死ぬのを思い留まる確率 おまけ

 まさかなぁ。

 そんな理由があったなんて。


 私は位の低い存在だからだろうか?

 ついつい無駄なことを考えてしまう。

 もしかして、死のうとしていた彼女にとって、この無気力な興味のない世界の中でも、彼は、小さくとも大切な存在だったのだろうか。

 彼へひょっとして無自覚だとしても、恋心があったりして?

 死ぬのを思い留まる程度くらいには。


 でも結局、真実は分からない。

 天界といえど心までは見ることはできない。だからこそ『人間心理学』があるのだ。

 そもそも、彼女が今我々の下界で生きてるかどうかも知らない。確率で言えば半分以下の確率なのだし。

 それでも気になってしまう私はやはり位の低い存在なのだろう。

 事実、巳叉様は今回の件をただの失敗としか捉えてなく、もう次の実験のことを考え始めている。


 一人の人間のことなど、高位な神様は気にしないのだ。


 だが、私は彼女の思いや今後よりも、それ以上に気になることがある。

 これこそ盲点ではないのだろうか?

 あの巳叉様でさえも気付いてない。

『仮に彼女の死ぬ確率に意図的な干渉があったとしよう』

 だとしても、意図的な干渉がなかった残りの部分に関しては、巳叉様が熱弁した『自然に発生する死にたくないという思い』が確率的に成り立つはずなのである。

 しかし、結果はこの通り。


 つまりは。

 彼女は干渉がなければ100パーセント、死ぬ。

 自然に発生する死にたくないという思い、などがないことを示してしまっているのだ。

 きっと、それほどに、強い決意なのであろう。悲しいことではあるが……。

 しかし、今回の実験はもう一つの事実を示している。そんな100パーセントの思いすらも、ささやかな干渉程度で変わってしまうという事実だ。


 けっして揺るがぬ死の決意も、一つきっかけがあれば改めることができる。逆に言えば、たった一つのきっかけであっても、もしあったのなら、救えた命があったかもしれないということ。


 所詮、私の考察だ。

 合ってはいないだろう。

 けれども、一度そんな考えが浮かんでしまうと、虚しさに胸がしまってしょうがないのだ……。

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死ぬのを思い留まる確率 またたび @Ryuto52

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