第5話 占い師になるのは無理でした

 占いを二年間勉強してみて、そろそろプロデビューかなと思っていたのですが、甘かったです。もともと、自分用に始めただけですから別に仕事にしなくてもいいわけなのですが、「何者かになりたい」という意欲が強すぎたんで、いろいろ画策しました。 ひとまず某サービスに登録したのですが、ライバルは多いし層は厚いし、低い単価でやってる人でも全然客がついてない状況を知って唖然としてしまいました。


 しかも依頼者の要望がやっぱりピンポイントで観るような技術がないと無理な物ばかりで、総合的な見方しか知らない私としては、この時点でお手上げなのです。一応、命占はできるのですが、卜占を知らないと何もできないことが判明しました。タロットは少しかじった程度でお話になりません。


 結局退会しました。大先生的な見方しかできない私が、プロの占い師が持ち込まれるようなリアルな占いの現場ではぜんぜん歯が立たなかったわけです。独立開業の前に館か何処かで修練を積むべきかなと思いました。ただ健康上の問題とどうしてもPCがないと占えない特性で、そちらに行くのは無理でした。だいたい私、はっきりいうとキモい系の男性なんで、まず雇われないと思います。


 どうもこの業界は、若いうちからバンバン鑑定して経験を積んだ人でないと安定したお客様をお迎えするのは無理なような気がします。その分、リピーターもある訳ですからね。私みたいに人生後半になってから学んで参入するというのは、かなり難易度が高いと思います。聞いた話だと、年がいってても爆速で追い抜いていく人もまれにいるらしいのですが、私ではなかった。


 皆さん集客には苦労してるみたいで、でもそんなことはおくびにも出さず、毎日ブログを更新したりコラムを書いたりしているみたいですね。私みたいに、つらいことがあると吐き出してしまうタイプには無理です。自ら客が来ないって事をバラしてるわけですから。


 この年まで何者になれないって事は、何をやろうが何者にもなれないってことでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る