コミュ障はどこに行ってもコミュ障である。

ゆきみ

第1話 第一次産業に従事していた人を一斉に異世界転生させたんか?

この世界には様々の属性の者が存在している。例えば、がり勉君。例えば垢抜け君。挙げればきりがない。因みには僕は僭越ながらオタクという部類にいる。特に異世界転生系のラノベ、アニメが大好物だ。正直、異世界転生を本気で信じている、痛男であると自覚している。では、どんな異世界転生系でもいいのか、と問われると答えはNOだ。最近は所謂いわゆる俺tueee系が主流だが、僕はあんまり好かない。全く嫌いかと言われれば弱気にならざるを得ないが。もっとも元コミュ障が、達弁になる系は全く心を許す気はないが。あっ、全国のファンの方粗言そげん失礼いたしやした。もし僕が異世界行くことになったら、のんびりと農業で大富豪とかなってみてーな。都会っ子はつらいぜ。色々と。まあ、アキバ近いのが利点。だからどうした。


まあ、そんなんだからいざ自分の目に前に自称神がいても驚きもしなかった。むしろ平然としてる僕を見た神の方が驚いていることに驚いた。複雑だなー。どうやら僕は神の気まぐれで死んだらしい。よくある話。うん、最高。さてさて、神よ僕にどんなチートスキル(農業系)をくれるのかな?


「少年よ。なんじには勇者になってもらう。異論は認めん」


突然の余命宣告。異世界に行く前に死にました。もう死んでるけど。勇者になれとか僕を愚弄ぐろうしてんのか、こいつは。


「何を独り言をぼやいているのじゃ?汝には謝意を込めてどんなチートスキルでもやるから」


「僕、声に出して今の言ってましたか?」


「いや、私は神。人間の心を読むなどpiece of cakeピースオブケイク


神、まさかのグローバル化。これは次期覇権はけん確定だな。僕は見ないけどな!というか心読めてるなら僕が勇者を望んでないことくらい知ってるだろ。怒りマーク百個つけるぞ。マジで。は~、本気で言ってんなら異世界転生などごめんだね。


「まあまあ、少年よ落ち着け。わしとしても未来のある若者を儂の過誤で死なせてしまったことに何か償いをと思ってな…」


「ならのんびりと農業をさせてくださいよ。こういうのは僕の意見が尊重されるべきだと思いますが」


「そ、それが…。農業関連のスキルは在庫切れでだな…」


なっ、突然の謎の在庫制度。スキルって〇mazonから取り寄せてんの?そもそも、なぜ農業を言うマイナーな職業専用スキルが売り切れてるんだよ。物好きか!じゃあ、酪農とかで妥協するからそれ頂戴よ。


「そ、それが酪農スキルも在庫を切らしてて…」


最早なんも言えねーよ。なんでだよ。なんでないんだよ。第一次産業に従事していた人を一斉に異世界転生させたんか?神よそんな悲しそうな顔をするなよ。なんか俺が悪いみたくなってんじゃん。


「ゆ、勇者ならチートスキル込みで今すぐ用意出来るんだが…」


思いっきり睨んでやった。ふん、これが僕の力よ。昔から目つきが悪いと散々けなされていたからなー。こういうところで役立つとは。まあ、いいや。他に何のスキルがあるか見せてくれよ。


「それは本当は禁忌だが、今回だけ特別だ。あまり変な詮索はよしてくれよ」


そういうと、神はタブレット型の何かを手渡した。


「あっ、すいません。有難うございます」


「あ、ああ。はて、心の中では強気なのになぜ話すときは弱気なんだ?」


おいおいおい、神よそれ以上の言及は許しまへんで。僕は天性のコミュ障なのだ。故、心中では強キャラを演じていても、いざ対面で話すと狼狽えてしまう。これぞコミュ障。これぞ極み。個人的にコミュ障は四段階に分類されると思っている。低級、基本的に誰とでも話すことは出来るが自ら話題振ることが出来ないタイプ。中級、一応話しかけられれば誰とでも話すことは出来るが、同類と居たがる。上級、同類と話すのが精一杯。他人と話すとき目を合わせられないのはここら辺から。最上級、一応似たものと話すことは出来るが一人が大好き。人と話すとき顔を上げられないのはこの辺から。これはあくまで個人的な見解であり、世間一般的な指標とは異なると思う。僕は圧倒的上級だ!最上じゃないじょ!えっ?さっき極みとか言ってなかったかって?あれは嘘だ。そんなことはどうでもいい。今重要なのは、残っているスキルだ。そうだな、異世界開拓でもいいからチートスキルは避けなければ。親切なことにジョブごとにスキルが表示されていた。上から勇者、魔導士、ヒーラー、etc... 。どれもありきたりで、自分には不相応だ。いくらスクロールしようとも出てくるのは有能役職のスキルだ。はー、見てるだけで萎えるな。もう僕帰っていいですか、ってどこにだよ!僕死んだんよ。もう帰る家ないんよ。何?ここで勇者になればいいって?そんなんなら僕を地獄に落としてくれて結構。結構、結構、コケコッコー。は?


「おいおい少年、そろそろ決めてくれないかな。後ろが詰まってるんだが」


神は憤然ふんぜんとしてこちらに一歩近づいた。そして僕が持っていたタブレットをひったくると、鬼の形相で


「やはり貴様に決定権はやらん。ランダムで出たスキルを使って精々生き延びるがよい」


そう言い放った。いや、勇者にするんじゃなかったのか!と内心ツッコミを入れながらも、何気に僕の意見を尊重した神に感謝した。そして僕は煌々こうこうとした光に包まれ、目をふさぎざるを得ない状況になった。その後の記憶はしばらくなかった。

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