革命2 女らしくしよう大作戦

第2話 初めてのお化粧


―――


 放課後の教室で、俺は呆れた顔をしながら奈緒を見た。


「今何て言った?」

「え?何って?」

「今何て言ったんだって聞いてんだよ!」

「あぁ。だから優君の言う通り、涼が女らしくなれば優君を見返す事もできるし、ついでに希も諦めるんじゃないかな。って言ったの。」

「ふざけんなよ!何で俺が今さら女らしくなんてしなきゃなんねぇんだよ。」

「大丈夫。あたしに任せて!」

「いや…聞いてよ、奈緒……」

 俺の話なんて聞いていない様子でカバンを漁り始める。


「はい!じゃあ女らしくしよう大作戦いくよ!」

「………」

 という訳で、何故かノリノリの奈緒のせいで俺は女にされそうです……



―――


 かくして俺を女らしくしよう大作戦(←奈緒命名)が決行された。


「女の子は足を広げて座らない!」

「……はい。」

「声が小さい!」

「はい!」

「女の子は口を大きく開けて笑わない!」

「へーい。」

「何?そのやる気のない返事は?」

「す、すみません……」


「女の子はご飯を食べる時、音をたてない!」

「いや、俺そこまでガサツじゃ……」

「女の子はあぐらをかかない!」

「……はい…」

「女の子は…」

「女子は……」

「おなごは………」

「……」

「………」

「…………」


 1分30秒経過……



「だぁ~~~!!」

 俺はついに我慢の限界に達した。


「何で俺がこんな事しなきゃなんねぇんだよ!帰る!」

「まだ帰っちゃダメよ。しつけの次はもっといい事するんだから。」

「まだあんのかぁ~?もうやめよーぜ……」

「ダーメ!」

「けっ!わかったよ、しょうがねぇなぁ。」

 俺は大人しく奈緒の言う通りにした。……っていうより、昔から奈緒には弱いだけなんだけど。


 しばらくして――


「何だよ、これ!」

 奈緒に渡された手鏡で自分の顔を映した俺は驚いた。


「何ってお化粧じゃない。」

「それはわかってるよ。…けどさ、何かベタベタするし、自分で見て気持ちわりー。俺じゃねぇみたいだ。」

「あたしは可愛いと思うけどなぁ。」

「は?可愛い?……え、俺が?」

「うん。」

「そ、そっかな。」

 奈緒の言葉に顔が赤くなる。

 今まで『可愛い』なんて言われた事あったか?まぁ、『格好良い』はよく言われるけど。ってそんな事はどうでもいいか……


「よし!これで優君の所へ行こう。」

「へ?今からかよ!」

「だって優君今部活してるし、それに今じゃないとその可愛い姿見せらんないでしょ?」

「そりゃ…まぁ、そうだけど……」

「じゃ、決まり!レッツ・ゴー!!」

 俺は奈緒に反論する気力も失せて、しぶしぶ後をついて行った。



―――


「お、お前涼か……?」

 俺たちが優の所へ行くと、案の定優は腰を抜かさんばかりの驚きようだった。


「どう?優君。あたしがお化粧してあげたの。」

「……う~ん、何かヤダな。」

「な!何で?涼、こんなに可愛いのに。」

 奈緒の反論に、優はもう一度俺を見てはーっと深いため息をついて言った。


「確かに可愛いけど、何かいつもの涼じゃねぇみてぇだもん。変だし……」

「な……」

「おい、優!何だよそれ!さっきから黙って聞いてりゃ勝手な事言いやがって!俺だって本当は嫌だったんだよ。お前が言ったんじゃねぇか、女らしくしろって。だから俺……」

「へぇ~、俺の言った事気にしてくれたんだ。涼の事だから全然気にしてねぇかと思った。」

 優が意地悪い笑みを浮かべた。俺はそれを見た瞬間キレた。


「優!てめぇ!俺がどんな気持ちでいるか全然わかってねぇよ。俺だってなぁ!俺だって……」

「俺だって?」

「……何でもねぇよ。行こ、奈緒。」

「え?え?待って涼!」

 俺はドスドスと音をたてて教室へ向かう。


 後ろで優が微かに笑ったのを無視して、何故か込み上げてくる涙を堪えながら……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る