イケメンちゃんは呪われている
@chauchau
第1話
目の前で女性がハンカチを落とした時、あなたはどう対応しますか。
――落としましたよ。
さらっと拾って手渡しますか。
――お姉さん! ハンカチ落ちたよ!
拾わずに声を掛けて気付かせてあげますか。
――……。でゅふ。
黙って持って帰りますか。
――お姉さん、落とし物ですよ。これも何かの縁、もし良かったらこれからお茶でもいかがですか。
格好を付けてナンパでもしてみますか。
人それぞれ、多種多様で十人十色。
落ちたハンカチひとつを取ってしても、人間が取る行動には多くのパターンが存在するわけなのだが、あ。ハンカチを取ると、ひとつ取るを掛けてみたのですが如何でしたか。
閑話休題。
これが僕の幼馴染の場合はどうなるかと言えば、少しばかり面白、もとい愉快じゃなかった、面倒な事態へと発展してしまう。
「困った子猫ちゃんだ……。ハンカチをわざと落として私の気を引こうというのかい。だが、そんなところもとても可愛いよ」
目の前にバラの花びらが舞い踊る。いや、比喩でなく。
「そんな……」
数秒前まで私は勉学に人生の全てを注いでおります!! と全身で語っていたはずの女性(仮名:ハンカチ落とし子さん)は、少女漫画の主人公だってもう少し抵抗するぞと言いたくなるほど簡単にお持ち帰りされてしまう。
彼女のおしゃれに気をつかってないのが丸わかりな肌つや、髪のつやに魔法の如く命が宿った瞬間を目撃してしまった身としては、人の美しさに気持ちが大きく影響するというのは本当なのだと信じざるを終えない。
というか、適当に結んでいただけの髪の毛が一人手に三つ編みへと編み上がっていったのは僕の見間違いではないはずだ。なんだろうあの現象。
さて、幼馴染とハンカチ落とし子さんが入店した途端におしゃれなカフェへと進化を遂げたさきほどまで閉店間近5秒前の喫茶店を素通りした僕は、緑香る五月の晴れやかな青空へと思いをはせるのでありました。
「今日のオムライスはケチャップかな……」
※※※
格好をつける。という言葉をご存じだろうか。
辞書で引けば、「格好がつくようにする」と出る言葉。これが説明になっていないと感じるのは僕だけなのかもしれない。
もうひとつには「人にいいところを見せる」とあった。最初からこっちを書いてくれ。
人間誰しも少しばかりは格好をつけたことがあるだろう。少し悪く聞こえるように言えば、見栄を張るというべきか。
ただし、僕の幼馴染は勝手が違っている。
父は、今をときめくハリウッドスター。
母は、その道に知らぬ人なしと謳われた伝説の塚ファン。
父の血に、母の情熱が合わさり生まれ育てられた僕の幼馴染は、息をするより簡単に格好をつけてしまう格好付け界の麒麟児にてサラブレッド。
その名を、
「小虎ァ!! なんで今日の止めてくれへんかってん、アホォ!!」
――
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