第7話 誰かさんのせいでこうなりましたー

あれから早一ヶ月。

ただ今、ロゼと会った森で三日ほどキャンプをしています。 ではなくて、魔法とサバイバル力の特訓をさせています。 ロゼは、七大属性の魔法を初級魔法まで習得している。 一ヶ月というのは、天才型でないと厳しいぐらいのものだ。 だが、今のロゼは、七大属性の魔法の初級魔法までが限界だ、でも、諦めずに三ヶ月みっちりと訓練すれば、全ての中級魔法を習得出来るだろう。 現に、地属性の魔法は中級の簡単なものまで習得出来ている。


『おい、魔猪ファングが来てるぞ』

「ーーッ!? 集中!」

『うんそうだな。 集中が切れた罰として魔猪ファングを二手で倒してみろ』


そう言うと、ロゼは突進前の予備動作に入った魔猪ファングを見て二歩後ろに移動した。

普通ならば悪手だが、二歩下がる時に、ある魔法の発動を確認した。 俺が妖狐になったとしても、ロゼはまだまだ俺の目を騙せない魔法使い程度。 一般的な魔道士と認めることはまだできない。


「ブモォォオ!」


魔猪ファングが突進をしてきた。 それに合わせて、ロゼはさらにバックステップを踏んだ。


「ブモッ!?」


魔猪ファングは、ズボッと! 音をたてて地面を踏み抜いた。

ロゼの魔法で落とし穴となっていたところに綺麗に落ちていった。


「ブモォォ!!」


落とし穴にはまったことに怒ったのか、声を荒らげて斜面となっている壁を登ろうとしていた。


「つ、次は、剣となる岩ロックニードル!」

「ブモォォ」


落とし穴となっていた場所が、盛り上がり魔猪ファングを貫き剣山の中に一匹の猪の死体があるという少し異様な光景となった。


『それじゃあ、あの魔猪ファングは自分で血抜き下処理を済ませろよ?』

「えぇ! なんで! コンちゃんも手伝ってよ!」

『これぐらい自分で出来るようにしろよな』


俺が血抜きと下処理を抑えながら、やっていたから出来るはずだ。 というより、剣山からあれを抜いて木とかに吊るさないといけないのが面倒なだけだろうが。


『どちらにせよ、こいつの下処理が終わったら、町に戻るんだから、そいつだけでも自分でやれ。 十五匹も一緒にやったんだからよ』

「でも〜」


でも、じゃねぇよ。 今回、三日で十五匹魔猪ファング狩るのと、倒した後のことを一人で出来るようになれっていったんだぞ? こっちは。 はぁ、しっかりして欲しいよ、こっちはさ。


「む〜。 わかった、やればいいんでしょ!」


頬を膨らませ不服そうにロゼはそう言った。


はい、そうです。 やればいいんですやれば。


はぁっと、浅くため息をついて、ロゼを見ていた。


ロゼは、自分が発動した魔法剣となる岩ロックニードルを操作して、元の地形に戻すと魔猪ファングを引きずって近くの木にぶら下げた。 そして、ドバドバ出る血は、小さな穴に収まるように工夫していた。


それから、全てが終わり帰ることになるとロゼは、五匹の魔猪ファングを簡易的な荷台で運んでいる。 残りの十匹はどうしたかって? 全部焼いたよ、持って帰れないんだから。


「コンちゃ〜ん、重いから手伝って〜」

『嫌だ。 それを町まで運べって俺は、始まる前に言ったはずだぞ?』

「ググッ」


事実を口にしたまでだったが、まさか正論で返されると思っていなかったのか、不服そうに歯をくいしばっていた。


『はぁ、しゃないな』


俺は、そう呟くと風属性の魔法を使い、ロゼの負担を少し軽減させた。


「おっ、ありがとう! コンちゃん!」


ロゼがそう言うと、少しむず痒くなった俺は、ロゼの肩まで登った。


そのまま、歩き続け町の城壁の目の前まで来ると、「大丈夫だったかい?」と、聞かれていた。


「あ、これお願いしますね」

「あ、はい。 って、これだけの量を一人で狩ったのかい?」

「え、えぇ」


門番に渡した荷台の魔猪ファングを見て門番たちは呆れていた。


「よく危ないことできるね」


門番からの無言の圧力を受けて、少したじろいだロゼは、苦笑いを浮かべた。


「いや、師匠が訓練のため三日で狩ってこいって言われたから……」

「そうか、そうか、私たちがその師匠とやらに文句を言っておいてやろう」

「わかりましたー」


いやそこ、わかりましたじゃないだろ!? その師匠とやらは、今現在、ロゼの肩に乗っているからな!?


「キュー(文句は言えないぞ)」

「おぉ、お前も頑張ったか! 偉いぞ!」


そう言って俺を撫でようとしたので、俺はロゼの逆側の肩に乗り換えた。


「まだ嫌われてんのか」


嫌われてるじゃなくて、おっさんに撫でられて喜ぶ奴なんていねぇよ。 おい、ロゼ、何お前笑ったんだよ、他人事だと思ってんのか?


「では、私はこれで、冒険者ギルドにも帰ったことを伝えないといけませんので……」

「お、おう。 了解した」


ロゼと俺は、門番の横を通り過ぎ、町の中へと入っていった。


『ロゼ、ふざけるなよ?』

「フフ、ごめんね。 コンちゃん」

『はぁ、一ヶ月前のロゼの方が可愛かったなぁ』

「誰かさんのせいでこうなりましたー」


わかってる。 俺がいけないんだろ? お・れ・が!

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