第2話
「皆様のアンケートを拝見しました。女性の皆様、お付き合いする男性の希望は有名大学卒で年収1000万円以上という方が数名おられますね。あとは800万以上、600万以上が多いです」
女性司会者は女性参加者を見回しながらそう言った。
「日本の男性のうち、年収1000万円以上というのは約5%弱しか居ません。800万円以上も同じくらいです。600万以上で9%弱程度。いずれも人口の1割に満たないのです。では女性の皆様、いままで一度も男性とお付き合いできなかったあなた方が、上位10%未満の男性とお付き合いできると本気で思いますか?」
女性参加者は一様にムスッとした顔をした。
男性参加者たちからは失笑が漏れる。
たしかに女性参加者たちも、どう見ても男に縁が無さそうなタイプばかりである。
太っているか、逆にギスギスに痩せているか、もともとルックスが良くない上に、厚化粧して着飾っていても加齢による衰えは隠せていない。
これでよく年収1000万とか、強気な希望が出せたものだ。
「男性の皆様も女性の事を笑えませんわ。なんですか、希望の女性は年下で家庭的で慎ましくて明るいタイプとか?そんな素敵な女性があなたたちのどこに惹かれると思っているんです?」
俺がアンケートに書いた希望だ。
ますます腹が立ってきた。
「若くて家庭的で性格が良くて、あわよくば美しい女性が希望ですか?そんな女性は年収1000万以上の男性よりさらに希少ですよ。いつまでも夢見ているんじゃありません」
女性司会者はどんどん高圧的な態度になってきた。
「高学歴で高収入の男性は、若くて美しくて性格の良い女性と結ばれます。皆様は最初から蚊帳の外なんです」
・・・・
「皆様のように、過去に一度も異性とお付き合いできなかった人は人口の20%程度居ます。皆様がいつまでもそこから抜け出せないのは、いつか上位数%しか居ない異性と付き合えるんじゃないか、なんて夢見ているからです」
女性司会者は一同を見渡して言った。
「20%の皆様同士でお付き合いすれば、この問題は解決できるのです。簡単な理屈です。ここは20%の人たち同士をマッチングさせる場なのです。おわかりですか?」
腹が立つが妙に説得力があるため、誰もが黙っていた。
たしかにこの女性司会者のいうとおりかもしれない・・・俺もついそう思ってしまったほどだ。
俺は女性参加者たちをもう一度見渡した。
・・・この中から交際相手を選べということか。
俺は太っている女は苦手である。
女性参加者のうち、隅っこの方に居る根暗そうな痩せている女。
彼女がこの中ではいちばんマシなようだ。彼女に交際を申し込んでみるか。。。
「では今から当方が指定したお相手と交際していただきます。テスト交際期間は3か月です」
なんだって!?さすがに俺は声を上げた。
「ちょっと待ってください。そちらが勝手に相手を選ぶんですか?俺たちには相手を選ぶ権利すらないんですか?」
女性司会者は鋭い視線を俺に投げかけた。
「ありません。これは私どもが皆様の資料を精査した上で選んだベストカップルの組み合わせです。すべてを私どもにゆだねていただきます」
「悪いが俺は降ります。いくらなんでもそれは酷すぎる」
女性司会者はファイルから何か書類を取り出した。
「それは出来ませんね。あなたもこの契約書にサインしています。途中解約は300万円の違約金が発生しますが、お支払いただけますか?」
俺はこのパーティーに参加するためになけなしの貯金を切り崩している。
この上、300万なんてとても払えない。
「おわかりでしたら、組み合わせを発表いたします」
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