ポンコツ妹とシスコン兄
新名天生
ポンコツな妹
うちの妹はポンコツである。
冒頭からいきなり肉親をポンコツと罵る自分を許してほしい。
しかし、それでも敢えて言おう、うちの妹はポンコツである。
何を持ってして、ここまで私は妹の事をポンコツと言うのか
それは、話し切れない数々のエピソードを聞いて頂ければ分かって頂けるとおもう。
そのエピソードを話す前に、まず先に、私の妹の事を話さなければならないだろう。
妹は16歳高校2年生、名前は愛、流れる様な黒髪は、日の光を浴びると虹色に輝き、大きな瞳は見つめられたら最後、ブラックホールの様に吸い込まれてしまいそうになる。
日本人離れした整った鼻、プリッとした小さな口、その唇に誰もが目を捕われる。
高校生とは思えないスタイル、張りのある大きな胸は動くたびに小刻みにゆれ、その反面ウエストはキュッと引き締まり、ヒップは小ぶりだがその形は男心をくすぐる。
その類まれなる美貌の持ち主、それが私の妹である。
しかし、その美貌をもってしても、あまりあるポンコツ振りに私は辟易していた。
さて、ポンコツポンコツと言っているが、なぜポンコツなのか
いまからそのエピソードの一部を語って行こう。
まず妹は周りが見えていない、私がお風呂に入っていた時の事である。
「きゃあああ、あんた、なんで入っているの!!わたしが入って来るのを待ち伏せしていたんでしょ!この変態!!」
裸にタオル一枚で顔を赤らめていた妹は、そう怒鳴り風呂場の扉を閉めた。
特に電気を消していたわけでない、風呂桶の中に潜っていたわけではない、しかもこれ一度では無い、何度もである。
そして、信じられない事に、妹は部屋を間違える、自宅の部屋をである。
小さなマンションで、それ程部屋数が多いわけでない、にも係わらず、妹は部屋を間違える。
ある日普通に寝ている時に、なにやらもぞもぞと入ってくる感触が……。
仕事でかなり疲れていた私は、なにやら分からなかったが、眠さに負けそのまま寝続けていた。
翌朝目を覚ますと、妹が自分の目の前で、すやすやと眠っている。
私はなんでこうなったか聞きだす為、妹を起こした。
「きゃあああ、あんたなんで私のベットに潜り込んでるの、スケベ変態!」
またも罵られるが、ここは私の部屋だ。そう伝えると妹は、
「どうせあんたが寝ている私をここに運んだんでしょ、兄の癖に信じられない!」
寝ている時に運んだ、そんな事が可能なのだろうか? そう答える所もポンコツである。
そして、妹はその類まれなる美貌から、学校では大変モテるらしい。
しかし、全てを断っているのか妹に彼氏が出来た事は無い……。
なぜ私がその事を知っているか? それはいつも妹が聞いてもいないのに私に話してくるからだ。
休みの日リビングで私がくつろいでいると、いつも必ず妹が近くで携帯を触りながら話しかけてくる。
「わたし~~先週も3人に告白されたけど~~、良い男じゃなかったから振っちゃった~~、ああ~~どこかに私の事を好きになってくれる人いないかなああ……あ、できればあんたみたいじゃない人がいいな~~」
聞いてもいないのに、告白を自慢し、さらに兄をディスってくる。こういった所もポンコツなのである。
数々のポンコツぶりを発揮する妹だが、つい最近、なんとこのポンコツ妹に彼氏ができたのだ。
それは数日前もいつものように、家のリビングでくつろいでいる時、玄関のチャイムが鳴った。
もちろんポンコツの妹が出るわけはない……しかたなく私がインターホンを取ると『愛さんはいますか』という声、どうやら、学校の同級生の男の子が家に来たらしい。
妹にそれを伝えると、妹は渋い顔で玄関に行く。
「は? あんた何? 誰? ていうか、家に来るなんて信じられない……」
という声が聞こえてきた、ポンコツでもやはり妹だ、私は心配になり、玄関に行くと、その男の子は妹に告白していた。
妹は、玄関に来た私を一瞬チラッと見ると、その子にこう言った。
「分かったわ、付き合ってあげる」
そう……遂に妹に彼氏が出来た。
私はようやくあの、ポンコツな妹に彼氏ができたとホッとしていたが、今日妹はそんな私を見て突然こんな事を言いだした。
「あんた……私……に彼氏が出来たって知ってるでしょ、どうして何も言わないの!」
何も言わない? どういう事なんだろうか? 妹に彼氏が出来た……喜ばしい事だ。
そうか! 妹は俺に祝福してほしかったのだろう。
初めての彼氏ができたのだから兄として妹を祝福をしなければいけなかったのだろう。
「ああ、おめでとう」
そう言うと、妹は激昂した。その辺りにある物を私にめがけて投げつけてくる。
家のリビングで暴れに暴れる妹……花瓶や食器、本、あらゆる物が散乱した。
やはり妹はポンコツだ……。
私は泣きながら物を投げてくる妹の手を取り、押さえつけ叱りつけた。
「何故こんな事をする!?」
すると妹は……。
「うう、私は……あんたの事が好き! 私はあんたが好きなの!! それなのに何故おめでとうなんて言うの! ひどい、どうして私の事わかってくれないの!!」
妹はそう言って泣きながら私に抱きついて来る。
私はその妹を抱きながら頭を撫で思った。
やはり妹はポンコツである、実の兄に惚れてしまう様な……最高なポンコツであると……。
ポンコツ妹とシスコン兄 新名天生 @Niinaamesyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます