超銀河幻想伝説・MOTIDUKI
たけむらちひろ
プロローグ的なヤツを
コミーヨ歴891年。
場所は、メイドール銀河系の二大勢力である『鬼鯨座帝国ブリエン』の第七属星アギーラと『オスクロ共星圏』の端ティグレの間に浮かぶ浮遊星――ベルテデロ。
単位一年間の気温差が百度近くにもなるこの小さな荒星は、かつてただのゴミ捨て場だった。故にこの星に歴史は無く、歌も無ければ試験も無いような平和で汚い星だった。
何しろ歴史が無いので誰にもわからないが、おそらくそれは百年以上前。合法不法違法の如何にかかわらず、ブリエン帝国と共星国家オスクロという二つの国家の廃棄物を喰らい続けていたこの星に住みつき始めた人間がいた。
空よりも高い場所にゴミの渦が層をなし、地表を埋め尽くした廃棄物が水や大気を侵食するこの辺境の星に進んで移り住んだ変わり者もいれば、非道な人体実験の結果投棄された廃棄物もいたかもしれない。彼らに等しく戸籍は無く、権利も義務も保障も無い。そうして多様な人種が『文化的』とはかけ離れた生活を送っていた浮遊星に変化が訪れたのは、五十年ほど前だった。
技術発展が生命限界線を下げ、それまでに住めなかった星でも生活が送れる様になり、生活圏が拡大し、銀河人口が増え続けていた頃の事だ。
簡単に言えば、生活の基盤となる《技術》を支えてきた
高騰を続ける希少な鉱石を購入あるいは開拓し新しいアイスランテを造るよりも、古い技術製品に組み込まれたそれを再利用する方が遥かによろしい。
こうしてベルテデロには新しい需要とそれに伴う闇の仕事が生まれ、ごみ溜めの生活は少しずつ変わり始めた。
その巨体を維持するために周囲の星を喰らい続けるブリエン帝国と、大宇宙のリーダーを自称する経済大国オスクロとに挟まれた共用のゴミ捨て場は、宝の眠る山として生まれ変わったのだ。
――で、その宝は一体誰の物なのか。
技術がもたらした時代の変わり目に、きな臭い風が吹き始めた。
そんな時代の真っただ中の宇宙の片隅で、今日も廃棄物の回収にいそしむ三人の若者がいた。
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