幼なじみと罵り合いをしたら何故か付き合うことになった件
MASK⁉︎
前置き
……最悪だ。気分が悪い。
いつの間にか家に帰り、制服のままベッドに寝転がっていた。
僕のような陰キャにも幼馴染がいる。美人で明るく社交的。頭が良いだけでなく運動神経も抜群でクラスの中心、うちの高校のアイドルと言っていい。すらっとした高身長でスレンダーな体型である。本人は胸の大きさをコンプレックスに思っているようだが、なにも欠点たり得ない。
こんな素晴らしい幼馴染に好きな人がいるらしい。なにも不思議なことはないが割とショックは大きかったようだ。また回想させてもらおう。何度でも思い返せる気がする。
僕はいつも登下校を幼馴染と共にしている。今日は日直にあたってしまったので少し遅くなったが彼女の待つ教室へ向かった。
しかし、逃げるように変えることになってしまった、一人で。
教室の中に人がたくさんいた? そんなのいつものことだ。彼女のもとには人が集まる。
教室の中にいたのが彼女を含め女子4人でキャピキャピしていたからか? いや、そんな場合もままあることだ。かなり気後れするものの、僕が足を止めることはなかった。
では何が問題か? それは、4人のしていた話の内容だ。そうコイバナである。
今日は女子だけか、と考えながら教室のドアを開けようとした時、彼女の声が耳に飛び込んできた。
「私の好きな人は~」
思わず動きを止めてしまう。彼女たちは気が付いていないようで、話は続いてゆく。
「あんまり目立たないけどかっこよくて~最高にクールなんだけど、たまに見せるしぐさが可愛かったりするの。しかも、なんだかんだ優しくてね~……」
「誰だよそれ~」「本当にそんな奴いるの~」「まさか~」
そんな奴がいるのか。信じたくないけれど、僕も幼馴染歴が長いので彼女が嘘をついていないのは分かる。しかも、多少照れつつ楽しそうにしゃべっているので、本気で好きなのが分かってしまった。
僕にとどめをさす言葉が笑い声の中から聞こえた。
「告白?向こうからしてきてほしい!……けど、出来るかなぁ。」
あぁそうか。自分のことを
そのことに甘え、ほぼ毎日一緒にいる。でもこれでは彼女の想い人も告白しにくいだろう。そろそろ一人でもうまく生きていけるようにならなければ。彼女から離れればきっとすべてがうまくいく。彼女の想い人が分かったら手助けしてやろう。
あぁそうだ。……でも、どうしてこんなに涙が出るのだろう。
✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️✖️
そんなこんなでベッドに横になっていると、急に部屋の外がどたどたと騒がしくなり、バンッという大きな音と共にドアが開いた。
ゆっくりそちらに顔を向けると彼女が仁王立ちしていた。かなりイライラしていらっしゃる。
「どうして何も言わずに一人で帰ってきてるのよ。ずっと待ってたんだからね!」
「うん、そうだね。ごめん。」
動く気が起きなかったので転がったまま答える。すると、彼女は膝をつくと手を僕の
「なに?具合でも悪いの?熱はないみたいだけど。」
これは、色々やばいと思ったので手をよけてベッドの上で
「いや、体調に問題はないよ。そんなに心配しなくて平気だよ。」
少し不思議な顔をした後、すくっと立つとスマホをいじり始めた。
「そう、それならいいんだけど、でも制服しわになるわよ。後ねぇ、わたしずっと連絡取ろうとしてたのよ。それを何も返さないで、大丈夫ならそれぐらいしなさいよ、……ってあれ?通知が……ない?」
ここでポケットからもスマホを取り出すと、そちらもいじりだした。
ん?2台持ちなんてしてたかな。あの黒いほうは……
「あー!それ僕のスマホじゃん。なんで勝手にいじってるの!」
「そんなことはどうでもいいでしょ。」
彼女はこちらをぎろりと
「電話は着信拒否、SNSはブロック。一体全体どういうつもり。」
「う、あー」
いきなり詰め寄られ頭が真っ白になり、口から意味のない言葉が出る。いつものように謝って終わらせようかとも思ったが、頭の隅で今日が最後とよぎる。大きく深呼吸をした。彼女の甘く爽やかな香りを感じて自然と落ち着いてきた。だが同時に、彼女の香りで落ち着いたという事実に少しイライラしてきた。
こうなったらあることないことぶちまけてやる。
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