亥一刻(PM9:00)
「亥一つ申し上げます」
こん
がらがらがらっ
都大路を一台の牛車が駆けてゆきます。きき――っと急ブレーキをかけて一軒のBARの前で停まります。バラの花束を抱えた光る君が転げ出るように降りていらっしゃいます。時刻は午後9時。
「せっかくのカクテルタイムなのにやけに早い時間だし、一杯飲んだらもう帰っちゃうの?」
明子さまからちくりと嫌味を言われながらパレス六条を出てきました。
「明ちゃんのツンなカンジが堪らないね。今度はゆっくり泊まりに来るからね。明ちゃん、愛してるよ。死ぬほどキミに恋してる」
~ その言葉 言えばワタシが 喜ぶと 思っているの? もうマンネリよ ~
明子さまからのしびれるお歌です。
~ 何度でも いついつまでも 囁くよ 死ぬほどキミに 恋してる ~
ウィンクと投げキッスと共に光る君がお歌を返されます。光る君、不屈の精神でございます。
普段も街中の移動には牛車を使います。光る君専用の「跳ね馬」印の真っ赤な牛車でございます。さる異国の会社にフルオーダーなさいました。いつもなら源ちゃんズが雅楽を奏でて優雅にゆったり進むのですが、本日は様相が違います。
源ちゃんズも
「月ちゃん、久しぶり。今日もキレイだね」
バーカウンターに腰かけている美女に光る君が花束を捧げます。
「ありがとう。綺麗なバラだわ」
「キミの美しさの前にはバラも遠慮するよ」
「相変わらずね。でも気分は悪くないわ」
バラより美しい美女は月子さまとおっしゃいます。なんと皇帝のお妃さまでございます。そして光る君の元カノでもいらっしゃいます。お付き合いしていた頃もまぁいわゆる禁断の恋というやつでしていろいろございました。今は監視という名のボディーガード付きで健全なデートをなさっていらっしゃいます。
「キミの瞳に乾杯」
カンパリソーダを傾けられます。カクテル言葉は「ドライな関係」
以前はなにやら色っぽい名前のカクテルも飲んでいらっしゃいましたっけ。思えば光る君も随分おりこうさんになられました。
本日の光る君の動向のおさらいでございます。
卯三刻(AM6:00) パレス六条にご帰還
未三刻(PM2:00) ヴィレッジうぃんたーにて姫子さまのお誕生日会
酉一刻(PM5:00) ヴィレッジおーたむにて秋子さまにご挨拶
酉三刻(PM6:00) ヴィレッジさまーにて花子さまと夕さまのディナーに乱入
戌一刻(PM7:00) ヴィレッジうぃんたーにて明子さまとカクテルタイム
亥一刻(PM9:00) バー朧月夜にて月子さまと密会デート
そして今後のご予定がこちら。
今から帰ってすぐ 満月儀式
何がなんでも今日中 紫子さまと牛車ドライブデート
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