M05-08

 金色の『カイラギ』の黄金の剣とBMD-Z13の『マサムネ』がぶつかり合う。


ガギーン。


強い衝撃がBMD-Z13の腕を伝い、神経接続子から陣野修(じんのしゅう)の脳へと運ばれる。陣野修はBMD-Z13の背中の呼吸器官にため込んだ呼気(こき)をゆっくりと吐き出しながら『マサムネ』を金色の『カイラギ』の顔に向けて押し込む。金色の『カイラギ』がそれを押し返す。互いの視線が交差する。


『僕の体を返してくれないかな』


陣野修の頭の中に宮本修(みやもとしゅう)の声が響いてくる。


『・・・』


陣野修にはその言葉の意味がわからなかった。


『なぜ逃げたの。僕たちは意志は一つのはずだよ。体を返してくれ』


『体。僕の体』


金色の『カイラギ』はいったん離れて再び打ち込んでくる。


ガギーン。


BMD-Z13は『マサムネ』でそれを受ける。金色の『カイラギ』とBMD-Z13は互いの刃をぶつけ合いながら会話した。


『そうだ。君が奪って逃げた宮本修のオリジナルの体だ』


『宮本修の体』


『そうだ。僕の体だ』


BMD-Z13は『マサムネ』を振り払い、後方にジャンプして距離をとった。頭が割れるように痛い。失われていた記憶が陣野修の頭を駆け巡った。


 宮本修は波に翻弄(ほんろう)されながらもがいていた。父の指が手にふれる。彼は腕を伸ばしてそれをつかもうとする。なんども、なんども。しかし、その度に波が邪魔をした。やがて父が力尽きて暗い海の奥底へと沈んでいく。


「父さん」


陣野修はBMD-Z13の中で叫んでいた。言葉を発したことのない陣野修の口からはじめて出た言葉だった。


『思い出したようだな』


金色の『カイラギ』が七つに枝分かれした剣をアスファルトについて立っていた。

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