第13話ようこそ!アルセナ支部冒険者ギルドへ!

蒸気機関車に二時間も乗っていると、うるささも慣れて来た。


「あと五時間何しようか?」

『『拳岩』を一人で使えるようになるために魔力操作を出来るようにするか?』

「うっ、魔力操作やらないとダメ?」

『当たり前だろ? 魔力操作を完璧に出来るまで中級は教えないからな』


そう言うと、ロゼは「えぇ!!」 と言って、絶望に満ちたような顔を作った。


『はいはい、そんな顔をしなくても教えてやるから、ゆっくり四時間やれば、ある程度は出来るから』

「四時間もやるのぉ! そんなにやらななくてもパパっと済ませる方法はないの!?」

『無い! パパっと済ませる方法もあるか無いかでいえば厳密にはあるけど、一時的なものだから意味はない』

「じゃあ、どうするの?」


ロゼは諦めたのか、こちらの話を聞く気になってくれた。


『まず、水球を二つ作ります。 そして、それをお手玉をするだけです』

「え? そんな簡単なことでいいの?」

『あぁ、最初はな』


そう言ってやると、さっそく水球を二つ作り出しお手玉を始めようとした。

だが、水球に触れた途端にパァンと、水球が割れてしまった。


「わっぷ。 難しい。何これ? どうやったら出来るの?」

『はいはい、まずは、濡れたところを乾かさないといけないからな』


そう言うと、俺は『乾燥ドライ』を使って、濡れていたところを乾かした。


『んとな、最初に意識するのは、 水球と触れるときに、水球に魔力の流れを作って、そこに触れるような感じでお手玉をする。 まずは、魔力の流れを作るところから始めようか』

「はーい! 師匠! 魔力の流れって何ですか?」

『あぁ、そうかそうだったな』


俺はひとつ忘れていたことを思い出し、水球をひとつ作り出した。


『これを見ていろ』


作り出した水球をロゼの目の前まで移動させて、水球を見るように言った。


『まず、水球を作り出すときに、魔力を少し余分に使って水球を作り出す。 すると、水球をコントロールすることが可能になる。 ここは、前にも言ったよな?』

「うん、言った」

『だったら、ここから応用編だ。 その水球の魔力をコントロールしてお手玉をする。 そうすれば、無意識のうちに魔力をコントロールするクセがつく。 そうなったら、次の段階だ、頑張れ」


そう言って、俺は、ロゼの向かいの席に座りロゼの特訓を見ていた。

途中から、暇になってきたのでもう一段階上の魔力をまとめて魔力弾を作り尻尾でお手玉をしていると、ロゼから「何それ?」と言われたが、自分のに集中しろと言って黙ってもらった。


それから、四時間半が過ぎ、気づけば魔法学院がある街、魔道都市『アルセナ』が見えてきた。


「コンちゃん! 見てみて! おっきい時計塔が見えるよ!」

『そうだな、あそこの下に魔法学院があるんだけど、まずは危ないから窓から頭を出すのはやめようか』


ロゼは、興奮した面持ちで窓から顔を出しているが、みているこっちは、ハラハラしながら見守っていた。


『ロゼ、まず最初は、冒険者ギルドだからな』

「はいはい、結局ホーヘンハイマでは、冒険者ギルドで更新できなかったからね」

『あぁ、あの聖女のせいでな」

「ユイさんを悪く言うのは、見過ごせないよ、コンちゃん?」


ロゼからとてつもない冷気が放たれぶるりと、震え身の危険を感じた。 女の友情って怖い。 ホントにマジで、怖すぎる。


『わ、悪かった。 俺が悪かったよ』

「分かれば良いのよ。 分かれば」


ロゼはあからさまに肩をすくめ、先に降りる準備を進め出した。


ロゼは、まだ正式に言えば、魔法学院の生徒では、ないため周りの魔法学院の生徒が深い緑色をしていて、チェック柄のスカートが意外と良い感じの雰囲気を醸し出していた。

そこに、浮いている俺たちがいるのだけれども。


「さ、さぁ、まずは冒険者ギルドで更新しようかね」

『そうだな、あとここからはいつものようにするからな』

「りょーかい」


俺は、ロゼにただの従魔のふりをする趣旨を伝えてから、ロゼは冒険者ギルドに歩みを進めた。


「ようこそ! アルセナ支部冒険者ギルドへ!」

「こんにちは、冒険者カードの更新をお願いしても良いですか?」

「はい、更新ですね。 では、確認させてもらいますよ」


そう言われてロゼは、首にかけていた冒険者カードを出すとしばらく待つために依頼ボードを見ていた。


「あの、すみません」

「あ、はい」


後ろから服を引っ張られ、そう言われたロゼは後ろに振り向いた。 そこには、学院の制服を着た少女がいた。


「あなた、学院の制服はどうしたのよ?」

「え? 学院生ではないですよ? 今はまだですけど……」

「ごめんなさい。 てっきり、冒険者ギルドの利用の仕方をわかっていない方かと思ったので……」


ホホっと、上品そうな笑いをする少女を見て、ロゼは顔が引きつった笑いになっていた。


「ロゼ様。 更新が終わりました」

「は、はい!」


そこで、受付からの呼び出しがあり、受付に足早で向かった。


「ロゼ様は、ある一定数の魔物を討伐していますので、アイアン昇格です! おめでとうございます!」

「ありがとうございます」


そして、新たに渡された鉄製の冒険者カードを首にかけ冒険者ギルドを後にした。

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