4章:2031年

第130話

 三社詣りの代わりに、ホームセンター2店舗とパチンコ屋に行ってきた。

 いや、神棚があったから、ただそれだけなんだけど。


 おみくじは芳樹お手製の極悪クジを引き、大凶だった……。


「100枚中、大凶80枚な」


 そんな中、セリスさんは中吉。大戸島さんは吉だった。あと虎鉄が大吉……。

 大吉は1枚しか入れていなかったという芳樹のあのへこみ様は見ものだったなぁ。


 ハリスくんと頑張って突いた餅はお雑煮に入れて食べたし、正月の間にストーブの上で焼いて食べたり。

 平均気温20度前後のダンジョンでストーブは暑かった。あとこたつも。


 雰囲気だからと運ばれてきたが、スイッチ入れなくていいよあれ。

 ただミケと虎鉄は気に入ったようで、スイッチを入れていないこたつによく潜っている。


 そんなのんびりとした正月三が日も終わり、1月4日。


「うあぁ……体重ぉ」

「餅食いすぎた」

「俺この数日で体重3キロ増えた……」


 テントの中ではそんな会話が聞こえてきた。

 俺……3.5キロ増えました……。


「ははは。みんなお正月は楽しんだようで」

「小畑さーん。お年玉くださいよぉ」

「君たち一応成人しているだろう。むしろ私の息子にお年玉寄こしなさい」

「え!? 小畑さん結婚してたんですか!?」

「お子さんいたのか……知らなかった……」


 知らなかった……。

 それから小畑さんはスマホで撮影したお子さんの写真を自慢気に公開。

 ご家族はここからすぐ近くのアパート暮らしだという。

 担当ダンジョンの近くに住むのが、協会スタッフのあるある事例なんだとか。

 まぁ転勤みたいなものか。


 攻略組が揃うと、全員で地上へといったん出る。

 俺たちはゲートの中になるけれど、この入り口で安全祈願をするのだ。


 今年1年、死者が出ないことを祈って。


 それが終わると冒険家たちが一斉にダンジョンへと雪崩れ込んで、我先に5の倍数の階層へと目指す。


 この数日、ダンジョンの出入り口に設置されたゲートを通って中に入った冒険家は、正月に遊びに来た芳樹らぐらいしかいない。

 支援協会から発行されるカードを通さなければゲートは開かないし、誰かほかにいれば俺たちや秋嶋さんらが気づくはずだ。


 で、数日間誰も入っていない=階層ボスモンスターが、今ならほぼ確実にいる。

 だからみんな慌てて突入するんだ。


 あ、上田さん、さっそく囲まれてるな。

 がんばれ。


 上田さん以外にも転送屋がひとり増えていて、その子もやっぱり囲まれていた。


 下層攻略組はテントへと戻り、そして――


「浅蔵さん、35階に送ってくれ!」

「俺たちは40階だ。あそこのボスはまだ見てないんだよ!!」


 ここでもボス討伐によるスキルゲットの夢を見る冒険家たちがいた……。

 まぁ、俺もスキル欲しいけどさ。


「みんな体重がどうこうで、しばらくは本領発揮もできないだろう。少し上の階層で体を慣らしたほうがいいと思うよ」


 小畑さんがそう言ったことで、6日までの3日間は地下40階よりも上で活動することに決まった。


 それぞれのパーティーの希望する階層に届けて、俺とセリスさん、そして虎鉄は35階でボスを探す。

 ライバルとなるのは2パーティー。

 

 前回は芳樹たちのパーティーにボスを倒されたばかりのタイミングだった。

 あの時は36階に下りる階段で見たが……。


「いないか」

『いにゃいにゃね』

「固定湧きじゃないんやね」


 となると探し回らなければならない。

 ただあてはある。


 ボスは大きい。

 つまり広くて天井の高い場所にしか湧かない。というか湧けない。


 ふ、ふふ。

 ピンポイント転移が可能なこの図鑑なら、湧きポイントに狙いを絞って転移も可能!


 そうして転移すること3回目。


「やったぜ! スキルゲットオォッ」

「あ、くそっ。ゴミスキルじゃんかこれ」

「なんだよ、この場内アナウンスってスキル。どうしろってんだ……」

「冒険家止めたらどっかのデパートに就職すればいいんじゃない?」

「おぉ、おぉぉう。また……またゲットし損ねた」

「念願の……念願のヒールが貰えたわよ! これで生存率上がる」


 そんな感じで天国と地獄に分かれている真っ最中のパーティーと遭遇した……。

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