第52話 嘘でしょう!?

「ようやく追い付きました!

一人で勝手に行かないで下さいよお師匠様。」


そう言って肩に手を置かれた。

ジュリか。

だけど俺はそれどころじゃ無いんだ。

思い出せ、思い出すんだ。

俺にとって大切な事なんだ。


だが、俺の気持ちとは裏腹に、

目の前の人は、怪訝そうな顔で俺を見つめている。


「おや、確かあなたは…。」


「えっ…?」


「確かあなたは、以前お会いしたカナエさんでは有りませんか?

あぁ、やはりそうだ。

お久しぶりです、お元気でしたか?」


「ジュリの知り合いだったのか。

それなら俺が会った可能性もある……。

いや、違う。

カナエ…、カナエ? 聞いた覚えがある………。」


「お師匠様、ほら話したでしょう?

この方が以前私にジャンケンを教えて下さった方ですよ。」


「それとは違う、カナエ………。」


確かにその名に覚えが有ったんだ。

昔……、そう、大昔に聞いた事が有る。

俺はその人の事を良く知っていた筈なんだ。

一枚のベールが邪魔をしているように思い出せない。

すぐ手に届きそうで、届かないもどかしさ。

やり切れない苛立ち。

なぜ思い出せない。


「こ、これはジュリウス様。

ここで会ったが吉日。

私、丁度あなたに会いに行く所でした‼」


「おや、それはそれは。

して、私に御用とは一体何でしょう。」


世間話を始めた二人だが、

俺はそれどころじゃ無いんだ。


「実は、最近小耳に挟んだのですが、

あなたのお師匠様がサンサーラとして蘇ったとお聞きしたのですが、

その方についてちょっとって………お師匠様?」


こらこら、人に向かって指をさすなって教えなかったっけ?


「えぇ、お師匠様……。

えっ、いえ、違います。

これは知り合いの小僧で、って違います。

お師匠様の事をやたらと吹聴する訳にはいかないのです。

だからこれはただのガキで、決してお師匠様では無くて、

そ、そんな目で見ないで下さいお師匠様。」


ジュリは俺の顔色を伺いつつ、必死に弁解している様だが、

それって完全に墓穴を掘っていないか?

愉快なジュリの様子を見れて、俺も落ち着いた。

彼女も俺がこいつの師匠だと気が付いたようだ。


「成程ね。

あまり人に知られちゃまずい訳か。

分かりました。

私の心の中に留めておきましょう。」


そう言ってにやりと笑う。

あっ、何か悪い予感。

これも以前に覚えが有る。


「その代わりと言っては何ですが、少々伺いたい事が、

特にそちらの方に。」


俺を見つめるその目が……。


「か…なえちゃん?」


思わず口から洩れた。

遥か彼方一万光年…、まではいかないけど、

確か彼女は俺が最初、ここに転移してくる前の世界で親しくしていた人だ。

観月香苗。


「香苗ちゃんよね…。

ねえ、香苗ちゃんでしょ? 観月香苗、そうでしょ?」


「えっ、セン…パイ………?

本当に……?

冗談じゃないよね…。」


冗談じゃないよね、とな?

その言い回しがやっぱり彼女らしい。


「ここで冗談を言ってどうするの。

でも、何であなたがここにいるの。

一体どうしたの?

大体にしてなぜ別れた時のままの姿をしているのよ!?」


ずるいじゃない。


「サンサーラで師匠って事は、私の予想が当たってたって事ですよね。

それより先輩こそ、その格好でオカマ言葉やめて下さい。

調子が狂います。」


「そ、そう?」


確かにこの姿でお姉言葉は変か?

かなり前の事だから、再現できるかな~。

そう思いながらも、以前の姿に変わろうかと思ったところで、

ジュリに引き止められた。


「お師匠様、こんな街中でバカな真似は止めて下さいね。

あなたがこの先、面倒を背負い込みたいのであれば止めはしませんが。」


おぉっと、危ない危ない。


「み、観月さん。

こんな所で何ですから、一緒に子ピルトでも食べながらお話でもしませんか?」


「お師匠様………。」


ジュリは額に手を当て、何やら俯いているが、

頭痛か?


「何やら深い事情があるようですが、

それでも食い気ですか!?

こういう時には、自分達だけで話が出来るような場所を選ばれるでしょう。

それが子ピルトですか?

いいかげんになさいませ。」


「だって腹が空いたし、初めからそれが約束だったじゃん。

話をしたいし、腹減ったし、両方を満たしながらするなら一挙両得!」


俺はジュリにサムズアップしながらウインクした。


「先輩~、ちょっとキャラが変わったみたいですけど、

本当に先輩ですか?」


「まぁ、色々揉まれたからね。

大丈夫、私はちゃんと茉莉香だよ。」


そう言い、今度は香苗ちゃんにサムズアップした。

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転生者は無敵! …転移者の俺が転生を繰り返した結果だけどね… はねうさぎ @hane-usagi

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