片角

炯斗

00

柔らかな午前の光をステンドグラス越しに浴びて、少女は聖霊への祈りを捧げていた。

十四年間欠かさずに続けてきた朝の礼拝。

今日もこの国が青く美しく存在するのは、全て聖霊のお導きだ。あと二年もしたら私も結婚するだろう。残念ながら私に婚約者はいないけれど、きっとお父様は素敵な人と引き合わせて下さる。望みを言って許されるなら、出来れば優しい人がいい。お父様とお母様のように、いつも微笑んでいられるような夫婦になりたい。

「エイラ、朝の礼拝は終わったかしら?朝御飯にしましょう」

「はぁい」

今日はいつもより特に熱心に祈っていたらしい。もうそんな時間かと立ち上がる刹那―

「―――?」

立ち眩みだろうか。ふらっと平衡感覚を失ったかと思うと、左眼を激痛が襲った。

「―ッ!!?!ぐ、ぁ…ッッ、ァ」

左眼。奥の方から中を無茶苦茶に穿つような痛み。

痛みと、衝撃。

ガンッ!!と一度きり。脳を揺さ振る激しい衝撃の後、痛みか熱か判別のつかない感覚がジュウジュウと頭部左側を焦がし続けた。

「どうした… !?エイラ!!?」

異変に駆け付けた両親はエイラを見るなり絶句し、駆け寄ってはくれなかった。

痛い、痛い。熱いよぅ。

エイラは助けを求める声すら出せず、ただただ必死に左眼を抑えて酸素を求め続けている。

人が倒れる音。母親が失神し、父親がそれを支えるのが視界端に映った。

何が起こっているのか疑問に思う余地すらなく。痛みに耐え続けていたエイラの意識も、そこで絶えた。

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