塾嫌いの松岡くんは今日も弄られる ★女だらけの特進クラスはマジ最悪です★

ジェットン

第1話 「俺は塾が嫌いだ」

 「あーあ。何でこのクラス、男子が松岡しかいないわけー。」

 

 「ほんとだよねー。サッカー部の哀川とかが入ってきてくれたらいいのにー。」


 「はは、でも松岡って本当に幸せ者だよねー。」


 「うん。うん。うちらと一緒の空間で勉強ができるなんて、ほんっと松岡は恵まれすぎてる。」


 「確かにそうですねー。この塾に入っていなかったら、まず松岡くんは女の子とお喋りする機会すらなさそうですし。ふふっ」


 「もー、ほんとに松岡じゃテンションあがらないなー。あたしはバスケ部の陣内に入ってきて欲しいー。」


 「......。」


 こいつら、俺のことをまじで何だと思っている.......。


 ____授業が始まる直前の教室で今、5人の女たちから理不尽な誹謗中傷を受けている俺の名前は松岡誠。中学1年生だ。


 それにしても、この塾において俺に人権はないのだろうか?


 今も尚、俺の耳には彼女達からの悪口が聞こえてくる。


 わざと聞こえてくるように......。


 「ふっ、松岡ったらまた黙まり? 聞こえてるよね?」


 うん。人権どころではない。


 .......これがいわゆる教科書で習った治外法権という奴か。


 彼女達はもうやりたい放題。


 マジでやってられない......。


 「はぁ......」


 それに、本当ここに入塾してしまったせいで俺は中学生にして既に女の怖さを嫌というほど知ってしまった......。


 俺がいるにも関わらず、彼女達は平気で学校のゴシップをべらべらと喋ったりする。


 誰が誰を好きとか。誰が誰に告ったとか。誰と誰が付き合ってるとか。


 誰が誰のことを嫌っているとかを平気で喋る。


 おかげで俺はすっかり学校の情報通だ。


 何ならこいつ等の好きな男も全員知っているし。


 だってこいつ等がいっつも俺の存在なんておかまいなしに恋バナで盛り上がるから。


 とりあえず聞きたくなくても色んな情報がいつも聞こえてくるのだ......。


 ほんと、そういうのを俺に学校でばらされるとは思わないのだろうか。


 まぁ、後が怖いからばらさないけど......。


 「あー、ほんとテンションあがらない。松岡ー、哀川をこの塾に勧誘してきてよー。あんたも男一人はいい加減に嫌でしょー。」


 そして、まじでうるせぇ.........。


 このまま男一人のままなんて........絶対に嫌に決まってんだろ。


 ただ、まず俺はあいつと友達ですらない。ってかあんなリア充と俺が友達じゃないことぐらい見ただけでわかるだろ.......。


 「まぁ、松岡じゃ哀川とお喋りすらできないか。ふふ、住む世界が違うもんねー。」


 「........。」


 「あれ、何も言い返さない系? ふふ、もしかして松岡拗ねちゃったー?」


 .......くっ。この女はいつも。


 「......し、死ね。」


 「はっはっは、はい出ましたー。松岡の『し、死ね』。松岡、ほんっとそれしか反撃のボキャブラリーがないのー? まじ笑えるー。」


 .......ま、まじでむかつくぜ。


 まじで俺のことをサンドバッグとでも思っているのか.......生田沙也加。


 涼し気な笑みを浮かべて、ミディアムヘアーの前髪を整えながら俺のことをバカにしてくる彼女は、唯一このクラスで俺よりも先にこの塾に入塾していた女だ。


 _____「わー。ようやく新しい子が入ってきてくれた。ずっと一人だったから寂しかったんだ。仲良くしてね。」


 はぁ.......眩しい笑顔でそう握手を求めてきたあの頃の生田はどこにいったんだろうか。


 この教室の女の人数に比例して、彼女の態度もいつの間にかこんな感じに.......。


 まじでない。


 ほんと......俺も大きな塾に入りたかった。


 昔、父さんがここの塾長にお世話になったからとかいう理由で入れられたけど......なんで俺が無理やりこんなボロっちいプレハブ塾に。 


 はぁ.......クラスの人数も全員で6人しかいないし。


 大丈夫かこの塾?


 まぁ、もうひとつのクラスにはもうちょっといるみたいだけれど.....。


 確かに学力も入塾当初に比べればかなり上がった気はするけど。


 全然早く潰れてくれていいんだぞ......。


 いくら辞めたいと言っても父さんが辞めさせてくれないからな。


 それしかもう俺がこの地獄から抜け出す方法はない。


 「あー。それにしても、もうすぐ学校ではクラス替えですねー。」


 「確かにー。」


 「どうか陣内と同じクラスに。」


 「私はやっぱ哀川と同じクラスになりたいなー。前にも誘ったんだけど、やっぱりもう別の塾に入っちゃってるから無理だってー」


 「あーやっぱりそうだよねー。陣内もそうだったー。」


 .........こ、この糞アマ。


 なら何で俺に勧誘させようとしやがった。


 まじで俺のことを何だと思ってやがる......。


 「とりあえず、松岡と別のクラスならそれでええか。」


 「ふふ。うんうん。その通り。学校でまで松岡と一緒はちょっとねぇー」


 「ふっ、ほんとそれ。あたしなんて今まさにその状態なんだから。来年こそは松岡と離れますようにー」


 「ふふ、皆言いたい放題言い過ぎですー。」


 「ふふふ、松岡。また色々言われてるね。でもまた黙まり?」


 ........く、まじでこいつ等。


 俺をいじめて何がそんなに楽しいよ......。


 美人だからって全員調子に乗りやがって......。


 って、今思えば何でお前らみたいなお洒落ガール達がこんなボロイプレハブ塾に通っているんだ.......。


 まじでふざけやがって.......。


 くっ.......そんなに文句ばっかり言うならお前らが出ていけよ。


 特に、生田以外は俺より後に入ってきたんだろうが....。


 とりあえずこんな時、何て言ってやればこいつ等にダメージを与えられる。


 何とかしてこいつ等に一泡吹かせてやりてぇ。


 何だ、何を言えばいい。


 本当に何だよ。全員が全員、俺の方をそんなに見つめて。


 ぜ、絶対にお前らが待っている言葉は言わねぇぞ。


 でもどうする。


 もう授業が始まってしまうぞ。


 ほんと秒針は授業開始1分を切った。


 まじでどうする。


 あ、あと20秒.......くっ。



 「.......し、死ね。」



 「「「「「はっはっはっはっは!!はい出ましたー!松岡の得意技ー。」」」」」


 く、く、糞ぉぉぉぉぉぉぉぉ。


 まじで、まじでもう辞めたい......。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます