第50話 お陰で不老になれました

衝撃的なことを言われてから夜が明けた。

というか、俺が不老になっていることに驚きすぎて一睡もできていないのが今の現状だ。


「寝みぃ。 完全に寝不足だな」

「寝てないからだろ」

「誰のせいだと思ってんだよ!」


全部ミルドが悪い。 俺たちに不老の薬を飲ませたことが事の始まりだからな。

俺は、結局それを言葉にすることが出来ず、あーとか、うーとか言って終わった。


「とりあえず、爺さんとこに行くか」


第二の犯人のところに行くことに決めた。

もちろん、悪ふざけでミルドに変なものを持たせた罰として半殺しにするつもりでやる。


♦︎


「おぉ、グレン、第一かーーどうしたんじゃ? その殺気は?」

「おはようございます、アールカド。 お陰で不老になれました」


ニコニコと笑みを浮かべているが、顔は笑っていないと思う。

ただ、俺は少し怒っているというところだろうか。

俺とアリシアに無断で不老にしたから、その罪は重い。


「ま、待て! グレン、お主のためじゃ、ワシらと同じ時を生きていれば、ワシらを超えると信じてあるからなんじゃ!」

「そ、そうか、爺さん。 ありがとな」

「……チョロいな」


一瞬何か聞こえたが、関係ない。 これから、やることがあるからな。


「グレンよ、どうした」

「爺さん。 俺の固有魔法オリジナルに焔魔法の中に俺の魔力が続くまで燃え続けるって言う魔法があるんだけど」


ポッと手のひらに拳大の大きさを持つ火の玉が浮かんだ。

それを、人差し指の先まで移動させた。

アールカドの爺さんは、青ざめていた。


「ワシを殺すつもりか、グレン?」

「殺さないよ? なんで、俺が爺さんを殺すことになってるのかな? 俺は、爺さんにお礼を受け取って欲しいんだよ」

「や、やめんか! その炎は、ワシを必ず殺すぞ!」


ん? なんだ、爺さんの言葉の中に雑音みたいなのが混ざっているように感じるのは気のせいか?

いや、それはないな。 爺さんがおとなしく俺の魔法を受けるわけがないからな。


「焔魔法『原初の灯火』」

「て、『短距離転移テレポート』」


ジッと、どこかを燃やす音はしたが、少しだけなので意味がない。

俺は、『原初の灯火』を消して、爺さんの部屋を後にした。

べつに爺さんが帰ってくるまで待ってもいいが、『焔魔法』で使える魔法が『原初の灯火』一つしかないからさらに発展させていかないといけないからな。


「さて、どうしようか。 『焔魔法』をもう少し発展させるか、出来そうな魔法を使えるようにしてみるか」


♦︎


御前試合二日目も三日目も俺とアリシアは快勝して行き最終日、決勝のようなものとなった。

もちろん、勝ち残ったのは俺とアリシアの二人だ。


「フフフ、やっぱりグレンが勝ち残ってきた」

「当たり前だ。 お前に勝つためにここまできたんだからな」


俺は渡された木剣をくるくると回して木剣を投げ捨てた。


「なんで!? なんで木剣を捨てたの!?」

「俺には使えない武器だからな」


俺は体術でアリシアと戦うつもりだったから初めから俺は木剣を捨てたのだ。

そして、はじめの合図が聞こえた。


「死んでも知らないからね!」


そう言うアリシアだが、相変わらずの神速の域に達している突きが目の前に来た。

それを俺は、初動のタイミングで横に転がりながらアリシアの突きをかわした。


氷針アイス・ニードル!」


ほぼ目の前で、死角から魔法を放ったが、アリシアはそれを見ることなく二歩後ろにズレるだけでかわした。


「相変わらずの異次元さだな……」

「強くなったね」


くっ、簡単に避けられるからそう言われても嬉しくねぇな。

奥の手はまだある。 一撃をかわすだけでこっちはでっかいものを取ることが出来たんだからな!


「もう一回行くよ!」


アリシアはそう宣言してもう一度、あの神速の突きを繰り出してきた。

俺はそれをかわすのではなく、受け流した。

というか、受け流すしか選択肢がない。 今度は避けることを頭に入れての突きだからさっきより若干スピードが落ちているから。


「うぐっ」


アリシアの剣をうまく流せた俺は、すかさずアリシアの腹に掌打を入れた。


「グァァ!」


苦痛の表情を浮かべるアリシアだが、とっさに横払いが出てきた。

俺は、それを避けることが出来ずにまともに食らってしまい飛ばされた。


いける! アリシアと互角の戦いが出来てる! これならいける!


火球ファイアボール、ウィンド」


アリシアが追撃のタイミングの避けられないところで俺は魔法を放った。


「チッ」

「……え? 嘘だろ……?」


ズバババと、空気を切る無数の斬撃と霧散する魔法を見て俺は思わず絶句した。

俺が見ていたのは、アリシアの木剣から魔力を帯びて俺が放った魔法を相殺したということだった。


「ハハッ、勝てねぇかもな、これは……。 それでも、俺は勝つ」


俺はアリシアに見せていないことのうちの一つ目を出した。

それは、氷で作り出した短剣。 簡単に言えば、短剣でアリシアとやり合うということだ。

それに、これは出し惜しみする必要のないものだから、俺は『焔魔法』以外にも奥の手があるのだから。


「へー、グレン短剣使えるようになったんだ」

「元からある程度使えてたけどね」


ガッ! と、氷で作った短剣を犠牲にしながら俺は、アリシアと距離をとった。




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