考察魔 猫撫さんとのあれこれ

虹色

第1話 ファースト・ワースト・コンタクト

僕には気になる人がいる。

性別は女性、

クラスの窓際。

いつも退屈そうに彼女は授業を聞いている。


短めの黒髪、

眠たそうな瞳、

小柄で小顔。


声は高めで、おっとり口調。

だけれど、こちらから話しかけない限り、彼女が口を開くことはあまりない。


その可愛くもどこか抜けてそうなルックスに惹かれ、軟派な男達が幾度となく声をかけたがその結果は悲惨である。


軟派者から真面目へと転身したり、

自身の醜さに直面して出家したり、

はたまた精神が崩壊して入院した者もいると言う。


つまり、彼女と関わろうとした者は変わってしまうのだ。

変わってしまったのだ。


それが良いことか、

可哀想なことなのかは僕には分からない。

正直、どうでもいい。


大事なのは結果だけ。

今の自分を変えてくれる可能性があるという事実だけ。


自分の席から立ち上がり、彼女の元へと歩く。

一歩一歩、

二歩三歩。

周囲の視線が突き刺さる。

だけれど歩みは止めず、


猫撫ねこなでさん」


僕は勇気を持って声をかけた。

クラスの皆がギョッとする。


命知らず、

自殺志願者、

ゴムなしバンジー。


だけれど僕は気にしない。

彼女からの反応を待つ。


猫撫さんは僕に焦点を合わせる。

だけれど、何も言わない。

沈黙が広がる。


「ーー狗飼いぬかい


僕の名前を呼んだのは彼女ではなく。


「今は授業中だ。君の勇気は認めるが、時と場所を考えて行動しなさい」


担任教師の山野やまのだった。

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