第2話天然風少女は天然ではない

僕の名前は狗飼。

正直、覚えてもらう必要はない。

どこにでもいそうで、どこにいても問題にならない。

人畜無害で無価値な男の子だ。


さて、僕はと猫撫さんのファーストコンタクトは、タイトル通りワーストな結果となった。

緊張が判断を誤らせたのだろう。


『いつやるの?』

と尋ねられて

『今でしょ』

を考えなしに実行するとこうなる。


『明日やろうは馬鹿野郎』も類似の結果を及ぼすので賢明な読者諸氏においては注意されたし。


つまり、如何な有用ま名言でも常に正しいとは限らないのである。


「それで、私に話って何でしょうか?」


どこか抜けたような、

天然っぽいような、

あざといような、

そんな口調。


それを子猫のような、可愛い系小動物顔の彼女の口から解き放たれる。

すなわち、猫撫奏の口から。


これは重要なことなので覚えておいて欲しい。

猫撫奏。

彼女の名前はとても大事だ。

僕のような下の名前すら明かす必要のない凡庸な一般人とはレベルが違う。

いや、ランクが違う。

どころか次元が違う。


影響力の差。

僕にはとても幾人もの男達の人生を圧倒的に変えることなんてとてもできない。

人格を否定し、

過去を否定し、

未来を否定し、

ついでに価値観も否定する。


そんな風には、とてもなれない。

だから、この気持ちは憧れなのかもしれない。

彼女が気になるという、この気持ちは。


もちろん、猫撫さんは幾人の軟派男たちが証明したように十分に可愛い。

性的な目で見るなと言うのが無理な話だ。

男に生まれたからには、一度は彼女を抱きしめ、頭を撫で、あわよくばーーと考えるに違いない。

少なくとも僕はそうだった。

彼女をこの目に捉えた瞬間、光の速さで遺伝子レベルで反応した。


「あの、狗飼さん」


再び、彼女の耳に優しい声が僕の鼓膜を揺らした。

この声だけでご飯三杯はいける。

この声だけで、42.195km走り抜けられる。


「私はいつまでこの誉め殺しを受け続けないといけないのでしょうか?」


「え?」


思考が止まる、

時間が止まる、

呼吸、が、とま、、、、る。

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