっとだけ考えてみるわ。」


「うんうん!それでよし!」


「うるせー!」



メイは親とも上手くいけず、学校でも浮いてる俺の唯一の理解者だ。はっきりしていて口うるさいところもあるけど、一緒に過ごしていると心地いい。



気恥ずかしさもあってか、俺は観覧車からの景色を眺めた。

「しっかし、本当にゴミのようだな。高いところから民衆を見下ろすのは清々しい。」


「もー、またひねくれたこと言って笑」


「どうせ俺は捻くれ者ですよー」



観覧車や屋上など、高いところから見る景色か好きだ。

高所からの恐怖心というか、遠くを見渡せるからというか...景色を見ることに思考が奪われて、日常のストレスから現実逃避できるから。



明日のことなんて考えたくない..



俺には自分の真っ黒に塗り潰された未来予想図しか見えないんだ。


時は必ず過ぎ去る。

そして、その日はいつか絶対にやってくる。

わかってるんだ。


だから、メイとのこんな日常だけがいつまでも続けば良いのにな...




そんな、どうしようもないことを思いながら俺は窓越しに広がる夕暮れの光景を眺めていた。


その後も他愛ない話をしながら時間は過ぎ、俺らの乗る車両は、天辺に到達しようとしていた。



ピクッ



「あれ?」


体の感覚に違和感が走る。

観覧車が止まっていたことに気づいた。


どう言う事だ?故障?

よりにもよって、こんな高所で乗り物が止まるなんて..



「ついてねぇな、大丈夫かこれ?」

「おい、なんでお前はそんな落ち着いたんだよ。」

「聞いてんのか?」


「...」


「メイ??」


メイは窓の外を見たまま動かない。


そして、それは突然現れた。


女が窓の外で浮いている。

睡眠帽子、いや、ピエロのようなハットを被った露出度高めで長い髪をした外国のモデルのような女


は?え?


「あんた!いったいどうやって!?ここ上空だぞ???」


女はいなくなっていた。

「疲れてんのかな?」


次の瞬間、女がモヤのようなものに包まれ、この観覧車の中に、俺の目の前に現れた。

やはりおかしな格好をした女。


「え??現実?幻覚?どうなってんだ??」

「お前、一体何なんだよ!?おいメイ!大丈夫か?」


メイが動かない。観覧車が止まってからずっと...ってか外の景色も変だ、通行人がみんな...


時間が止まってる!?


困惑しているとピエロ女がその高貴な美しい顔を俺の耳元に近づけ


「あなたの事をずっと影からみてたわ♡」


「あなたは生まれ育った世界が嫌いなようね、だったら別の世界に連れてっても問題ないわね?♡」


女の囁きと共に朦朧とし始め、


俺は意識を失った。

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