ヤンデレ妹のクリスマス

新名天生

お兄ちゃんをわたしだけの物に……。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……お兄ちゃんが好き、お兄ちゃんが好き過ぎて……どうしようもない」

 私はお兄ちゃんが好きになってしまった……もうどうしようもなく……。


 当たり前だけど、お兄ちゃんとは結婚出来ない、私のお兄ちゃんが私だけの物に出来ない……ううん法律なんてどうでもいい、お兄ちゃんが私の、私だけの物になってくれるなら。



 でもお兄ちゃんは私が好きと言っても、ニッコリ笑ってありがとうと言って頭を撫でるだけ、本気にしてくれない……どうすればお兄ちゃんは私を見てくれる?

 

私の物になってくれる?


 私のお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん…………。


 お兄ちゃんは私の物……私だけの物……。




 ######



「あ、そうだ舞」


「なあにお兄ちゃん?」

  日曜日、いつもの様にお兄ちゃんとリビングでまったり過ごしている……私の幸せな時間、この瞬間お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんで居てくれる。


「24日空いてる?」


「え?」

  な、な、、何? ま、まさか……で、デート? お兄ちゃんからデートのお誘い? 遂に、遂に……しかもイブ! クリスマスイブにお兄ちゃんが私の物に!!


「え、えっと……べ、別に予定は無かったかな~~?」

 私はお兄ちゃんを正面に見据えて、姿勢を正した。さあお兄ちゃん、私はいつでもウエルカムだよ、何処にでもいくよ! 早く誘って、誘って~~~♡


「舞に会わせたい人が居るんだよ、連れて来て良いかな?」


「え?」

 デートの誘いを期待してた私に、お兄ちゃんは信じられない言葉を告げた。


「俺さ……実は先週から付き合い出したんだよ、遂に彼女が出来たんだ」


「──へ、へーーーーーー」


「実は彼女がさ~~舞に会ってみたいって言ってるんだ」

 そう言ってヘラヘラと笑うお兄ちゃん、え? 何言ってるの? 彼女? 彼女って何? まさかあの男女が付き合う時に良く言う彼氏彼女の彼女じゃないよね?


「えっとお兄ちゃん……彼女って?」


「ああ、俺の彼女? すげえ可愛いんだよ、しかも向こうから告白してきてくれて、考えられないよな~~」

 ニヤニヤとその彼女とか言う謎の言葉を発するお兄ちゃん……。


「ふーーん……」


「いや、ほんと舞も気に入ってくれると思うんだ」

 ────やっぱり彼女って、恋人って事? しかも告白……お兄ちゃんに告白……私がしたくてしたくてしたくてしたくてしたくてしたくてしたくてしたくて出来なかった…………告白……。

 お兄ちゃんを、私のお兄ちゃんを捕った女が、泥棒が……私と会いたいですって?


「来週クリスマスだろ? そのデートの帰りに連れてくるからさ~~、本当は今日連れてくるつもりだったんだけど、なんか用事があるって言われて」


「へ、へーーー」

 用事じゃなくて法事かもよ……本人の……。


「だから来週よろしくな、夕方居てくれよ」


「ふ、ふーーん」

 お兄ちゃんはそう言うと私の頭を2度ポンポンと叩き、部屋に戻って行った…………。


「…………私のお兄ちゃん……私だけのお兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃんは私の物、あはは、あはははははははは、あははははははははははははは」


 おかしくなってきた、何だろう悲しいのに辛いのに……涙が溢れて止まらないのに、笑いが止まらない……。


「ふふふ、くふふふふ、うふふふふふ」

 お兄ちゃん、大好きなずっと大好きな、いつまでも大好きなお兄ちゃん、永遠に私のお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃん、そうかお兄ちゃんは永遠にお兄ちゃんなんだ……じゃあ…………居なくなっても……お兄ちゃんで居てくれる、居なくなれば私だけのお兄ちゃんになってくれる……お兄ちゃんなんて居なくなればいいんだ……そうしたら、永遠に私だけのお兄ちゃんになるんだ。


