この青春は偽物か 諦めんな!馬鹿野郎!

心ヶ崎航

第1話 もう嫌だ!

 私は誰とも仲良くできないのだろうか? 私には青春という言葉はないのだろうか? いつも教室で一人ぼっち。それでも私、成山飛鳥は青春を待ち続ける。


「成山さんってめちゃくちゃ美人だよねー。」

「それなー。私たちが話しかけていいのか分かんないわー。」

 教室のどこかでこんな声が聞こえる。いつもそうだ。好き好んで私に話しかけてくる人なんていない。両親は海外の日本人学校で教師をしていて、家には誰もいない。親戚の人たちがみんな声を合わせて、立派なご両親だと言ってくるから帰ってきてほしいとも言えず、一日中誰とも話さないなんてこともある。けど、新しいクラスで始まった今日は少しだけ違ったの。


「成山さん、隣の席だね。僕は田島葵。よろしくね!」

 ちょっと可愛い顔した男の子に声をかけられた。

「オーッス!俺、春本光軌。これからよろしくな!」

 さらにその親友の春本光軌というイケメン男子にまで声をかけられてしまった。それなのに私は久しぶりに声をかけられたということもあって、完全にスルーしてしまった。これでは周りの目が痛い。

「ええっー!成山さん無視ー?ないわー。」

「サイテーじゃん!せっかく春本くんが話しかけてるっていうのに!」

 また自分のせいで嫌われてしまった。けれども無視をされた側の田島君は優しい眼差しで

「いきなり話しかけちゃってごめんね。あの二人の言うこと全然気にしなくていいから。」

 と、優しすぎる言葉をかけてくれた。するとどう言う訳か、

「そうだよねー。いきなりでビックリしちゃったんでしょ。分かるよー。」

 えっ?「成山さん無視ー?ないわー。」とか言ってきた女子だった。

 何を分かってるんだろう。この人は琴原茜さんというらしい。もう私には人間関係なんてものが分かんない。さっきまで私を否定してきたくせに、急に態度を翻してこんなことを言ってきた。どうせ田島君のことが好きで自分を庇ったのだけなのだろう。


「ああ。恋とかしたことなかったなぁ。」心の声が漏れる。顔を机にうずめ、嫌なことを考えてしまう。私に生きる価値なんてない。誰からも必要とされない。表面上の付き合いすらも存在しない。感情と共に溢れてきたの悲しみのはつまった小さなきらめき。


 そして、意識は遠のいてゆく・・・


「成山さん!成山さん!」誰だろう。遠くで誰かが呼んでいる気がする。聞き覚えのある声だ。私を包み込んでくれるような優しい声。

「自分を見捨てたらダメだ!あなたのおかげで救われる人もいるのだから!」


 目が覚めた。よく知る、保健室の天井であった。いつも教室に居られなくなっては保健室に逃げてきていた。私は今どうしてここにいるのだろう。誰かに運ばれたのだろうか。細かい事は気にせず、教室に戻ろうと思っていた。保健室の先生にこの理解し難い言葉をかけられるまでは。

「飛鳥君、喧嘩の仲裁に入って怪我したんだって?やるじゃないの。」

 ん? どういう事? 今飛鳥君って呼ばれた? しかも喧嘩の仲裁? 

人違いに決まってる。

 ガラガラララ

 今度は何だろう。

「オーッス!飛鳥!大丈夫か?喧嘩なんかしてほんとスマン。勢い良く間に入っては転んでいったお前のお陰で喧嘩も収まったぜ!」

 この声はイケメン男子か。この保健室には自分以外の生徒はいないはずなんだけど・・・

「おい飛鳥!心配してやってんのに無視すんな!」

 そう言っては胸ぐら掴んで起こしてくるんですけど? 人違いしないでよぉ、と思いはするものの、ちょっとばかし頭のいい私は正しい答えを導き出してしまう。


 私、男子高校生になってしまったんだ。

しかも、今までとは違う次元の世界の。

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