第4話
「何故!?」
自分の腹からにょっきしている剣を見つめ、悠斗は頭を抱えていた。
俺。剣人間になってしまったのか!?
恐る恐る剣に触れてみようと手を伸ばすが、何故か引っ込む。
「うわぁ!?」
思わず仰け反るように万歳をすれば、腹から再びにょっきした剣が飛び出してきた。
「おぉ?」
上げた手を下ろせば剣が地面に突き刺さる。
もしや手の動きに合わせて飛ぶ?
そんな事を考えた悠斗は、試しにもう一度万歳をしてみた。
ヒュっと空に舞い上がる剣。
素早く手を下ろせば、シュパっと地面に突き刺さる剣。
「これは……ラジコン剣?」
ということは自分がコントローラーになっているのかと、斜め上思考。
「はは。俺の剣、凄いなあぁぁっ!? え? なんで俺の剣が2本――3本!?」
声に出すたびにょっきする悠斗の剣。触れることは出来ないが、操作することは出来るようだ。
驚く悠斗の動きに合わせて、右に左に上に下にと飛び回る。
そもそも何故こんな事になったのか。
考えて考えて考えて、そして思い当たる節を見つけた。
インストールする際、馬鹿な事を妄想して鼻で笑った。その際、インストール場所の選択をミスったのだ。
それに気づいたが、何故剣が掴めないのか。そもそも何故複数の剣が飛び回っているのか。
どうやってそれを調べるべきか。
彼はタブレットを取り出し検索画面を開いた。そして――。
「葉月悠斗のステータス」
と検索した。
出るのかそれで? 出るのか?
あ、出た。
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葉月悠斗 16歳 人族 男
血液型:O型
【習得スキル】
『筋力強化・∞』『肉体強化・∞』『敏捷性強化・∞』
『魔力強化・∞』『鑑定』『タブレット』『ダウンロード』
『インストール』『ライフポーション』『俺の剣』
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「俺の剣がスキル扱いになってる……」
しかもライフポーションまでスキル欄にある。これは最初のお試しの際に自分をインストール先に選択したので、まぁそういう事なのだろう。
そして口にしたがために、悠斗のお腹からにゅっと剣が出てきていた。
さっと手を振ればシュっと飛んでいく。
どうしてこうなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ぐぅうぅぅ――
森に響くのは悠斗の腹の虫の音。
剣は持ち歩けず、何故か自分の体からにょっきして操作できるスキルになってしまった。それはそれでまぁいい。
いろいろ試すうちに、空腹は深刻な状態にまで発展していた。
「とにかくなんでもタブレットに入れまくろう。そのうち食べられる物が見つかるかもしれない」
落ちている石、草、木の枝。
なんでもタブレットに収納していったが、どれもこれも食べれそうにない。寧ろ何故食べられると思ったのか謎レベルである。
30分ほど森を彷徨って遂にそれを見つけた。ピンク色の実をたわわに実らせた木を。
「見た目は完全に桃だ! これなら食べられるだろ!?」
さっそくタブレットに押し込め、DLフォルダからアイテムフォルダへとインストール。そしてフォルダから今しがた収納した実のアイコンをタップして『プロパティ』を開いた。
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【ピーチのプロパティ】
アイテムの種類:果物
説明:食べられる木の実
場所:アイテムフォルダ
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書かれた内容を見て悠斗は驚く。
なんせ木の実の名前が「ピーチ」だったからだ。
そもそもタブレットに書かれた文字が日本語なのだが、まずそこに違和感を覚えるべきだろう。
だが悠斗はそんなこと、まったく気にする様子はない。
驚いたのはそれがピーチであり、つまり桃であり、ひいては食べれるという事だ!
説明にも「食べられる木の実」と書いてある。
さっそく桃を取り出し、全体をもみほぐして皮を剥いてパクリ!
「んまっ!」
空腹というのもあって普段以上に甘く感じられるこの桃は、果肉の中心部分には大きな種があり、悠斗が知るソレと同じ物だ。
パクパクと口に運び、5個目を食べ終えそれなりに満足出来た。
「何個かタブレットの中にストックしておこう」
濃く熟した物を選んでタブレットの中へとどんどん収納していく。同一アイテムのDLではファイル名の横に数字が表れ、それが個数を表している。
ピーチ50となったところで悠斗はにんまり笑ってタブレットを愛おしそうに抱きかかえた。
他に食料は無いかと森を練り歩き、緑色の肌をした小人や目が逝った狼など、襲って来るものを『俺の剣』で迎撃していく。
操作にも慣れておきたかったが、それよりも先にモンスターから彼を避けるようになっていた。
だが同時に陽も暮れはじめ、未だ悠斗は森の中に居る。
「……出口、どこ?」
見事迷子になっていた。
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