 お兄ちゃんが好き……殺したいくらい大好き……


 お兄ちゃんが人の物になるくらいなら、いっそ私がこの手で


「ふふふ、お兄ちゃんは……永遠に私の物になるの、私だけの物に、うふふふふふ」


「どうしようか、今から? でもお兄ちゃん抵抗するよね? お兄ちゃん痛いの嫌だよね……痛かったら可哀想だよね……痛くないようにしないとね」

 作戦を練らないと……でも来週迄には……、だって彼女なんて見たくないもん、来週迄なら……見せられる迄なら、そんな物存在しないって思えるもん。


 お兄ちゃん……待っててね、もうすぐ私の物になるから、私だけのお兄ちゃんになるから……。



 どうやれば良いのか、どうやればお兄ちゃんは苦しまないのか、私はどうやれば良いのか……それを考えていた……。


 やっぱり寝てる所を……そうよ、それが一番じゃないかな


 でもお兄ちゃんすぐ起きちゃうかも、上に乗って一気にって思ったけど、途中で目が覚めたら……抵抗されたら……。


 何か良い手は……。


 クリスマス……当日に家に連れてくる……。


 ケーキ……クリスマスと言ったらケーキだよね……その中に……。


 でも毒なんて高校生の私じゃ手に入らないし、やっぱりお兄ちゃんは直接私のこの手で……。


 私は手のひらを見つめぎゅっと拳を握った。


 そうだ……そうだよ……クリスマスに会わせるなんて、そんな幸せな事はさせない……お兄ちゃんは純潔のまま私の手で……。


 クリスマスまであと一週間……チャンスは必ずある……。



######



 そう思っていたが……なかなかチャンスは巡って来ない、そうこうしている間にクリスマス前日なってしまう。


 今夜だ……今夜が最後のチャンスだ……。


 23日ラッキーなのか今年は祝日じゃない、お母さんはいつものように帰って来ない……そして私達は冬休み……。


 明日はいよいよクリスマス……お兄ちゃんはクリスマスを私と迎えるの……二人きりで……私は動かなくなったお兄ちゃんをずっと抱きしめて聖なる夜を一緒に過ごすの……夢だった……ずっとずっと夢だった。


 私は用意していた大きめのカッターを手にした。


 これでお兄ちゃんを……ふふ、うふふふふふ……。


 お兄ちゃんは誰にも上げない、お兄ちゃんは私の物……私だけの物……。


 私は部屋で紅茶を一口飲む……綺麗なカップをそっとソーサに戻すと椅子から立ち上がり部屋の扉を開く……向かうは隣の部屋……お兄ちゃんの部屋だ。


 音を立てずにそっと廊下を歩き、お兄ちゃんの部屋の扉の前で一度深呼吸……そしてそっと、そっと扉を開ける……。

 

 お兄ちゃんは机に座って何か書いていた……。


 かなり集中しているようで私には気付いていない……。


 ──チャンスだ……。


 私はゆっくりとお兄ちゃんに近づきカッターをお兄ちゃんの首に……。


 その時、お兄ちゃんの首にカッターを当てたその時、お兄ちゃんが書いている物が見えた……そこには!


「ま、舞!! な、何をしてる!」


「お、お兄ちゃんこそ何を書いてるの!!」


「こ、これは……」

 慌ててノート隠すお兄ちゃん……でも見てしまった……そこには……。


『妹に惚れて貰う作戦 彼女を作ったと言う』

『クリスマスにサプライズプレゼント』

『……』


「ど、どういう事? 私に惚れさせる? は?」


「いや……これは……その…………えっと、それよりも……舞……その手に持ってるカッターはなんだ?」


「え! えっと……これは……その……」

 私はカチカチと音をならし刃を仕舞うとカッターを後ろに隠す。


 私もお兄ちゃんもそのまま何も言えなくなる……。


 とりあえず今の事は全部無かった事にしよう……お互いそう思う事にしようと目で会話した。

 


「あ、あのさ……明日……舞は予定あるのか?」


「わ、私は……無いけど……お兄ちゃんは彼女が……」


「あ、えっと……振られた……実は……昨日振られた……ま、舞こそ……この間告白されたって……」


「え? あ、あれはお兄ちゃんの気を引こ……えっと断ったよ……私は好きな人がいるからって」


「そ、そうなんだ…………えっと……舞の好きな人って……誰? なのかなあ?」

 お兄ちゃんは不安そうに私に向かってそう言う……。


「──私の好きな人は……クリスマスイブに……一緒にいる人……」


「そ、そうなんだ……」


「うん……」

 お兄ちゃんの部屋、私達はその後下を向き沈黙する……お兄ちゃんの枕元に置いてある古い目覚まし時計からカチカチという音が聞こえる。


 そして長い長い沈黙を破るようにお兄ちゃんが大きな声で言った。


「舞……俺とクリスマス一緒に過ごさないか?」

 下を向いたまな目を摘むってお兄ちゃんは私にそう言うとゆっくりと顔を上げ私を見つめる。


 お兄ちゃんの可愛い顔を見るとキュンと胸が締め付けられる……ああ、お兄ちゃん……大好きなお兄ちゃん……殺したい程大好きなお兄ちゃん。


「喜んで……メリークリスマスお兄ちゃん」


 時計の針は12時を過ぎていた……クリスマスイブ……一緒にいる人が私の好きな人……。


 






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