大嶽丸と魔女鬼、帝鮫を生み出す

石巻市雄勝地区

北上川が太平洋に注ぐ河口だが、ここ数年ヨットやボートと言った海遊船の不法係留問題が絶えない。

業を煮やした石巻市は震災の問題がある程度落ち着いた2015年辺りから市内の不法係留問題に本腰を入れ始めた。

「あーっ俺のヨットが撤去されてる!?」

「俺の船も」

ちょうどそこへ、北上川下流事務所の作業船が、違法係留している遊覧ボートにクレーンを引っかけ、撤去しようとしていた。

「ちょっと、てめぇ俺の船に何しやがる!?」

ゃんねのすか?この北上川河口一体は船ッコを勝手に留めてはわがねのっしゃ」

「意味わかんねーよ!?みーんな留めてるじゃねーか!?」

「だからこうしてオラだが一台一台撤去しているのす。おめさんの船ッコ持って行かれんのんたば罰金じぇんこ払え!」

「はぁ!?ふざけんな!?石巻の海は遊ぶに持ってこいの理想の海の遊び場じゃねーか!!それを漁業と信仰にしか使わないなんて同化しているぜこの石頭ジジイ!!」

「んだどこのきかねぇ聞き分けの無いほでなクズな野郎やろっぽめが!!」

一台の違法係留遊覧ボートをめぐり、持ち主の若い男性と北上川下流事務所の男性職員がボートの上で取っ組み合いになった。


その様子を北上川河口に生い茂る葦の間から大嶽丸と魔女鬼は見ていた。

「人間って老いも若いもどうしてこうも頭に血が上りやすい物さね?」

「だからこそ我々の仕事がやりやすい」

大嶽丸はモシリュウの口に鬼魂魄をセットし、北上川下流事務所の作業船に狙いを定めて放った。

-ドシュウ

-ズモモモ

-バシャア

「ハァハァハァ…」

「まだやる気がこ…の………」

違法係留遊覧ボートを巡って取っ組み合っていた2人は北上川に転落していた。

自力で川辺に上がってきたものの、北上川下流事務所作業員の乗っていた作業船は鬼魂魄に包まれ、どす黒い霊気を放っていた。

「オ…オラの船がぁ…!!」

「おい逃げんのかじじぃ!?」

作業員と若者はその場から逃げ去っていった。

オン涅哩底曳ネリチエイ娑婆訶ソワカ!」

-ピカァ

大嶽丸が羅刹天真言を唱えると、作業船は鬼魂魄と共に大型の鮫に姿を変えた。

更には周囲に違法係留していた船を次々にその巨顎で呑み込んでいった。

「フフフ、行け!石巻の海に対する負の感情が生み出した“羅刹夷”「帝鮫」よ!!」

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