人が生きていける環境
『……家…? 小屋……? って言うか、なんかホームレスが公園とかで作ってるヤツみたいだな……』
少女と一緒に<街らしきもの>に向かって歩くと、ぼつぼつと建物のようなものが見え始めた。
そのほとんどは朽ちかけていたり完全に崩れていたりでとても人が住んでるようには見えないものの、ニュース映像などで見た<ホームレスによる手作りハウス>が頭をよぎり、川が近いのか水の匂いがすることとも併せて、
『もしかしたら街に住めない人達が勝手に作ったものなのかな……』
とも思わされた。川が近くにあれば少なくとも水は確保できる。しかもこうして草が生い茂っているならその中には食べられる野草もあるだろう。となれば、ギリギリ人が生きていける環境だと推測できたからこその思考だった。
そしてそれは正解だった。
ここは、街に家を持てなかったり、様々な事情で街の中には住めなかった者達が勝手に住み着いた場所だったのだ。
けれど今は、そのどれにも人の気配はない。
そこを通り過ぎ、リセイは少女を伴ってさらに歩いた。少女もさすがに体力があるのだろう。しかも<昆虫>や<小鳥>が豊富にいるのが気に入ったのか、それらを捕えてはムシャムシャと頬張っている。
さらには、
「ハイ、オニイチャン」
と、捕まえた<バッタに似た虫>を差し出してくれたりもした。たぶん、『食べろ』ということなのだろう。
しかしさすがにそのままでは食べる気にはなれなかったし、<能力>のおかげか空腹も感じなかったので、
「僕はいいよ。どうぞ食べて」
と応えた。
「ワカッタ」
少女はそう返事をして遠慮なく口に放り込む。
そうこうしている間にも、建物らしきものが見えてきた。
だが……
だがそれは、遠目に見ても明らかに<廃墟>と分かるものだった。
あるものは崩れ、あるものは完全に焼け落ちて、無残な姿を晒している。しかも結構な時間が過ぎているのも分かる朽ち果て具合だった。
それでも一応は確認してみようと少し足を踏み入れてみたものの、やはり全く人の気配もない、ただ廃墟となった建物が打ち捨てられているだけの場所であった。
上空から見た時も人影が見えなかったが、一応は区画が作られて建物らしきものも見えたことで<街>だと思ったものの、実際には<ゴーストタウン>と呼ばれるものだったのだ。
『戦争か何かがあって、それで放棄された感じなのかな……』
焼け落ちた建物と、散見される人骨らしきもの。加えて、戦場跡らしき場所にも満ちていた<死の臭い>が、ここではさらに濃い。
およそ人が生活を営んでいるような場所でないことは、リセイにも分かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます