10.未熟と成熟
「そ、それじゃ、また来てあげるわよ! セクト、今度は覚悟しておきなさいよね!」
「か、覚悟ってなんだよ、ルシア」
「覚悟は覚悟よ! ふんっ!」
「……」
ルシアは、怒ったような照れたような、どっちにも取れる顔で引き上げていった。俺は一体何を覚悟すればいいんだろうか……?
さて、次はどんな女の子が俺をからかいにくるのかな。なんか逆に楽しみになってきた。
「――あふっ。こんにちはあ……」
「……え……」
だ、誰かか俺の背後にいる……。
ぎこちなく振り返ると、ワンピース姿の肩ほどまである金髪の幼女が恥ずかしそうに立っていた。いつの間に入ってきてたんだ。
「……お、お嬢ちゃんはどなた様かな?」
「あのね、私ミルウっていうの。ミルウね、お客さんにお昼ご飯を作るようにってバニルに言われてたから丹精込めて作ったのぉ……」
「あ、ありがとう。俺はセクトっていうんだ」
「じゃあ、セクトお兄ちゃんにこれあげるねっ」
幼女から弁当を受け取って、俺はなんとも言えない気分を味わった。部屋自体が窓もなくてランプに照らされてたから時間帯がわからなかったが、お昼ご飯ってことはまだ昼間だったのか……。
「あふっ……受け取ってくれて、ありがとうなの。あぁん、照れちゃうぅ……」
赤くなった顔を隠すためなのか、ワンピースの裾を大きくたくしあげるミルウ。もちろんピンクのパンツとおへそが丸見えだ。うわ、えろいしあざとい……。
「あのさ……そんなことしてたら悪戯されちゃうよ?」
「あふぅ?」
なんのことかわけがわからない様子……だと思いたいが、絶対とぼけてるだけだろうこんなの。女の子なんて小さい頃から大体マセてんだから、エッチなことはわかるはずだしな。
多分……というか、これは間違いなく罠――見え見えのトラップ――だ。いたいけな幼女を持ち出して俺に悪戯させようっていう魂胆なわけだ。結構悪質な手段を使ってくるんだな。
「じー……」
「……」
この子、上目遣いで俺をじっと見ている。どうした、来いよってか。じゃあそれに乗ってやろう。騙されまいと抵抗するのもそろそろ飽きてきたし、ここは相手の誘いに乗ってハプニングを大いに楽しもうじゃないか。
「ぐへへへ……ミルウって幼いくせしていいケツしてんなあ、おい……」
俺は思いっ切りいやらしい顔を浮かべてやると、左手でミルウの尻をわしづかみにした。さあ盛大に悲鳴を上げろ。
「や、やーん……お兄ちゃんが発情しちゃった。でも……見向きもされないと思ってたから嬉しいかもぉ……」
「……な、何を言ってるんだ君は……」
予想外の反応を前に、俺は手を引っ込めて壁を背にしていた。
なんなんだこの子は。嫌がるどころか、抵抗する素振りすらない。罠じゃなかったらしく、誰かが飛び出してくるということもない。じゃあ、この子が変態なだけだというのか。親はどういう教育をしてるんだ!?
「み、ミルウ……ダメだぞ、まだ子供だろ? エッチなことをするような年齢じゃないし、今からそんなこと言ってたら悪い大人になっちゃうぞ?」
「えぇ? ミルウ、もう大人だよぉ?」
「……へ?」
またワンピースをたくしあげてきてウインクされる。
「うふんっ……ミルウね、こう見えて17歳なんだからぁ……」
「……なっ……」
今水でも飲んでたら、俺はきっとミルウの顔をびしょびしょにしていたはずだ。それくらい衝撃的だった。
「ミ……ミルウは成長が止まってしまったのかな?」
「うぅ、そうみたい。でも、心も体もまだまだ子供なの……。ただ一つ、スーパーエッチな点を除いてはぁ――あふっ!?」
ミルウがとんでもないことを言い出したので早急に退場してもらった。残ったのは彼女がくれた手作りの弁当のみ。
「――う、美味いだと……?」
試しに開封して少し食べてみたんだが、かなり美味かった。小さな子供にこの奥行きのある味は出せないだろう。じゃあ本当に17歳なのか……。正直、8歳とか9歳くらいにしか見えなかった。
なんというか……今まで来た面子が全員主力かどうかまではわからないけど、割と楽しそうなパーティーだな。みんな可愛いし……って、俺いい加減にしろよバカ。また騙されかけてるぞ。マジで洗脳されやすいタイプなのかもな。
そろそろ筋肉隆々の男が出てきて、今までの分を体で払ってもらうぞとか言ってくるに決まってるのに……。
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