第15話
不思議な人だと思いながら席でいろいろ話しているうちに、秋穂のことがいろいろわかってきた。
幼い頃に両親は離婚し、共に暮らしていた母も暫くして秋穂を置いて蒸発したらしい。それからは施設に預けられ、大人になるまで孤独に生きてきたのだと話していた。育ちと学歴を他人と比べられ、今も生き辛い人生を歩んでいると、酔うほどに秋穂は生い立ちから今の生活のことまで良く喋った。
同情などしたつもりはないのだが、話を聞けば聞くほど自分の人生にも起きた不運なことや、努力だけでは補いきれなかった無力さを思い出すことがよくあった。自分だけが悪いわけではないのにと、身の上に起こったことと苦労を理解してくれない世間の冷たさを呪ったことがある私は秋穂の話しが他人事とは思えなかった。
秋穂を見ていると可哀想で弱い自分の分身に接しているように思えて、心の奥がざわざわした。
笑い声が響く店内で秋穂と私が座っている席のまわりがいつもワントーン暗くなっているように思えたのは気のせいだろうか。いつ来ても話す内容は明るいものではないのにどうしてこの人の話にこんなに強く引き込まれるのかがよくわからなかった。
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