素敵な日
福蘭縁寿
1.いちご
ここはカラフルなお花畑の中にあるアライグマのケーキ屋さん。お花畑といっても今はまだ冬なので花の代わりに雪があります。もう少ししたら暖かくなって、雪も融けてカラフルな綺麗な花が咲くでしょう。
「さぁ、今日もお店を開けましょう」
ケーキ屋は家族三匹でやっているんですよ。私とお父さんと息子。お父さんといっても私のではなくて、旦那さんのことですよ。
「お母さん、お父さんまだシフォンケーキ作るってー」
「えぇ、もう入らないから奥に置いてって言ってね」
今日はお父さん特別張り切っているみたい。バレンタインもひな祭も終わって、次は入学式というお客さんが少ない時期だけど何か考えているのかしら。そういえば、いちごの季節商品を作るって言っていたような気がするわ。今年はどういうものか楽しみね。
「お父さーん、いちごは洗ったの?」
奥にいるお父さんにそう聞くと、「あぁぁぁ」という声が聞こえてきました。きっと準備していなかったんでしょうね。代わりに私が行ってきましょう。接客は息子に任せましょうか。
「私が行ってきますからこっちお願いね」
まだ肌寒い中、近くの川に向かいます。
たくさんのいちごを持って川に着くと、反対側に魚屋のカワセミさんが見えました。
「カワセミさーん、こんにちは」
そう声をかけ手を振ると、こっちを見て羽を振り返してくれました。
「新鮮ないちごがあるの、味見してみませんか?」
カワセミさんはすぐにこちらに飛んできました。
「いちごいいねぇ、頂こうかな」
洗ったいちごを差し出すと、くちばしで突いて味見しました。
「甘くておいしいねぇ。おいしいケーキが出来そうだ」
「ケーキが出来て、お店に並べたらお知らせを出すので、よかったら来てくださいね」
カワセミさんは「おっ、行くよ行くよ。それじゃっ」と、飛んでいきました。さて、早く洗って戻らないと。
その後すぐお店に戻ったところ、お花屋さんのウサギさんがお客さんとして来ていました。
「ウサギさん、こんにちは」
「おかえりなさい。今ちょうどケーキ注文したところよ。息子さんがチョコプレートに文字書きに行ってくれてる。こんなに寒いのに川まで行ってたんだって? 寒かったでしょ」
ウサギさんはすごくおしゃべりが好きみたいです。
「そうなの、やっぱりまだまだ寒いわね」
そこに息子が戻ってきました。プレートを見せてから箱にケーキを入れて渡します。ケーキを受け取ったウサギさんは「どうもー」と言って帰っていきました。
「そうだ、いちご。お父さーん」
接客は息子に任せ、奥でお父さんと新商品の話をするのといちごを届けに奥に私が行くと、ちょうど何かが出来たところだったみたい。甘い香りがふわっと漂っています。
「おかえり、いちごありがとう。残っていたいちごで試作のシフォンケーキを焼いたんだ。一緒に食べよう」
台の上のピンク色のシフォンケーキを千切って口にいれました。ふわふわとした食
感といちごの甘みが口いっぱいに広がります。ぱさぱさ感はもちろん無く、しっとりとしています。
「ふわふわだし、甘みが広がってとてもおいしいわ」
お父さんはにこりと笑って、こう言いました。
「じゃあ、これを今年の季節商品にしよう。名前は……、ふんわりいちごのベッド。
あと去年出した、いちごタルトも作ることにしたから」
ふんわりいちごのベッド、なんて可愛らしい名前なのかしら。お父さんの見た目からこんなに可愛い名前が出るようには見えないけれど、本当に人は見かけによらないわね。毎回こんな名前をつけるんだもの。
「タルトは確か、いちご畑にさそわれてだったよな?」
そうそう、去年のタルトはそんな名前だったわ。
「そうだったわね。それじゃあ、明日から販売しましょ!」
私達は明日から販売する準備を早速始めました。ポップやお知らせを書いたり、たくさんいちごを注文したりと大忙し。
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