彼女にはかないません!
ひろきち
第1話 彼女にはかないません!
僕の名前は恩田智樹。
この春から川野辺高校に通い始めた容姿も知力も体力もごく一般的で、いわゆる村人A的なモブキャラ高校生だ。
そんな僕は、今自分の部屋のベッドに寄りかかって買ってきたラノベを読んでるわけなんだけど、ベッドには美少女と呼んでもいいくらいの容姿の女の子が寝そべって同じくマンガ本を読んでいる。
彼女の名前は富田優子。いわゆる僕の幼馴染ってやつだ。
幼馴染なら当たり前なのかは知らないけど、彼女は何故か僕の部屋に入り浸っている。そして自分の部屋の様にベッドに寝ころびマンガやゲームを楽しむ。
普通年頃の男の子の部屋とか警戒するもんだと思うんだけど、僕はそういう対象に見られていないんだろうな。
優子とは同じ高校に通ってはいるけど、彼女は容姿だけでなく勉強もスポーツもトップクラス。今年は学内の彼女にしたい人ランキングでも3位も獲得していた。
いわゆる学年カーストの上位層であり、ゲームで言えば勇者的な存在だ。
つまり村人Aな僕とは住む世界が違う存在なんだ。
僕と仲良くしてくれてるのも"幼馴染"って付き合いがあるからだ。きっと。
と、そんな彼女が突然話し出した。
「私さぁ 昨日隣のクラスの岩田に告白されたんだ」
「へ へぇ。。。岩田ってサッカー部のイケメン君じゃん。流石だなぁ。で付き合うのか?」
何だろう。少し胸が痛む。
何年か前から彼女を異性として意識はしていたものの、どんどん綺麗になってく彼女に思いは伝えられず・・・
こんな日がいつか来るのは、わかっていたのにな。
「まさか~。”君の事幸せにする"とか言われたけど初対面で私の事何も知らないくせに何言ってるのって感じだよ。
普通に"ごめん 私の幸せが何か知ってるの"って断ったよ」
「そ そうなんだ 中々手厳しいね」
岩田には悪いけど何となく笑顔になってしまった。
にしても相変わらず優子は厳しいな。
「別にかっこいい人と付き合いたいとか無いからね私。私はただ一緒に居て楽にしてられる人がいいのよ」
「そ そうなんだ・・・」
「・・・ラノベとかのテンプレ的な作品でさ、いわゆる美少女ヒロインが幼馴染のモブキャラ的な人と付き合ったりすると、よくクラスの男子が僻んで男子に嫌がらせしたり"俺の方が彼女を幸せに出来る"とか言ったりするじゃん。
私そういうの見てるとイライラするんだよね。まず"自分の方が幸せにできる"って何様のつもりよって思うわけ。
付き合ってる幼馴染ってことは何年も一緒に過ごしてきてるってわけでしょ?積み重ねてきたものが違うと思うんだよね。
それがポッと出の存在で"自分の方がって"どれだけ自信あるんだよって思っちゃう」
「・・・・」
「そもそも幸せなんて人それぞれ形も感じ方も違うでしょ?
女の子にとっては、幼馴染の男の子と一緒に居るだけで幸せかもしれないじゃない。プレゼント買ってもらったり、優しくしてくれたりしてくれたら幸せってわけじゃないと思うんだよね。
で、挙句に僻んで嫌がらせするとかしてたら、絶対そいつ性格最悪でしょ。
人に嫌がらせする様な奴は、人を幸せになんて出来るわけないじゃん」
「うん」
「そういうわけだからさ。智樹も遠慮しなくていいからね」
「はぇ?」
途中まで言ってることはよくわかった。
でも何で俺がここで登場する?
「だ・か・ら、私を彼女にしても誰にも文句言わせないって言ってるの!
ここまで言わせたんだから私と付き合いなさい!」
「ぼ 僕?」
「言ったでしょ"私は一緒に居て楽にしてられる人"つまり智樹の事が好きなの!
智樹が付き合ってくれれば変な告白も減るだろうし、嫌がらせしてくる奴がいたら私が物理的に叩きつぶすから!!」
「物理的にって・・・・」
彼女は空手の有段者だったりする。
自宅は道場もやってたりしてかなり強いので"物理的"は冗談に聞こえない・・・
「で、どうなの?私じゃ嫌なの?」
と相変わらず寝そべりながらだけど僕の目を見つめて語り掛けてくる。
顔が少し赤いし少し目が潤んでる。
普段こういう話はしないから照れてるのかな。
ただ、ここまで言わせちゃうと僕も少し男を見せたくなってきた。
それに優子の事が嫌なはずがない。
僕はベッドにあがり、寝そべって会話をしていた優子の肩を掴み仰向けにした。
「ふぇ?智樹?」
急な対応で少し焦る彼女の目を見つめ
「僕も優子の事が好きだ!小さい頃からずっと好きだった。
僕と付き合ってほしい」
と告げた。
みるみる彼女の顔が赤くなる。
「と智樹のくせに。。。。生意気よ。私も好きだって言ったでしょ!
智樹に告白されて私が断る訳ないじゃな!!!」
と言葉を遮る様に僕はそのまま彼女にキスをした。
もちろんファーストキス。多分優子もかな。
村人Aは勇者に物理的にはかなわないかもしれない。
でも、彼女が好きって気持ちだけは他の人には負けないつもりだ。
ちなみにこの後、顔を真っ赤にした彼女に物理的に眠らされました。
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