5-140 中心部








「ちょっと!!……な、なんですかこれ!?」




ハルナはモイスの背中から下を見下ろし、驚愕する風景に力が抜けそうになりながら必死にしがみついている。





『これは……何か爆発した跡のようですな。確かここには崖があったような気がしましたが』





この山は岩によってできた山だったのだろうか、吹き飛んだあとには岩の広場が広がっている。

その広場の周囲にはこの場所を中心にして、木々がなぎ倒されている。





「これ……まさか。サヤちゃんが……モイスさん、降りてみませんか?」



『お待ちください……それはまだ危険です!?まだ敵が潜んでいる可能性も……』



「でも、敵がいるなら……その目的は私じゃないんじゃないでしょうか?だって、私がいなくてもこういうことになってるわけだし」



『む、そ……それは』







モイスは驚いた、怖がって思考が回っていないように見えてその状況をよく観察していたことに。

さらにハルナは、モイスに自分の考えを告げる。



木々の広がり方から見て、爆破の中心は岩の広場の中心部。

きっとその上に崖がそびえたっていた、その中心部には何一つ残されていない。

これだけの破壊力をもたらしたものが何なのかはわからないが、見たところハルナたちが目的ではないことの可能性が高い。






「だから、この状況を調べればもしかしてこの先にもつながることが見つかるんじゃないですかね?」




『わかりました……降りますが、気を付けてください』




「ありがとう……モイスさん!」






そうして、モイスは周囲に危険がないか気を配りながら、羽をゆったりと羽ばたきながら垂直に下降していく。



「よい……しょっと」



ハルナはモイスの背中から、岩の上に降り立った。

周囲を一周見回すと、そこは屋根のない大きな体育館のような平らな場所が広がる。

足元に視線をやると、いくつもの線が表面に通っていた。

周囲も同様で、線は並行ではなく、少しずつ角度を変えていた。




「これって……」



そういうと

、ハルナは線の端をたどって内側に歩いて行く。

するとその線の始まりは、ある中心から伸びていることが分かった。




「ここが爆発の中心じゃないかしら?」




ハルナは地面に両膝を付けて、その中心部を掌で撫でた。

すると、掌に突起物のようなものが触れ、そこに刺すような痛みが生じた。




「――痛っ!?」





ハルナはその痛みから反射的に目を閉じ、手を引っ込めて反対側の手で掌を庇った。




「……びっくりしたぁ!なんか電気のような……ってあれ?」



目を開けているはずだが、視界は真っ暗な闇しか映し出さない。



「……あれぇ?また?」



そんな状況でもハルナが落ち着いていられるのは、モイスが創る不思議な空間の中と雰囲気が似ているためだった。




「……モイスさん?いませんか?モイスさーん?」




ハルナは暗闇の中、この状況を用意した存在に声を掛ける。

だが、返事は返ってこなかった。

時間が経つにつれ、ハルナは不安な気持ちが胸の中で膨らみ始めた。

これは、外の世界で何か緊急事態が起きてしまったのではないか?と



「モイスさん!!モイスさん!!」



ハルナは、大きな声でモイスの名を叫ぶ。

きっと自分だけを逃がして、外では危険に対処をしているはずのモイスのことを心配して。



「モイスさ……きゃっ!?」



突然、ハルナのいる世界が真っ白に染まる。

眩しい中ハルナは、この状況を見逃さない様にとしっかりと目を開けていた。

次第に白い光が収まると、この世界に色が付き始める。


そこには、ハルナが見たことがない洞窟の中が映し出された。











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