クマの僕とシロマル
あいる
第1話◇クマのテイル
僕が住んでる山奥に君が住み始めたのは夏の日のことだった。
春の暖かいあの日母さんは僕の前から姿を消した
キツネのおじいさんの言うことにはにんげんっていう怖い人に殺されたのだと聞かされた。
それから僕はひとりぼっちになった。
母さんが作ってくれたこの穴で僕は1人で眠る。
そんなある晩のこと
小さな足音が聞こえてきた
葉っぱがそよそよと小さな音を立てるなか
その足音はぐるぐると歩いているみたいに聞こえた
時おり聞こえるか細い鳴き声は誰かを探しているみたいだった
僕があの日母さんを探して歩いた日のように
小さな鳴き声はやがて大きな声になっていった
僕はちょっと怖いけど外の様子を見てみた
そこには小さくて白くてまん丸の顔の犬がいた
「どうしたの」
その声にびっくりして飛び上がった仔犬はまん丸の目を開いて「ガルル」と唸った
「こんばんは、僕はクマのテイルだよ」
じっと見つめていたまん丸の白い仔犬は「僕のこと噛まない?」と聞いてきた
「もちろんだよ、噛まないさ」
少し落ち着いたみたいで仔犬は唸るのをやめた
「どこからきたの」
「わかんない」
「だれに連れられてきたの」
「わかんない」
ちょっと困ったなと思った時に仔犬は話し出した、
「ご飯をたくさん食べて、ウトウトしてたらいつの間にかここにいたんだ」
にんげんたちは、時おりこの山に飼いきれなくなった犬や猫を捨てにくる。
捨てられた犬や猫たちは多くは死んでしまう
餌をもらうことに慣れているからね
悲しいことだよね
「君の名前は?」
「わからない…名前?」
「じゃあ僕が名前を付けてあげるよ」
「名前をつけてくれたら、元のお家に帰れるの?」
「うーんそれはわからないけどね…白くて丸いから…シロマルだ」
僕とシロマルは友達になった
その日の夜は2匹でくっついて眠った。
なんてあったかいんだろう
僕はこのシロマルを守ろうと思った
僕が母さんから守られたように
僕らが山をお散歩するとキツネさんやイノシシさんが物珍しそうに声を掛けてきた
「テイル…そのまん丸なワンコは?」
「僕の友達のシロマルだよ」
シロマルはそっと僕の後ろに隠れてしまっていた。
「こんにちはシロマルくん、はじめまして」
やさしく話しかけてくれたのは鹿のマリーおばさん
「こんにちは…」
「いいこね、何か困ったことがあったら大きな声で呼んでね、おばさん飛んでくからね」
「うん!ありがとう!」
僕たちは仲良く暮らしていたけどいつもお腹はペコペコだった。
山のふもとには小さな村がある、そこには畑もあるし怖いにんげんもいるけど食べ物はたくさんあるはずだ
まん丸だったシロマルはちょっぴり小さくなっていた
「僕が守ってやるって決めたんだ!ぜったいに守ってみせる」
その日の夜のこと、ぐっすり眠ったシロマルをそっと抱きしめてから
僕は村へと急いだ
「シロマルのために」
「シロマルのために」
何度もつぶやきながら走った
何だか美味しそうな匂いがしてきた
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