大嶽丸一味と魔鬼女、日高見神社を襲う

「それどころでねぇぞ!日高見神社だってもしかすっど…」

「はい?」

コンピューター部の我妻数子が生徒会長咲春に注意を促した次の瞬間、

-ズドォン

「きゃああっ!!」

社務所に揺れが走る。

「皆んな!はぇぐテーブルの下さ!」

「はい」

庄子愛子の指示に従い、地震が起きたときの防災マニュアル、机の下に隠れるか座布団を体の上に乗せて身を守る体勢を取った。

縁側から一斉にテーブルの下に潜り込んで頭を抱える。

「助けて…北上川の水神様…」

オン嚕鷄入ロケイ嚩羅ジンバラ紇哩キリク娑婆訶ソワカ…」

テーブルの下に身を隠しながら郷土研究部の狩野幸音は心の中で助けを求め、猪股睦弥は十一面観音真言の印を結び真言を唱えて仏様に助けを求めていた。

「何その呪文?」

「十一面観音大呪です。十一面観音様の真言を唱えれば災厄から逃れられると、金華山黄金山神社に神職として働く父から教えて貰ったんです…」

「どうしてオラエの文化部連中はオカルトオタク揃いなのっしゃ!?」

「先生オカルトではありません!金華山が神仏混淆の時代から証明されてきた除災法です!実際に9年前の地震と大津波の時も周りが混乱する中、私はひたすら十一面観音大呪を唱えて助けを祈っていました。そうしていたら本当に助かった経験があるんですから!」

「それ本当だか!?」

「はい!あれから私は毎朝生きている事に感謝して、“ 佛説十一面観世音菩薩随願即得陀羅尼経”を音読しているんです!」

「なんだって?」

「十一面観音陀羅尼経でいいです…とにかく今は十一面観音様に助けを祈りましょう!」


日高見神社の外、北上川の川底からはモシリュウ・ウタツサウルス・クダノハマギョリュウ・ホソウラギョリュウ・マストドンサウルスと5体のメカ恐竜が現れた。


モシリュウは大嶽丸おおだけまる


マストドンサウルスは魔女鬼まめき


ウタツサウルスは金丈丸きんけんまる


クダノハマギョリュウは早虎はやとら


ホソウラギョリュウは猪熊いのくま


とそれぞれ名乗った。


「ここが大嶽丸様が封印されていた桃生郡と牡鹿郡ですか?」

「ああ…ヤマトの田村麻呂は俺を捕らえた際に、首と四肢と胴体と肉体を三つに分けて、それぞれ箟岳山・富山・牧山に埋め、その上に観音像を置いて聖なる三角形を築き、鉄壁の封印を施した!だがその封印も先の大津波で崩壊!その間に湧き上がった負の感情を吸い込み、悪路王様と共に完全復活を果たしたのだ!はーははは…っ!!」

「残すは鬼魂魄で新たな鬼を生み出し、人間界に恐怖を広げる事でまだ封印が解けていない同志おにを配下につける事さね」

「金丈丸!早虎!猪熊!」

「はっ!大嶽丸様!」

「お前達は気仙の出自であろう?このままお前達は北へ赴き気仙で鬼魂魄を広めて参れ!」

「あり難き幸せ!では!」

どす黒い鬼魂魄を口の中に、金丈丸、早虎、猪熊の三体は北上川を北上した。

「さて、残すはあの社か」

「あたいに任せなって!」

大嶽丸は日高見神社に目を向けると、魔女鬼は人食いワニと同じ形状のマストドンサウルスの顎を最大限に開き、日高見神社に狙いを定めた。

オン涅哩底曳ネリチエイ娑婆訶ソワカ…」

-ドゴォ

羅刹天真言を唱えると同時に魔女鬼の口から黒いエネルギー収束波が日高見神社の本殿目掛けて放たれた。


オン嚕鷄入ロケイ嚩羅ジンバラ紇哩キリク娑婆訶ソワカ…」

日高見神社社務所の中では部員と先生が睦弥に説得されて懸命に十一面観音真言を唱えていた。


その時天空より清らかなエネルギー生命体が日高見神社の社務所を包み込むように現れ、魔女鬼のエネルギー収束波からガードした。

騒早剣ソハヤノツルキ!」

「お前は!田村麻呂!どうしてまた!?」

「この私がいる限り、奥羽の地は荒らしはさせぬ!」

「田村麻呂…またしても…!」

オン吠室囉ベイシラ縛拏野マンダヤ蘇婆訶ソワカ!」

清らかなエネルギー生命体の田村麻呂は毘沙門天真言を唱えると日高見神社社務所ごと、中にいた日高見高校の生徒9名と教師1名を異空間へ転移・避難させてしまった。

「消えた…だって?」

「ちょうどいい。俺達は俺達の鬼魂魄を撒きに向かうぞ!」

大嶽丸と魔女鬼は旧北上川を潜水し下っていった。


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